年確ギルティ
電子タバコを咥えて昨晩のことを思い返してムフッと側から見たら気持ち悪いムッツリスマイルを浮かべ、ふっと煙を吐き出す。
普段は寮の喫煙スペースでサクッと済ませる休憩も、春が訪れているイデアには暗闇の中じっとりと煙を吹かすより、青空に向かって清々しく一服したいもので、購買から程近い学園内に数少ない喫煙スペースで人気がいないことを確認して噛み締めタイムをしていたところに「先輩」と片眉を上げて腕組みをしている監督生に声をかけられた。
脳内に「せんぱいっ」とくぐもった声とじんわり涙を流して眉を寄せているかわゆい顔がフラッシュバックしてしまい、ケホケホと咽込みながら「なに?」となぜか怒っている彼女に問うた。
「先輩なにしてるんですか」
「え、な、なにって、タバコ吸ってる……んだけど、み、見てわかんない?」
「わかってるから聞いてるんです」
「あ、ス、すみません……え?」
「先輩いくつですか」
腰に手を当ててむすっとしている監督生だが、イデアからしたら子猫が毛を逆立てている程度にしか映らないので「あー可愛い」と口元が緩みそうになるが、彼女なりに精一杯威嚇しているわけだ、ここはきちんとビビって差し上げるのが筋だろう。
「な、なんで怒ってるの? 拙者なんかしました? あ、も、もしかして身体痛い?」
「ッち、ちがいますっ! そういうの、言わないでくださいっ!」
「スマソ」
可愛いかよ〜〜! とタバコを口に加えた時、その手を引っ張られ「だめ!」と咎められる。もしかして……
「成人してるよ」
「え? わっ! けほ、けほっ」
フーッと煙を顔に吹きかけて、目を閉じて咽込んでいる監督生に意地悪な笑みを向ける。
煙を払い涙目で睨んでくる監督生の顎を掴んで、人目がないことをいいにそのまま唇を重ね、ぺろりと唇を舐めてから離し、真っ赤な顔でポコポコイデアの腕を殴る監督生の額をツンと突いて、この可愛い生き物をいじり倒してやろうと笑みを深めて顔を寄せる。
「昨日あんなことやこーんなことしたのに、彼氏の年齢も知らずに喫煙咎めにくるとかさ〜。君こそいくちゅなのかな〜?」
監督生はむうっと頬を膨らませながら、イデアの浮かれ切っている頭の上から冷水を浴びせた。
「十五です!」
「へ〜十……へっ⁈ ちょ、た、タイムタイム、いや、え? だ、だってき、君一年でしょ? は、はあ⁈」
「誕生日がまだなので」
「ち、ちがうちがう、誕生日まだだとしても十六でしょ、なに、何言って……」
「なんでそんなに焦っているんですか? あ……もしかして未成年にえっちなことしたからですか?」
「アッアッーーッ! 言葉にしないでよ! あと一年待てなかった拙者堪え性ないな、がまさか二年だったってこと? せ、拙者捕まるんでは?」
突然焦り出したイデアに首を傾げながら「あれ、でも……」と時期はずれているが誕生日を考えたなら十六だった? となるも、目の前で両手を見つめワナワナと震えているイデアが面白いのであえてそれは言わないでおこうと決め、成人済みと言っていたがと思いいたり「先輩こそいくつなんですか」と今一度問う。
「十九」
「お兄さんじゃないですか!」
「お、おに……あの、さ、萌えること言うのやめてもらえる? これ以上僕に罪を犯させないで……」
「今現在四つ違うんですか?」
「ぐっ、そ、そう、だね。うん」
「タバコ吸うって知らなかったです」
「ア、う、うん……もしかしていやだった?」
「うーん……」
正直嫌と言えば嫌なのだけれどとイデアの顔を見上げ、先程煙を吹きかけられた時のイデアの意地悪な表情を思い出し、ぽっと頰を染める。
監督生はイデアの内面も好きだが、顔もとにかく好きで、遠目から見ても喫煙している時の横顔があまりにも様になっていて見張れていたのだ。
でもただでさえ不摂生を極めているだけに、タバコまで吸われたら寿命が縮まってしまうと心配になる。
かっこいいと長生きして欲しいなら後者を取るに決まっている。
「タバコ……やめてくれないなら警察に行きます」
「ファッ⁈ き、君、そ、それは、ちょっ、ちょっと酷くないですか? ど、同意の上! 拙者無理矢理してないんですが⁈」
「証明できないですよね」
「うっ……な、内定、と、取り消されちゃうんで、その……警察だけは……」
「タバコやめられますか?」
「……ウン」
「ほんとですか?」
「ヤメマス」
じーーっと見つめ続けると、イデアは「すぐには無理ッ」と電子タバコを握りしめ、わっ! と顔をくしゃくしゃにして叫んだ。
年下の女の子にいいように転がされている自分に若干酔っている節はあるが、イデアなりに「心配されてる」は理解しているので譲歩した答えである。
「減らしてくださればいいです……かっこいいので」
「へっ」
「なんでもないっ!」
「え、えっ……え〜〜! フヒヒ、拙者の彼女可愛すぎんか〜?」
逃げるように走り去っていく後ろ姿を見送り、イデアはこれぞ至福というように電子タバコに火をつけた。
終わります〜!