寒すぎてザムス・ガルになりそうな昨今、みなさんいかがお過ごしでしょうか。わたくし人形使いは布団から出られません。たすけて。
・アラヒト(薬味さらい)
冬コミで入手した本サークルさんの本の2冊目です。
本作は東方二次創作の古典的テーマともとなった「幻想郷に来る前の東風谷早苗」を描きつつ、それを起点として「幻想郷に来た直後の東風谷早苗」を描いた作品。
本サークルさんの作品における早苗さんの出番はかなり多く、彼女をメインに据えた作品もたくさんあります。そしてそれらの作品を通して、早苗さんは神の使いである「巫女=まだ人間」から「人の肉を食む」という一線を越え、諏訪子や神奈子と同じ立場の「神」になるという展開が過去作「カミナレ」で描かれていました。まあそのあと「モミジロール」で人間の形したケーキ食べたりもしてましたが……。
思うに、早苗さんが人間としての一線を越えて「神と成った」という結論にたどり着いたのが「カミナレ」であるとするならば、本作「アラヒト」はその発端であると読める気がします。
前述の通り、「幻想郷に来る前の東風谷早苗」は東方二次創作の古典的テーマです。そのため「幻想郷に来る前の東風谷早苗」にはさまざまな解釈や姿があります。しかるに本作における外の世界の早苗さんは、クラスメイトたちとは表面上は要領よくやりながらも両親からはその巫女としての力を称賛されつつも恐れられ、「まさかこんな時代に生まれ落ちるなんて」と憐れまれている。本作での外の世界の早苗さんは、一貫して「異物」として描かれていると感じました。そしてなにより早苗さん自身がいちばん、自分が周囲の世界と交われない異物であることを自覚している。
だからこそ早苗さんは同年代のクラスメイトとは本心を隠して要領よくやっていながら、本当に心を許しているのは正体不明の「自称妖怪カエル女のケロちゃん」だけなんですよね。
しかし、そんな彼女が幻想郷に来て初めての敗北を喫する。その気になれば普通の人間などひと撫でで殺してしまえるような力を持ち、肉親にすら恐れられ憐れまれ心理的距離を置かれていた「現人神」でありながら博霊の巫女との戦いに敗北したときに、彼女は幻想郷における「普通の人間」に成ったと言えるんじゃないでしょうか。
そもそも東方Project原作の流れは、どれも「外敵を博麗の巫女が倒し、倒された外敵は幻想郷の一員となる」というもの。であれば本作における早苗さんもまた「博麗の巫女に倒されて幻想郷の一員、どこにでもいる普通の人間となった」と読める気もします。
そう考えると本作は、普通の人間であった早苗さんが一線を越えて神となる「カミナレ」に対し、現人神として恐れられ周囲から孤立していた早苗さんが普通の人間となって幻想郷に受け入れられるという真逆の流れになっていると結論づけることができると感じました。
今日はここまで。