――母の姿を、ネグザルツは爆光の中に見送った。
随伴機が放った強力な閃光弾(フラッシュ・チャフ)が全ての感覚機(センサー)をくらました中でも、ネグザルツははっきりとレーヴァテインの存在が、深く遠い闇の中に消えていくのを感じていた。
逃げられたのではない。見逃されたのだ。
砲撃戦形態(ガンナーフレームモード)のレーヴァテインの主砲で超々遠距離から狙撃されていれば、ネグザルツは確実に消滅していたことだろう。しかし、レーヴァテインはそうしなかった。どころか、長距離戦装備であるにも関わらず近接戦闘を挑んできた。
レーヴァテインの聲(こえ)が、竜骨(スパイン)に反響する。
『ネグザルツ、あなたの力と剣技で……この母を斬れますか?』
『全力で来なさい。手加減は無用です』
手加減などしていない。できるはずがない。
しかし、それでも――まったく届かなかった。その業(わざ)も、意思も。
感覚機(センサー)が回復したときには、すでにレーヴァテインおよびその他の敵性体の反応はなし。しかし、その行き先は分かっている。
闇の奥底。光は届かず時空すら捻じ曲げる超重力圏「奈落(アビス)」。
そこにレーヴァテインはいる。
囚われているのではない。自らの意思でそこにいるのだ。
そして、底にいるのはレーヴァテインだけではない。それに付き従う、これまでに戦ってきた――そして家属とも言える、レーヴァテインの眷属たち。彼らもまた「奈落(アビス)」の底でネグザルツを待ち受けている。
なぜ? ネグザルツにはわからない。
レーヴァテインは何も告げず、突如自らの属する光の軍勢を離脱した。
そして、自らの主星たる太陽神に、反旗を翻した。