「マルケット役のアントワーヌです!よろしくお願いします。」
「アントワーヌくん。君のことは結構前から知ってるよ。よろしくね。」
「まさか存知ていただけていたんですか!大変光栄です。ありがとうございます!」
ルイ・ウィートンさんはなんと僕のことをここに来る前から知っていたらしい。僕はまだ新人も新人で、今回が初めてのステージだ。無名と言われてもおかしくない僕がこのパリでトップと言われる存在になぜ認知されているのか、優越感に浸ったちょっとだけ得意気な顔をした僕がそれを聞いた。
「ですが聞いてもいいですか?僕のことをどうして存知てくださっているのですか?」
「・・・・・・少し言いづらいんだがね、実は君を初めて知ったのはあのオーディションの時だ。」
まあ、、そうだよなあ。あんまり期待しすぎるとぞうであって欲しいものがそうであって無かったときの落胆ぶりが激しい。だからあんまり期待はせずにいた。
でもそれでもやっぱりもしかしたら、あのオーディションよりももっと前から僕を認知していたんじゃないかって期待をしてしまっていた。本人を目の前にすればそうであってくれと祈ることも、いつも以上にしてしまうのだ。
「アントワーヌくんは、とてもいいパフォーマンスをしてくれたと思ってる。でも一人だけ誰よりも上回る圧倒的なパフォーマンスを見せた人がいた。でもその人は、自らあのオーディションを辞退してしまった。確か、当日の全行程が終わってからだったか。
私の香水まで愛用していると言っていたらしいんだが、どうしてだろう。」
「もしかしてそれで、僕が次に合格候補だったからってことですか?」
「言いづらいことはそれだったんだ。申し訳ないがその人が一番良かったと私は純粋に思った。」
なんてことを知っちゃったんだ。ていうことは本来ならここでルイ・ウィートンさんと話していたのはその人だったってことじゃないか。僕はあくまでもその人の予備役か。
でも、じゃあその人は誰だ?あそこには役者さんがいっぱいいた。でもそのうえで圧倒的なパフォーマンスを見せたともなれば、まず相当な役者。僕みたいな無名ではまんざらないはず。
それならば、それは。
「お待たせしました!全て準備が出来ましたので早速練習行きましょう!」
「はい、ありがとうございます。頑張ります!」
ノックが聴こえた後、ゆっくりとドアが開くとスタッフが練習開始のゴングを鳴らした。
僕は急いで立ち上がってそれにお礼を言った。するとそれを見てルイ・ウィートンさんが手を握ってくれ、こんなことを言ってくれた。
「緊張せず、リラックスね。よろしくお願いします。」
「あっ、、すいません!!頑張りまあす!!!が、がんばらさせていただきます?」
「一つ前のやつでいいんですよ!」
「そうですか!」
おぼつかない僕の敬語がむしろ場を和まるいい道具となった。敬語はどれだけ習っても覚えられるような気がしない。もちろん習ったこともそんなにないんだけど。
「それでは、クリスマスだけの靴屋さんの演劇練習を始めます。ルイ監督、お願いいたします。」
「はい。それでは今日は基礎練習をみんなにはしてもらいます。」
主人公という中心的ポジションにいることに未だに違和感があった。なぜなら僕の右にも左にも演劇に慣れてそうなたくましい役者がたくさんいたからだ。こんなに立派な人たちに囲まれて演技をするのかって思うと違和感がだんだん不安感に変わっていった。
「まずは筋トレから。腕立て伏せ、背筋のストレッチ、腹筋、これらを練習の前に基礎練習としてやる。」
筋トレ!?おいおい、いや考えてみたらそこまではきつくない。今までもやってきたことばかりだからそこまででもない。でも、筋トレ。基礎練習というからもっと簡単なのかと勝手に思ってた。でも、筋トレだ。
この「筋トレ」が終わった後は、今度は「発声練習」が始まった。滑舌、声の表現力、呼吸の仕方、それら全てを磨いていく。
「よし終わったな。これでいったん基礎は終わり。それじゃ次は、簡単なゲームを取り入れた演技練習だ。台本はこの次で使うから今はまだ放置しておくんだ。」
演技練習?ゲーム?
台本をもってステージに上がらず、まずは基礎と演技。稽古に入るまで、その台本を読んで憧れたスターのようになるまでには、ただ果てしない苦労がまだまだ続いていた。
「ゲームを始めよう。」
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初公開日: 2025年02月17日
最終更新日: 2025年02月17日
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