今日は久しぶりに朝イチで映画を見に行ってきました。さむーい。
 そして今回行ってきたのは、宝塚市にある「シネ・ピピア」。
 初めて足を運んだこちらは、総合施設「ピピアめふ」の5Fにある映画館。映画関連の本がぎっしり詰まった本棚や併設のカフェである「バグダッド・カフェ」など、シネコンとはまた違った雰囲気のある場所です。
 さて、なぜ今回新しく映画館を開拓したかと言うと、「侍タイムスリッパー」にて風見恭一郎を演じた冨家ノリマサ氏が主演を務める自主制作映画ということで、侍タイムスリッパーが知られてきた頃に名前を聞くようになった「最後の乗客」を見るため。
 本作は昨年末に塚口サンサン劇場にて上映されてたんですけど、体調不良やら冬コミ原稿やら冬コミ原稿やら冬コミ原稿やらで結局見に行けなかったんですよね。かろうじてパンフだけは買っといた自分に拍手。
 で、年明けてからまだやってるところないかなあと一縷の望みを託して調べていたところシネ・ピピアを見つけたというわけです。
 朝早いしけっこう遠いしで行くかどうか迷ってましたが、結論から言うと実に見てよかったと思える作品でした。
 主人公・遠藤はどこにでもいる普通のタクシードライバー。彼らタクシードライバーのあいだでは、ある奇妙な都市伝説が話題になっていました。曰く、深夜に女子大生くらいの若い女の子がひとりでタクシーを待っており、行き先を「浜町」と指定するという。そして目的地に着いたと思ったら、その女の子は忽然と姿を消している。
 そんな噂を笑い飛ばして、その日の業務を終えようとしていた遠藤のタクシーを止めたのは、噂の通りの若い女の子だった。サングラスとマスクで顔を隠したいかにも怪しいその乗客が指定した行き先は果たして「浜町」。
 訝しがりながらもタクシーを走らせる遠藤の眼の前に、今度は年配の女性が飛び出してきます。慌てて急停車した遠藤の前に現れたのは、幼い女の子を連れた見知らぬ親子連れ。そしてその親子連れが指定した行き先もまた「浜町」。
 この奇妙な乗客の正体は……?
 本作は55分という映画としてはかなり短い尺の作品。にも関わらず、その中できちんと謎や伏線を散りばめ、その謎や伏線を丁寧に回収しているのが見事でした。
 伏線回収も見事だったと思いますが、個人的に本作でいちばんうまいと思ったのが謎を引っ張る長さ。
 本作は短い尺ではあるものの、けっこうたくさんの謎が散りばめられています。タクシーを止めてきた若い女の子と親子連れは何者なのか、どうして両方とも目的地が浜町なのか、どうしてエンジンには何の異常もないのにタクシーが停まってしまったのか、などなど。全体を通して見ると謎を振りまく部分はかなり長く、終盤までことの真相ははっきりしません。
 そしてラストで一気にそれまでの謎の回答が来るんですが、今思い出すと事の真相の説明は意外なほどセリフに頼ってないんですよね。それでも本作の一連の事件がどういったものであるかはきちんと伝わりました。この真相解明の部分は、なんというか「そう来たか!」という強い驚きではなく「そうだったのか……」という滲むような理解を感じました。
 また、ここまで説明的なセリフや説明的な絵に頼らずにことの真相を説明できるものなのか!という驚きもありました。
 わたくし人形使いが創作に触れる理由、期待するものはたくさんありますが、その中のひとつに「騙されたい」「予想を裏切られたい」というのがあります。いつも知らない映画をできるだけ前情報なしで見に行っているのもこれが理由。
 本作もなんにも前情報を入れずに見に行ったんですが、いやあまったく予想外の真相でした。
 「予想を裏切る」の前段階として「特定の予想」、言い換えれば「思い込み」があるわけですが、「タクシードライバーのあいだで噂になっている謎の乗客の都市伝説」とくれば、この世のものでないのは乗客の方だと思い込んでしまうのが当然というものでしょう。逆でしたねえ……。この「騙し」、本当にうまい。
 そしてまた予想外だったのが、本作が東日本大震災を取り扱ったものだということ。これについては予告やポスターでも一切触れられていなかったのでまったくの予想外でした。映画冒頭でも家の残骸のようなものが残る浜辺の映像がありましたが、そこでちょっと引っかかるものを感じたものの東日本大震災のことだとは思い至りませんでした。さらに今思い返すと、ちらっと写った慰霊碑以外に明確に「東日本大震災」というワードは作中には一切用いられていなかったはず。セリフにもなかったと思います。
 当時、さまざまな作品から震災を思い起こさせる描写が削除されていきました。本作でも津波などの直接的な描写はありません。しかし、本作は映画という「虚構」の力を借りることでこの震災における「取り残して来た人」を描いていると感じました。
 この東日本大震災という出来事はあまりにも大きいもの。そのため創作のテーマとして取り上げるのはもちろんのこと、前述したようにそれを想起させる描写すらも(行き過ぎた「配慮」も含め)忌避されてきました。そのためこれをテーマとして掲げるとなるとそのこと自体が目立ってしまい、それをテーマにした作品がどういうものであるかを顧みられないというリスクがあったんじゃないかと思います。そっちばっかりに引っ張られて作品内容が見られないという。
 しかし本作は、東日本大震災という要素はあくまで舞台であり、その上で「取り残された人」と「取り残してきた人」の一時の交流を描くという形に収めているので、過度に東日本大震災の悲惨さを描く!とかそういう方向になっていなかったので、静かな気持ちで見て、そして静かな気持ちで見終えることができました。
 こうした話だと、どうしてもカメラを向けられるのは「取り残された人」となりがち。しかし本作は前述の通り映画という虚構の力を借りることで、もう「向こう側」に逝ってしまった「取り残してきた人」のほんのわずかなあいだの交流を描写しているのが素晴らしかったと思います。
 
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野崎抹茶ラテ
こんにちは
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シネ・ピピア「最後の乗客」見てきました!
初公開日: 2025年01月30日
最終更新日: 2025年01月30日
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