そんな訳で今、二人の姿は仮面舞踏会の会場にあった。二人と言っても、気まずさには勝てなかったので会場では別行動。厳密に言うとアンナの方が逃げた。ジュリオはやはり追って来ず、周囲を警戒する為か視界に入る所にはいるものの、近付いてこようとはしなかった。
遠くで時折こちらの様子を伺いながら酒を嗜んでいる彼を、同じく遠いテーブル席から眺めてアンナは嘆息した。本当なら晴れて恋人同士になったジュリオと楽しくダンスパーティと洒落込むつもりだったのに、玉砕した事で頓挫してしまった。アンナの周りの空気は最早お葬式状態。だったらいっそパーティで新しい人でも捕まえてしまえば楽になれたのかもしれないが、長年の恋心をバッサリと斬られてすぐ立ち直れる程、アンナは図太く出来ていなかった。
華やかなパーティ会場の中でも、彼の立ち姿は絵になった。会場の誰よりも目立たない質素な仮面をつけて静かに佇んでいるだけなのに、アンナには眩しく見える。手の中で揺らめくワイン色のカクテルも大人の雰囲気を醸し出していて、通算何度目かもわからない、彼が年上の男性であるという実感をアンナは半分辟易しながら覚えていた。
振られたのだから、さっさと忘れてしまわなければいけない。斬られた恋心は捨てなければならない。そう頭ではわかっていても、10にもならない年から焦がれていた異性への恋情はそう簡単に掃いて捨てられない。自分はこんなに粘着質だったろうかと、アンナは深く嘆息した。
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こっからちょっと書いてたので飛ばします!
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少々躊躇いはあったものの、アンナは青年の手を取り、椅子から立ち上がった。手を引かれるがままに会場の中心辺りへ連れて行かれそうになったが、何となくジュリオに見られるのが嫌だと思って、アンナは端の方で歩みを止めた。急に立ち止まったアンナを気にする素振りも無く、青年も足を止めてその場で踊り始める。それなりに場数を踏んでいて慣れているらしく、最近ジュリオと練習してダンスを習得したばかりのアンナでもスムーズに踊れていた。
くるりと回りながら、アンナはジュリオの方を一瞥する。一瞬何人かの女性に囲まれて困った顔をした彼が見えたが、アンナは悲しそうに目を伏せるだけでそれ以上視線を向けなかった。彼が他の女性とどうしようが、自分にそれを止めさせる権利はない。その度胸も今は完全に削がれている。これ以上見ても自分が哀れになるだけだ。
今はせめて楽しもう。今日家に帰った後、ジュリオに笑顔でおやすみなさいが言えなくても。いつかは失恋を乗り越えて、平気な振りをして笑っていないといけないのだから。そうでないと、また自分が彼を縛り付けてしまう。ぎこちない笑顔を張り付けながら、アンナは音楽に身を任せて尚も踊った。心の中に泥となって残り続ける重たい気持ちを、精一杯振り落とすように。
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ジュリオがアンナから告白の気配を察知し、断る決断をしたのは今から数か月程前の事だ。ジュリオは昔からアンナの事が好きだった。年下の少女への庇護欲、と言える物もあるにはあるが、今ではそんなものでは到底説明できない重苦しい感情を抱いている、という自信があった。
毛先が可愛らしい、長く美しく柔らかい金の髪が好きだ。ジュリオを真っ直ぐ見つめてくる瞳が好きだ。信頼の証として触れてくれる手が好きだ。戦いの中で抱きしめた華奢な身体も、名前を呼んでくれる声も、少女の顔も女性の顔も、全部全部好きなのだ。
だが、ジュリオは彼女と自分が恋人になる、などという幻想を夢見る事はない。正確には、それを自分に許していない。彼女と対等になった事は素直に喜ばしいのだが、その内に秘められたある目的を察知するのと同時に不味い事になったと冷や汗をかく羽目になった。
だから正直な話、彼女の好意を察知し始めて暫くは、どうか自意識過剰の恥ずかしい勘違いであって欲しいと願っていた。羞恥で悶え狂って死ねる自信はあったが、その後自分が類を見ない程最低な行いを彼女にしなければならない事に比べたら、ずっとマシに思えた。だが結果は上記の通り。勘違いなんてものは無かった。
そうなってしまったら断る他に無い。自分如きの存在に彼女の大切な時間を潰す訳にはいかなかった。ただでさえ青春時代のほぼ全てを個性とマフィアに奪われてきたのだ。これ以上自由を奪いたくなかったし、その存在に自分がなる事もジュリオには耐えがたかった。
ジュリオからしてみれば、そもそものこの関係性が間違いだった。片やれっきとしたお家の令嬢で由緒正しい身分の美しい彼女、片やどこの出とも知れない孤児の傷だらけで醜い自分。釣り合う要素がどこにあるというのか、と誰とも知らない相手に何度も問答する。好きになる要素もジュリオ自身では見つけられず、故に彼はずっと一緒にいたせいで勘違いをしているに違いない、と信じてもいた。
それでもジュリオがこの関係が許せていたのは、彼の個性が奇跡的な確率でアンナの個性に対する特効薬だったからだ。だが互いに無個性のような状態の今、そんな免罪符じみた理由はもう存在しない。誰にでも触れられ、誰とでも会える身となったのだから、こんな傷物に構っていないでもっといい人を探したらいい。そういう完全な善意で、ジュリオは敢えてアンナを傷つける事を選んだ。
とはいえアンナがショックを受けた事には変わりない。ジュリオは何だかんだアンナに甘かったので、ショックが癒えるまでパーティは控えるべきかと断るか否かの意思確認をしていた。結局アンナが招待を断らなかったので、今彼はここにいる。
ちょっと早いですが今日は終わります!
予定表かなりタイトなスケジュールにしちゃったんですけども、帰宅とご飯のタイミング的に19時半開始は普通に無理そうです・・・ごめんなさい!
明日は20時~21時の間には開始して23時~24時まで配信しようと思ってます。
内容は今日の続きで完成目指す予定です!
色々変更ばかりで申し訳ありません!
今後も何卒宜しくお願い致しますm(__)m
では失礼します!