・博麗神社:霊夢と魔理沙パート
「よう、元気してるか霊夢……ってなんだよそのだらけっぷりは」
「あー? なんだ魔理沙か……素敵なお賽銭はそこよ」
 とか言いながら霊夢は、手にしたうちわで力なく賽銭箱の方を示します。まだまだ残暑が収まらず、博麗神社は熱気と蝉の声に包まれていました。
 霊夢は巫女装束をおへそが丸見えになるまでめくり上げたあられもない姿で縁側に転がっています。さすがの博麗の巫女も連日続く暑さには勝てない様子。
「お前なあ……仮にも巫女がそのだらけっぷりはなんなんだ。参拝客が見たら嘆き悲しむぞ」
 脱いだ三角帽子で顔をあおぎながら、魔理沙は無防備な霊夢の脇腹をつんつん。霊夢はいもむしみたいにくねくねしてその攻撃を避けながら文句を返します。
「はん、この巫女サマの引き締まったせくしーなお腹とおへそを拝めるんだから金銀財宝を持ってきて欲しいもんだわ」
「ほうほう、これにそんな価値があるとはな。どれよく観察させてもらおうか。うりうり」
「人のへそに指突っ込むな!!」
 ぱかーん!という打撃音が、雲一つない青空に響き渡ります。後ろ頭を思いっきりはたかれた魔理沙は体をくの字に折って苦悶の顔。
「いってーなお前……今さらへそに指突っ込んだくらいでぎゃーぎゃー騒ぐなよ!」
「誤解を招くような言い方してんじゃないわよ!」
 顔を見合わせて威嚇し合う両者でしたが、蒸し暑さに一気にやる気がしぼんでいってしまいました。霊夢と魔理沙はふたりそろって縁側でぐったり。
「あーただでさえ暑いのに余計疲れちまったぜ……争いは何も生まないよな……」
「なんかないの魔理沙? こう、すぐに涼しくなれるような都合のいい魔法とか……」
「そんな都合の良い魔法があったらとっくに使ってるっての。……ん? そういえば……」
 むくりと体を起こして、魔理沙は空を見上げます。その視線の先に広がっているのは、雲一つない青空。そこには、よく空を飛んでいる妖精の姿がありません。
「そうだ、こういう暑い日にはあいつだよ。チルノはどうしたんだ?」
「どうしたんだ、って……私が知るわけないじゃないの。あいつの飼い主じゃないんだし」
「でもお前、夏には毎年チルノをとっつかまえて冷房代わりにしてるだろ」
 そう、夏でもひんやり冷たい氷の妖精チルノは傍若無人の博麗の巫女によってたらいに突っ込まれたりぐるぐる巻きで天井から吊るされたりして冷房代わりにされているのです。しかし、今年はそのあわれな氷精の姿は見当たりません。
「あー、そういや最近見ないわね。この暑さでとうとう溶けちゃったんじゃないのー?」
「お前なあ……」
「それか、またなんか異変でおかしくなってるとか」
「異変? ああ、こないだのあれか……」
 霊夢の言う「異変」とは、少し前に起こった妖精たちが踊りだすという出来事です。異変に気づいた霊夢と魔理沙は、この異変の原因がさらに先だって起こった「四季異変」の首謀者である秘神・摩多羅隠岐奈であることをつきとめたのでした。隠岐奈は霊夢と魔理沙によって倒され、その小さな異変は終わった――そのはずでした。
「でも、あいつ……隠岐奈はもうやっつけただろ?」
「そうだけど……まだなんか影響が残ってるのかもしれないわね。あんたどう思う?」
「ふーむ……」
 魔理沙は考え込みますが、最近チルノが姿を現さない理由は特に思いつきません。だいたいにしてチルノは気まぐれで無軌道なので、どこでなにをしてるかなんてそもそもよくわからないのです。
「まあ、しばらくして暑さが収まったらまたふらっと戻ってくるんじゃないのか」
「それもそうね……」
 そう結論付けて、ふたりはふたたび縁側に横になります。周りでは相変わらず、セミがうるさいくらいに鳴いていました。
・VSリリーホワイトバトルシーン
「はる、です、よーっ!」
 舞い散る桜の花びらをまといながら、リリーはスカートと長い金髪をひるがえして踊っています。対するチルノは、かなりの苦戦を強いられていました。
 あたりじゅうを埋め尽くすような桜の花びらの嵐に視界をふさがれ、弾幕の狙いが定まりません。リリーは逆に桜の花びらの向こうに身を隠すようにして、くるくる踊りながらつぎつぎと位置を変えて弾幕を撃ってきます。
 そういえば、リリーはいいつも春になると姿を現して弾幕をまき散らすのが風物詩となっていますが、こうして直接弾幕ごっこで対決するのは初めてでした。普段はほわほわしているリリーがこんなに強かったなんて! チルノは自信が揺らぐのを感じてぐっと奥歯を噛み締めます。
「ぐううーっ! リリーのやつなかなかやるわね! でも……!」
 なんとか攻撃と回避のリズムを保ちながら、チルノは反撃を試みます。リリーの攻撃のリズムだけでなく、彼女が放ってくる弾幕の位置をよく見て――。
「てやーっ!」
 掛け声とともに、チルノは自分の周りを覆い尽くそうとしていた桜の花びらごと弾幕を凍らせます。すさまじい勢いで凍っていく弾幕が、リリーの片足を凍らせて動きを止めました。
「くらえーっ!」
 その一瞬の隙をついて、チルノは冷気を放ちました。今までのようなでたらめや力任せではありません。細く鋭く研ぎ澄まされた冷気が槍のように伸び、リリーを正確に狙っています!
 動きを封じられたリリーはその攻撃を避けることもできず、被弾――と思った次の瞬間、その姿は大量の桜の花びらとなって舞い散りました。
「ええーっ! そんなの反則じゃん!」
「反則じゃないですよーっ!」
 声が聞こえたのは後ろの方。桜の花びらで作ったダミーを散るのが狙っているときには、リリーはすでにチルノの背後に回り込んでいたのです。リリーは攻撃直後の無防備なチルノに弾幕を放ちます。チルノは必死にその弾幕をかわそうとするものの、リズムを崩して顔面に被弾してしまいました。
「あいたーっ!!」
 悲鳴を上げて、チルノは地面に墜落。そのそばにリリーがふわりと着地します。
「やったー! チルノさんに勝っちゃいました!」
 ぴょんぴょん跳びはねて大喜びのリリー。いっぽうチルノは、地面に大の字になって目を回しています。――と思いきや、いきなり跳ね起きてびしっとリリーに指先を突きつけました。
「や、やるわねリリー! でも、あたいのやる気はまだまだ残ってるわ! こっからが本当のしんけんしょーぶなんだから!」
 氷の妖精のくせに、チルノの瞳には闘志の炎がらんらんと燃え盛っています。言う通り、まだまだやる気十分といった感じ。そんなチルノに、リリーも顔を輝かせます。
「さっすがチルノさん! もっともーっとわたしと遊んでくださーいっ!」
 ふたたび空に舞い上がったリリーは、うれしそうに笑っています。
 
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紅楼夢原稿を書いていきます。
初公開日: 2024年09月07日
最終更新日: 2024年09月07日
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