わたしの家はお金持ちだ。自宅に25メートルプールがあるくらいには。
そう言うと大抵の人は恵まれていると言うだろうし、実際にわたしは恵まれていると思う。市内でも有数のいわゆるお嬢様学校に通えているし、両親との仲はとてもいい。
けれど高校生に上がる頃には、わたしの賢しい自意識は周りの人たちが、先生たちも含めてわたしに対して遠慮がちに、はっきり言えば壁を作って接していることに気付いていた。そんなことには気づかず、自分の周りの世界が正しくて優しいものだと思い込んでいればよかったのに。
思えば、誰もがわたしを羨んで、きれいなものを見る目で見ていても、触れようとする人はいなかった。遠巻きに「お金持ちのお嬢様」を囲んで騒ぐ人たちはいても、そこから近づいて来る人は一人もいないことに気がついたわたしは、人知れず孤独を深めることにした。
深夜、自宅の屋外プールに向かうのが私の日課になっていた。スクール水着に着替え、冷たい水に足先を浸す。そのままするりと水中に体を沈めると、全身が水に包まれる。水に包まれたわたしは外界から遮断されて、孤独だった。
毎朝登校するたびにかけら
れる挨拶も、先生の褒め言葉もそこにはない。ないほうがいい。どうせわたしにはそこからだれも近づいては来ないんだから。
別に泳ぐのが好きなわけでもプールが好きなわけでもない。ただ、ここがいちばん一人でいられる場所だった。わたしは毎晩ここに来て、自分の孤独を抱きかかえていた。
そんなある日、いつものようにスクール水着に着替えてプールに向かおうとしていたとき、私は異常に気がついた。
音がした。
ぱしゃん、という水が弾ける音。
思わず足がすくんだ。
屋外プールと言ってももちろん防犯用の柵と監視カメラはあるから、だれかが入ってきたなんて想像できない。もちろん、こんな深夜に両親がこんなところにいるわけもない。