私はたちまちのうちに教団のシンボルとして祭り上げられた。私を神輿の上に据えた古参の偽装天使たちの思惑通り、私は教団内で「神に祝福された者」としてマルクト教団に「上級天使」の位階に就くこととなった。
マルクト教団内での最上位の位階を示すもっとも大きな純白の翼を背負わされた私を見る人々の目はさまざまだった。本物の天使として救いを求める目、ただの道化として祭り上げられた子供を蔑む目……。
しかし、私にとってはどのような目で見られていようと関係なかった。与えられた上級天使の位階は、私がこのマルクト教団で活動するのに実に都合が良かったからだ。周囲が勝手に私を偉大な存在として扱ってくれるのだから。
それに、私自身と、そして教団内の一部の者しか知らないことだったが、私はまるきりお飾りというわけではなかった。私にはマルクト教団における上級天使としての実用性(・・・)があった。
マルクト教団の目的は、実在する神である創造維持神を守護し信仰するとともに、その神に介入し、その力を知り、可能ならその意思を、その言葉を引き出すことだ。
私にはそれができる力が備わっている。与えられていた。
他ならぬ、父によって。
教団内のデータベースへの無制限のアクセス権を得た私が、父が生前にマルクト教団との関わりがあったことを知ったのは、マルクト教団の長となってからしばらくしてからだった。
「運命」などという言葉は安易で好きではないが、そのことを知った私には驚きではなく納得があった。自分が今ここにいることが、当然のことだと思えた。まるで見えない蜘蛛の糸に引かれるように、私はそうなるべくしてここにいるのだという理解があった。
父は姉を救えなかった。姉を歪ませた世界を正すこともできなかった。
しかし、私は違う。
私には世界を救えるだけの立場と力がある。父ができなかったことを、私がやるのだ。
神でさえ、この世界から未だ歪みを完全には取り除けない。ならば、私がやるまでだ。
私の目的はそこにある。私の運命はそこにある。
私が、この世界を救うのだ。
――たとえそれが、私のバロックであったとしても。
・天導天使パート2
私の天導天使という立場から見るまでもなく、マルクト教団が内部分裂しつつあることは、もはや多くの偽装天使たちにとって公然の秘密と言っていい状態にあった。
古参の偽装天使たちは「コリエル・メンバー」を名乗り、これ以上の創造維持神への介入に反対している。
それに対して――。
「つまり、諸君はこのまま事態を放置することで世界を救えると、総認識しているわけか」
「そうではありません。しかし……」
「世界の歪みは、もはや放置できる状況にはない。神が修正しきれないほどの歪みが社会に蔓延していることはデータからも明らかだ。歪曲修正率はわずかに、だが確実に低減している。ならば我々が神の助けとなり、必要ならば介入してその力を補うことが必要なのではないか?」
上級天使の言葉に、会議室が波のようなざわめきに満たされる。
彼の言うことが真実なのは、そのデータを採取・確認している私がもっともよく知っている。しかし――。
私は、私自身はどうするべきなのか。私はずっと迷っていた。