夏コミ原稿最終締め切りまで2週間弱となってしまって冷房以外の理由で冷え冷えです。しかし夏コミまでに終わらせときたいのは夏コミ原稿だけではないのでどんどんやっていきましょう。
・東方SFアンソロジー 夢現理論の臨界点(東方SFアンソロジー製作委員会)
 前回に引き続き、収録作品の感想を書いていきます。1回につき4、5作書いていければまあ終わる……といいな……。
・玉造魅須丸とみっつの星(しじまうるめ氏)
 個人的に見出した本作のSFテーマは「天地開闢」。
 まず特徴的なのは小学校低学年向けの本のような優しく易しい地の文。小説における地の文はあまり日の目を見ない部分ではありますがさにあらず。本作ではこの地の文でもって作品全体の雰囲気をしっかり確定させています。
 さらにその平易な地の文に対し、内容は地球という惑星のなりたち、ひいては幻想郷という世界のSF的側面からの解釈というガチのハードSF。この内容をここまで平易な地の文と文言で書き起こせているのはすごい。その語り口と土偶馬が出るので呼んでて完全にNHKの学習番組を見てる気分になりました。
・プロテウスの盃(エンジェルダスト氏)
 個人的に見出した本作のSFテーマは「多面性」。
 本作は小説ではなくマンガ。
 「願ったことを実現してくれるアイテム」はSFやオカルトのお約束ですが、そういったアイテムはまあ100%確実にロクな結果をもたらさないもの。本作の「空から落ちてきた石」もそれは変わりません。星の秘めた願望を読み取って現れた聖の幻影を、星は噛み砕いてしまいます。幻影はあえなく砕け散って消えてしまう。
 では、石が姿を変えた聖は、本当に本物とは姿が同じなだけのただの幻影だったのか。そしてその幻影に獣のごとくかじりついた星の姿は?
 「石」はいわゆる願望機としての側面を持っていますが、そうしたアイテムは前述のとおり得てして良い結果をもたらしません。では、そうしたアイテムは悪意を持ってそうした結果を導いているかというと……。
 普段見えている人間性は、その人物のいち側面にしか過ぎないもの。そうした薄氷の如き人間性が不思議な力を持ったアイテムという一石が投じられることでそれまでになかった側面を魅せるというのはSFの面白さと言えるでしょう。
・京都市が財政破綻した(そひか氏)
 個人的に見出した本作のSFテーマは「トンデモ世界観」。
 待って待って待って「財政ブラックホール」ってなに。
 SFはこうした「高度な知識と緻密な世界観でバカをやる」方向性の作品にも向いてますよね。しかしSFでギャグをやるのには相当なSFレベルが必要であり、本作は非常に高いSFレベルに支えられたシュールな展開が楽しめます。
 特に終盤の「一」輪にダイヤルを合わせようとする下りは爆笑してしまいました。SFでトンデモをやるには、ただ単にメチャクチャなことをすれば良いわけではありません。そのメチャクチャにもロジックが必要なんですよね。
 それはわかりますが「国会内の立法の量がシュワルツシルト半径をい超えてしまい、行政ブラックホールが発生」とかいう文言は一生のうちでここでしか読めないと思います。
・ふんわり異変-そして如何にして比那名居天子は旅立ったか-
 個人的に見出した本作のSFテーマは「すでに崩壊していた世界」。
 普段何気なく生活しているこの世界が実はすでに……というのはSFのお約束のひとつ。本作はタイトルとその内容、そして一つ前の作品がギャグ系だったことからこれもまたギャグだと思ってました。まあある意味実際ギャグなんですが……。
 終盤でなんか雲行きが怪しいな……?と思ってたらラストでそういうオチかい!という一連の流れが作れてるのが作品構成力(さくひんこうせいぢから)が強い。そして小鈴ちゃんがアホの子可愛い。
・スペースナズーリン(阿吹氏)
 個人的に見出した本作のSFテーマは「ワイドスクリーン・バロック」。
 本作は8ページのマンガ作品なんですが、10ページに満たないページ数の中で繰り広げられる物語はあまりにも広大無辺。というかいきなり「地球から遥か、五億光年彼方でのことである」とか言われても……。
 本作は遥かなる時間を超えてナズーリンが主人である星を追い求める物語なわけですが、「虎」「ワイドスクリーン・バロック」でアルフレッド・ベスター「虎よ!虎よ!」を想起せざるを得ない。あと「この頃の信徒はおおよそイカだった」は明らかにドゥーガル・ディクソン「アフターマン」だよな。
 そして本作でナズーリンと星が再会するためのシステムとして「宝塔をなくす」という東方二次創作的テンプレをそのままある種の運命論として機能させてるのが実にSF。あと「星鼠」と書いて「スタチュー」と読ませるセンス好き。
 今日はここまで。
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