⚠🌈🕒 𝐕𝚫𝐋𝐙(gnは名前のみ)⚠
 最近アイツの顔を見ないな。しかも、声すら聞いていない気が。桜魔での仕事終わりに、ふとそう思った。もちろん、祓魔師という職業柄長い期間合わない人がいるのは事実だし、相手の職業も相まって相当な期間会わないことも多々ある。同期である彼──甲斐田とこんなに長い間合わず話さずというのは久しぶりすぎて心配だ。何かあったのだろうか。
 念話でのアポさえ取らずに甲斐田の家に向かう。桜魔にいるのか、それとも現世にいるのかすらも分からないが居なけりゃ現世に渡るだけの話。嫌な予感はしないから大丈夫だとは思うが、いつものように研究に没頭して眠りこけていたり睡眠を疎かにして作業をしていたら弦月を呼んで話し合いだな。
 甲斐田の家の前でひとつ深呼吸。人がいる気配はするからそれが甲斐田なのだろう、安否は分からずとも存在する事実に少し安心する。「甲斐田ぁ?」なんて言いながら勝手に家に入る。基本彼以外の人がいるわけ無いため特に意味のあるものでは無いが、万が一起きていた場合無駄に驚かせることになるからな。念の為ってやつだ。
 人の気配のする方へと足を向け、なるべく音を立てないように歩く。家に入った時点で反応がなかったということは、あらかた寝ているか気絶しているかだ。前者であるといいのだが。
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 まずは居そうな場所を探す。居間を軽く見回し台所も確認すると、現世から持ち込んだらしいカップ麺やエナジードリンクのゴミが置いてあった。まぁ、一応食事は摂ったのだろう、ただこれによって食生活に対しての説教が決まったな。
 次に研究部屋を見に行く。基本ここに籠ってることが多いらしく研究が一段落し気絶するように眠った彼をよく見かける部屋でもある。が、今回はそうでは無いらしい、研究部屋にもいない。資料や書類が散乱しているのを見るについ先程、いや、3日前くらいから入っていないんじゃないか?
 他にも風呂場や庭、御手洗なんかも見たがどこにもいない。ここにいるわけがないだろうと思っていた最後の部屋の扉に手をかけた。中は薄暗く、窓には厚いカーテンのようなものが掛けられている。彼の家の寝具がまとめられているらしいこの部屋は彼の寝室。睡眠のためにあるはずなのだが、いつも使われることなく掃除のため以外で入ることがほぼないと本人が語っていた。むしろリビングや研究部屋で寝具なしに眠る方がおかしいのだ。
 視界が悪い中ほぼ直感だけでベッドの元へ向かう。次第にすぅすぅという寝息が聞こえ、この家唯一の生にほっと息をついた。心配をかけやがって。いや、俺が勝手に心配しているだけなのだが。
「…とま、と、……無理、」
「はぁ?」
「食べ……なぃ、」
 不意に聞こえた寝言に耳を傾ける。「トマトを食べたくない」と言っているらしいがいつもの事すぎるだろ。夢の中でもトマト耐久してるのか?なんて思って心配していた自分が馬鹿らしくなる。生きていて、尚且つ多少は元気そうに見えるから大丈夫だろう、寝ている間に帰ってしまうか。そう考え立ち上がった瞬間──
「……ん、あれ、長尾?」
「おぉ、甲斐田ぁ!」
「うるさっ、なになにどうし……、おんまえ任務直帰だろ!!」
「あぇ?バレたぁ?」
「ちょ、まじシャワーかなんか浴びてこいって!!ちょ、近付くな!!」
 寝起きの割には素早い動きで逃げていく彼をケラケラと笑いながら追いかける。彼の地位も相まって屋敷は馬鹿ほど広いため、そのまま鬼ごっこのようなものが始まってしまった。
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 その後、甲斐田の術で捕まり風呂場に強制連行されるのは。そして弦月と共に甲斐田を叱るのは、また別のお話。
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