・書きかけの続きをさっと書く
お目当ての姿が見えたのだろう、聞こえてくる音楽の中に歓声が混ざり始めた。
音楽とともに歓声が次第に近づいてくると、水心子も背筋を伸ばしたり、辺りを見回したりと落ち着かない様子を見せている。
「やはり持ち上げるか?」
「いらないよ。あ、ほら、見えてきた」
腕を引かれるまま顔をあげると、一団がちょうど角を曲がって現れるところだった。周りの歓声がひときわ大きくなる。
警備と楽器隊、先導する踊り手たちに続いて大きな移動車が姿を現す。その上にあるのは揃いの衣装に身を包んだ刀剣男士の姿だ。
自分の本丸にいる顔ぶれも多いが、やはり本丸が異なると雰囲気も変わる。華、というものだろう。自然なようで、常に見られていることを意識している隙のなさが感じられる。
大型車の上からぐるりと通りを見回し、彼らを見上げる人々に向かって手を振っている。一振りが指をさしてみせれば、指された方向から黄色い悲鳴が上がった。
移動車の上から群衆へ、刀剣男士の各々が思い思いに愛嬌を振りまいては方々から悲鳴や歓声が上がる。群衆も彼らの名前を呼び、手を振り、先ほどまでのざわめきとはくらべものにならないほど騒然となる。
「……すごいな……」
「……ああ……」
四方八方から上がる歓声と悲鳴と熱気に圧倒され、その場に踏みとどまりながらも目は彼らを追うことをやめられない。
車上から大きく身を乗り出して手を振る刀剣男士の腰を別の男士が抱えて支える。それだけのことでまたひときわ大きな歓声が上がる。今この瞬間この場所は完全に彼らの独壇場であり、群衆は等しく観客となり、彼らの一挙一動に魅了されていた。
なるほどこれは戦場だ。
きりりと開いた目つきは戦場で敵と相対した時のそれによく似ている。見られている意識の隙のなさは、獲物を見つけてさてどう狩ろうかと高揚する肉食獣にも重なった。
方々から向けられる無遠慮な視線を釘付けにし、歓声に変える。それが彼らの戦い方なのだろう。そういう意味では彼らは間違いなく、自分たちと同じ戦う刀剣男士だった。