【ご挨拶】
まずは、本丸情景集開催誠におめでとうございます。
皆さま初めまして、こんにちは。浅名(あさな)と申します。ウェブイベントは初めてなのですが、何かそれらしいことでもできないかなと思い今回のようなことをやろうと決めました。テキストライブ、久しぶりなので地味に緊張しております。
コメントなども残せる仕様になっているので、ご質問とか「ここ誤字してるよ」とかあれば言ってください。ご質問の返しは後程行います。
時間は1~2時間ほどを予定しています。リアルタイムで追うのに疲れた方は今日の夜くらいにアーカイブを出すつもりなのでそちらをご覧ください。倍速できるから結構面白い。開始後1時間したらちょっと休憩入れます。
書き終えられなかったらごめんね。
では開始です。
──やっぱり、勘違いではない。
男がこの地へ来て『審神者』となり、ひと月ほどが過ぎた。
始まりの刀を選び、共に門をくぐって本丸と呼ぶ大きな屋敷へ着いた。そこからは目まぐるしくあまり覚えていない。しかし振り返ると刀剣男士は確実に増え、戦績表には堅実な戦果が記されていた。
──どこからだろうか。
ひとつ、審神者になるにあたって問題があったのだが、うまい具合に解決した。あの喋る狐……こんのすけとか言った狐には、融通してもらって感謝している。
「主」
廊下で立ち尽くしている男──この本丸の審神者に背後から話しかける物がいた。
「えっと……鶯丸」
「正解だ」
だいぶ覚えてきたじゃないか、と鶯丸は薄く笑う。
「朝餉ができたが主がいないと、ちょっとした騒ぎになっているぞ」
「あ、ああ……悪い。行こう」
審神者は一度廊下を振り返ると、鶯丸の後ろを付いて行った。
朝食を終え、普段使っている部屋に戻る。『審神者』という大層な役職に就いたが、実はやることはあまり多くない。仕事は刀剣男士たちがやってくれる。殿様気分なのは初めの一週間で、今は少々居心地が悪くなり始めていた。
「ため息が多いですね、主君」
桜色の髪をふわふわと揺らす秋田藤四郎。この髪色は覚えやすい。
「なにか、お困りごとですか?」
「えっと……」
口ごもる。こんな話をこの子にしてもいいのだろうか。そう思うと同時に、短刀は見た目が子供だが自分よりもはるかに長い時間存在しているんだったと思い出した。
「音がさ、聞こえるんだよ」
「……音?」
初めは家鳴りだと思った。
作りが古いし、そういうこともあると思った。家鳴りの原因は気温差にあるという。確かに最近の昼と夜は温度差も大きいし、次第に季節が変わっていけばなくなるだろうと思った。
しかし、ひと月経っても変わらなかった。
「だから、なんの音なんだろうって思って」
「そうでしたか……」
言われてみれば、そうかもしれません。と秋田は言う。
「主君が気になるようでしたら他の皆さんにも話してみますね!」
元気いっぱいにそう言うと、秋田は失礼しますと部屋を出ていった。誰もいなくなった廊下を見て、気にしすぎだったろうかと思う。刀剣男士たちは人間の自分よりも身体能力的は格段に高い。そんな彼らがこの家鳴りに気づかないとも思えなかったが……。
さて、そんなことを気にするよりも仕事が待っていた。
「……行くか」
鍛刀場へと足を向けた。
秋田へ懸念していた『家鳴り』を話して、数日が過ぎた。彼は「話してみますね!」を本当に実践し、主が気にしていた『家鳴り』は誰もが知っていることとなった。
「それはいつ頃聞こえるんだ?」
問題を解決しようと、話を聞きに来る物までいた。
「いつって……」
姿勢よく座り、まっすぐに自分を見てくる大包平。その姿は本当に自分の身を案じていて、この問題を見事解決してやろう! という気合いに満ちていた。大して猫背気味に座っている主は不安そうな顔をしている。
「今も、なんだけど……」
「なに?」
一瞬声を荒げかけた大包平だが、口を結んで耳を澄ませる。遠くに廊下を歩く音。庭を歩く音。かすかな馬の鳴き声。男士たちの話声。
目の前の審神者に息遣い。
しかし家鳴りは聞こえなかった。
「本当に今も聞こえているのか?」
「ああ」
ぎしぎし、とまるで誰かが歩いているような、そんな音。そもそも『家鳴り』自体をあまり経験していないから、違いもいまいちわからない。
「いつからだったんだ」
「……初め、から」
始まりの刀と共に門をくぐって、本丸の中に入って、初めての出陣の時。自分以外に誰もいなくなった本丸で、初めて音を聞いた。それからひと月。昼夜を問わず音は鳴り続けていた。
「誰にも言わなかったのか!?」
「気のせいとか、耳鳴りかなと、思って」
音の大きさはほとんど変わらない。しばらく聞こえることもあるし、一瞬だけ聞こえたような気ががする程度のものだったこともあるし、だから『家鳴り』だろうと納得していた。
「こんのすけには話したのか?」
「いや、何も」
「懸念事項があるなら話した方がいいだろう」
俺も原因を探してみる、と大包平は大股で部屋を後にした。
──大事になってしまったな。
大包平には聞こえないと言っていたし、自分の耳に問題があるのだろうか。
改めて考える。『音』は何なのだろう。ぎしぎしと、歩くような踏むような。しかし、移動しているようにも聞こえる。ゆっくりの時もあったし、逆に急いでるような……。
「…………」
ひとつ、思い当たるような気がした。
審神者になる前に、似たような音を聞いていたし自分もそうしていた。そうだと思って音を聞くと、もうその通りにしか聞こえてこなかった。
階段。
ふとした瞬間に聞こえてくる『音』は、階段を歩いている音だった。上下はわからない。だが、誰かが階段を歩いている。
ゾッとした。
審神者の生家は二階建てのごく普通の民家だ。だから階段の上り下りなんて日常だったし、学校や買い物に行った先でも階段はありふれたもの、だったはずだ。
しかし。
この場所は本丸だ。
二階のない本丸の、どこの階段を。
誰が歩いているのだろうか。
※一時休憩です。14:10前後に再開します。
※再開します。終了予定15時にしましたが、多分終わらないかも。
音の出所を探った方がいいだろうか。審神者はそう考え、本丸中を歩くことにした。先日の朝、鶯丸に呼び止められた時も実は音の先が気になったから廊下をうろうろしていたのだ。
「ここだったな……」
今は音がしない。本丸中を探して何もなかったら、耳鼻科でも行こう。そんなことを考えながら近くの部屋に入ったり、廊下の隅でしゃがみこんだり。しかしその日は何もわからなかった。
──それから、音が聞こえてくるたびにどこから聞こえるのか本丸内を歩いたが、ここだという確証は出ないままだった。これはいよいよ耳鼻科を予約しようかと思っていた。
その日。
「俺も一緒に行こう」
近侍になっていた大包平が、一緒に探すと言ってくれた。
「そういえばあれからこんのすけには話したのか?」
「あ……」
「今すぐやれ」
大包平にせっつかれ、状況をかいつまんで管狐に説明する。説明を受けたこんのすけは「では、調査を行います」とだけ言った。
「……あ、聞こえる」
「どこだ」
声を潜め、大包平はずんずんと廊下を進む。大包平にはやはり何も聞こえないままだが、審神者はしきりに首を左右に動かして出所を探っているようだった。審神者にしか聞こえない音。そんなものがあるのだろうか、と思いながらも大包平は廊下を進む。
設立して間もない本丸にしては少し広い。使われていない部屋も多い。今、審神者と大包平がいる場所も、普段はほとんど使用されていない場所だった。
「──待って!」
服の裾を掴まれ、大包平の足が止まる。少し息の切れた審神者が掴んでいた。
「こ、ここだ……」
同時に顔を向ける。北側に面した一室。他の部屋よりも一回りほど大きい。
「ここからするのか?」
「多分……」
以前したように耳を澄ませるが、大包平にはやはり何も聞こえない。わからない。だが、審神者の表情で嘘を言っているようにも聞こえない。
ふらふらと部屋に入っていく審神者の後を追う。話しかけることはしない。音の出所を探っているのだから、今はそうするべきではない。
「……」
ぎし、ぎし……。
審神者は、部屋の真ん中に立ったまま動かなかった。聞こえる。確かに聞こえる。難しい顔をしている大包平は、やはり聞こえていないのだろう。だが、これは幻聴ではない。家鳴りでもない。
ここが、一番大きな音がする。
階段を、下っている音がする。
本丸で、聞こえない音がする。
「……」
視線は下へと向かっていた。畳に耳を近づける。審神者の行動を見て、大包平も同じようにした。
ぎし、ぎし……。
一段一段、確かめるようにして歩いている。
「風の音がする」
大包平が畳から体を起こし、手をかざす。かすかに冷たかった。
「この下に何かあるぞ」
審神者を下がらせると、大包平は畳を持ち上げる。二畳分どかして、揃って言葉を無くす。
扉があった。
「…………」
開けるか、否か。畳を移動させたことで、音はより強くなった。
「開けるか?」
大包平が聞く。恐らく『音』の原因はここにある。それはどちらもわかっていた。しかし、この部屋に来てから鳥肌が止まらなかった。動けば汗をかくほどの気温なのに、寒気が止まらなかった。
でも、見るしかない。
「────主様」
弾かれたように振り返る。
「なんだ、大包平もいたのか」
「こんなところにいらっしゃったのですね」
鶯丸と、こんのすけがいた。
結局。
本丸の地下へ続くだろう扉は入ることもなく、開けることもなく終わった。
連絡を受けてやってきたこんのすけに今まであったことと、大包平と音の出所を探していて先ほどの部屋にたどり着いたことを話していると時間も夜になった。
「では、あの部屋を中心に調査いたします」
こんのすけに入室を制限されてしまったし、ここ最近音のことばかり気にしていて審神者としての業務を怠っていた。「そちらに専念なさってください」と釘をさされた。
「はあ……」
確かに、最近は気にしすぎだったかもしれない。
今は音が聞こえない。
もうこんのすけに頼んでしまったし、原因がわかれば対処もしてもらえるだろう。
今日は、久々にゆっくり眠れそうだ。
※終わりませんでした!!!!
ということで延長します。また10分ほど休憩です。
15:10頃再開します。おやつとかお茶とかご用意ください。
※再開です。多分終わらなくても16時で終了しますね。
今日中には書き終えて出したい!
夜ではないような、でも暗闇だった。
ぎし、ぎし。
ぎっ、ぎっ。
聞いたことがない数の足音がした。複数、いた。いつも聞いている下っている音ではない。
階段を、上っている音だ。
風景が変わった。
廊下を移動している。いくつもの頭が見える。自分もこの一団にいる。
──ここは。
知っている廊下だ。本丸の──この本丸の廊下だ。今日の昼間、大包平と一緒に移動していた廊下だ。ああ、ここは執務室。しかしその横を通り抜け、一団はさらに奥へ進む。
音が大きくなる。
向かってきている。
自分が、自分に向かってくる。今動いているのは本当に自分なのか?
廊下の角を曲がって、目的地に気がついた。
審神者──自分の部屋だ。
一言も発さない一団に恐怖を抱くが、足は止まらない。自分も止まらない。音が大きくなる。いやだ、来るな。
自分が寝ている部屋の、障子が開かれる。
当たり前に自分が寝ている。どうしてここに。
じゃあ自分はなんだ。
一団のひとりが、何かを持っている。暗闇でもわかった。
刃物だ。
それが、
寝ている、自分の首に。
「あああああああああ!」
飛び起きた。
夜中。首、ある。誰もいない。汗で張り付いた髪が鬱陶しい。心臓が出てくるんじゃないかというほど鳴っている。
審神者はガタガタと震える手でずっと自身の首を抑えている。
「主君!」
隣の障子が勢いよく開き、悲鳴を上げながら後ずさる。
寝巻のまま刀を構えた秋田がいた。隣の部屋には護衛として短刀が控えていることに、一瞬遅れて気がづいた。
「あき……」
声がかすれる。
「大丈夫ですか、主君?」
一瞬で脅威はいないと判断した秋田は刀を収めて審神者に近づく。
夢。
わずかな光源に照らされる秋田を見て、ようやく状況が理解できた。やけに生々しくて、臨場感のあった夢だった。まだ、震えが止まらない。
それから、朝日が出るまで……空が明るくなってからも一睡もできなかった。眠ればまた同じものを見るような気がした。あの先まで見えてしまう気がした。秋田はそんな審神者を心配して同じ部屋にいた。
そういえば。
「秋田」
「はい」
「この前、音の話。しただろ」
「……聞こえる、と言っていたお話ですね」
──言われてみれば、そうかもしれません。
以前秋田はそう言っていた。
「聞こえたことって、あるのか?」
そう聞かれた秋田はバツが悪い顔をして、下を向いてしまった。
「えっと……」
その反応で、察しがついた。
音。ずっと聞こえ続けている、階段を下る音。あれはこの本丸では自分しか聞こえていない。
「ご、ごめんなさい! あの時の主君、不安そうだったので……」
必死に弁明している秋田を見ていて、ようやく落ち着いてきた。
「怒ってるわけじゃないよ」
そう言って立ち上がる。そろそろ普通に起きる時間になった。秋田も一睡もせずに一緒にいてくれた。本丸内で変なものを見つけて、最近の不安もあったし、この場所に来てまだ一ヶ月半も経っていない。変な想像をして、それが変な夢になったんだろう。
そんなことを考えられるくらいには、回復していた。
「一緒に朝ごはん食べて、二度寝しよう」
落ち着いてきたら少し眠気が出てきた。笑う審神者に、秋田もにっこりと笑い返す。
「はい!」
洗面台へ向かう。先客がいた。最近よく遭遇する鶯丸だ。
「おはよう」
「ああ、主か」
おはよう、と声をかけようとして鶯丸は固まる。見慣れないものを見つけたからだ。
「目にくまができてるぞ、主」
「ああ……はは」
鶯丸が気づくぐらいだから、相当酷い顔をしているんだろう。
「大包平が見たら騒ぎ出すだろうな」
「それは……うるさいな」
「その時は俺も呼んでくれ」
意気揚々と鶯丸はその場を去る。
やっと心臓の音もいつもと変わらないくらいになった。
顔を洗おう。
洗面台の前で鏡に立ち、目の下のくまを見る。確かに酷い。
「……」
寝巻にしている服の首元が寄れている。飛び起きた時に散々触っていたから伸びてしまった。
その自分の首。
横に一本、
線が引かれていた。
……はい、こんなところですかね。
16時までに書き終えられてよかった、本当に。
書きながら皆さんのハートは見えていました。本当にありがとうございます。
これで6000字ほどになりました。Xって言っていましたが、ちょっと長めなのでpixivの方に上げようかな。遅くとも明日には上げます。
終わる前に一つだけ質問をいただいているのでそちらには答えようと思います。
『文字書きにはプロットを立てる方から即興で書く方もいますが、私はどんなタイプですか?』
ありがとうございます。……私は話によりけり、って感じでしょうか。今回のこのテキストライブで書いた話はプロットを作りました。大してXの固定で置いてある『味見のつもり』ってタイトルの話は登場人物と題材だけ決めてそのまま書き始めました。
何もなく書き始めても詰まればそこから先のプロットを作ったりもします。
ご質問ありがとうございました。16時超えたのでこの辺りで今回の配信は終了させていただきます。
感想などはマシュマロとかもあるので良ければください。アーカイブなど出した時はXにて宣伝いたします。
それでは、改めまして配信を見ていただきありがとうございました!