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ankb、kgmmcの二つに分けて書いたお話
<ankb>モブ女、刃物で刺す表現あり
<kgmmc>天使がいる、自殺を仄めかす表現あり
<ankb>
「この世は理不尽な奇跡で溢れている」だなんて、そんなことを思いたくはなかったのだが……思わざる現状に今、直面している。
収録の帰り道。このあと予定がある社長やもちさんと別れ、甲斐田と宅飲みの買い出しに出ていた。ほんとは宅飲みなんかするつもりなかったから冷蔵庫はエナドリが占めてるんよなぁ。そう言うじとっとした目を寄越してきた。なんや自分のことは棚に上げておいて。
時間も時間やし酒なんか入れたら泊まりになるやろ。そう思い互いの飲む酒やそのつまみと共に朝っぱらから腹に入れても大丈夫そうな物もカゴに入れる。隣から「それをつまみにするのはちょっとぉ……」なんて聞こえるが無視無視。そもそもつまみやないねん。
会計を済ませ先に外に出ていた甲斐田と合流する。……はずだったのだが、女と揉めている姿を見て頭にハテナを浮かべる。女といる場面をあんま見ぃひんし、そもそも人と揉めてるなんてある種の一大事。アニキが助けてやるかぁ、なんて思っていたのだが。
「あっ、湊っ」
「え?……あぁ、姫か、どうしたん?」
「どうした、じゃないよ湊、帰ってくるの遅いってば!」
「……は?」
話を聞いている限り、コイツは今夜俺とデートする予定やったらしい。もちろんそんな話は聞いとらんし、そもそも店以外で会うのは禁止されとる。なんならここ俺の家の近くやから、多分後つけて家特定したんやろな。
そんなことは知らん、時間も時間やし気ぃ付けて帰り。そう伝えると血相を変えて突進してきた。
「なんでっ、?湊、私のこと好きって…!」
「でもこんな時間まで外いたら危ないやろ、ほら、家に帰りや」
「湊は…湊はこんなこと言わない、帰れなんて言ったこと、一度も…!」
勝手にヒートアップする女を他所に、なぜか突っ立ったまま動かない甲斐田に話しかける。口論の原因を聞くと、お前は誰だ、不破さんはどこだ、なんて急に捲し立てられたらしい。災難な奴め。
「…その男に唆されたのね……?」
「なんやしつこいな。」
「私が一番じゃないなんて許せない…」
「……まって、不破さん危ないかも」
そんな声が聞こえるよりも早く、胸部に鈍い痛みが走る。振り向きざまに見えた女の顔には影がかかり表情はよく見えなかったのだが、背中側に感じる鈍痛と甲斐田の悲鳴にも似た声から分かる。何かしら、恨みを買ったのかもしれない、と。
しかし女が振りかざした刃は、俺が振り向きざまだったせいで心臓に刺さることはなかった。そして女が怯んだのか刺さりが甘いため死ぬことは無いはず。だが、痛いものは痛いわけで。刃が抜けた穴に冷たい空気が触れる感触と何かが流れる感触に身を震わせた。なのに意識を落とすことも出来ず甲斐田の肩に掴まることで耐えようとする。俺に呼びかける甲斐田の声と、だんだん遠ざかる足音をバックに、意識を手放した。
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<kgmmc>
僕は、“死”を体験してみたかった。歳をとることのない僕が、事故に遭う確率の低いこの国で“死”というものを体験することはほぼほぼできないだろう。やりたくはないが、法律さえ取っ払って仕舞えば酒を飲むこともタバコを吸うこともできてしまう。僕が僕の人生を謳歌しているため“死”なんてもので終わらせたくはないのだが、ここ数日どうしてか気になってしまって落ち着かないのだ。だから、ただ“体験”してみたかった。……だけなのだが。
放課後の屋上。フェンスの外側に腰掛け沈みゆく太陽を見つめる。このまま全てが終わってしまうのは惜しいが、何せ僕は運動部故の体の強さがある。当たり所によっては消えぬこの灯火。
何も考えることなく屋上の床を蹴る。そのまま等加速度運動を始め数秒で地面にたどり着くはず。……だったのだが。ふわりとした感覚と共に地面に着地した。緩やかに速度を落とした体躯は何事もなかったかのように足から地面に着き、怪我も、重力による足への負荷もなく止まる。ふと足元に影がかかり見上げると、見慣れた同僚の顔が。ただ、いつもと違うのは天使のような輪を頭上に浮かべ、白い服に身を包み、ミルクベージュの長髪を一つにまとめていること。そして……宙に浮いている。
「剣持さん。まだ貴方には早いですよ。」
……この世は理不尽な奇跡で溢れている。