冬コミ戦利品はすべて読んだり聞いたりしたのでどんどん感想を書いて1月中には終わらせたいですね。
・徒歩で5分の別世界2 原爆はなぜ日本に落とされたか(まるちぷるCAFE)
良質なSF短編が特徴的なサークルさん、バンバン新刊を出されていますが今回手に入れたのはこの2冊。
まず「徒歩で5分の別世界2」、タイトル通りどこかおかしな別世界のお話が4編収録されています。
「成長」、子猫を飼うことにした女の子。子猫は月日の流れととともに大きくなっていき……。サイレントマンガなのがより「あれ?」感を引き立てていて好き。でかい猫を吸いたい。そして幸せになりたい。
「鮪横丁」、仕事帰りのサラリーマン、大トロ定食を頼みます。その大トロはどこから来たかと言うと……。オチのコマでデカ鮪を大きく映すんじゃなくてコマの端っこに移してるのが巧い。
「手作りの券」、彼氏に手作りの券をプレゼントした女の子。その券は二人の人生の節目に使われましたが、「何でもする券」だけは使われず……。この手の話は不幸な結末になりがちですが(そしてある側面では不幸な結末ではある)、そこをさらっと流してユーモアのあるオチにしてるのが後味すっきりで好き。
「地球滅亡ボタン」、みんな大好き地球滅亡。SFなら地球を滅亡させてなんぼ。その地球滅亡というカタストロフが女の子の失恋という個人的感情から引き起こされるというのが好き。そして再び地球が生まれても女の子は同じように失恋を繰り返すという……。うーん輪廻転生。
次、「原爆はなぜ日本に落とされたか」。あまりにも直球なタイトルでぎょっとしてしまいました。ともすれば語ることすらためらわれる、語ったら語ったで荒れることが確実なテーマではありますが、本作ではまず最初に原爆が落とされた理由を「ただの理由」と「正当な理由」にバッサリわけることで、多くのこのテーマに関する議論がそうなりがちなような感情的な方向に話が流れるのを防いでいます。
そこから、原爆が落とされた理由を深掘りしていくわけですが、これも安易な誰ソレが悪い、間違っているといった方向に流れてしまいません。さりとて、「この問題に答えはありません」といった方向にも逃げていない。
個人的にはこの「原爆が落とされた理由」については「そうしなければ戦争が長期化してさらに多くの人命が失われていたから」で納得してたんですが、本作ではさらにそこから先に踏み込んで、「そもそも原爆を落とさなくては戦争を集結させられない状況に追い込まれたのはなぜか」まで、さらには「原爆が落とされなかったらどうなっていたか」まで考察しているのがすごい。内容そのものももちろんのこと、このテーマをここまで完結に作品に落とし込んでるのがすごいと思いますし、何よりここまで踏み込んで描いてるのがすごいと思います。このテーマは作品内容に関係なく、手を着けた時点で荒れることが確実だと思いますし……。
このテーマに対して安直に「原爆は落とすべきじゃなかった!」「戦争反対!」と声を上げることは簡単ですが、本作では最終的に「ここで私らがこの話を繰り広げているいま現在は、日本に原爆が落とされた先にのみあった未来だろうね」という結論に達しているのに、改めてこのテーマに対しては安直な感情論ではメスを入れられないんだなあと感じました。
今日はここまで。