幼馴染は男子校でセーラー服を着ていた。
 桜が舞い散る春。僕は高校生になった。
 決め手は制服がないことだ。
 中学の時は学ランだった。これが苦しいったらありゃしない。
 高校は制服のないところと決めていた。そして自分の学力と相談して家の近くにある男子校に入学することになった。
 そう。僕が通うのは男子校のはずだ。
 だが目の前にセーラー服の少女がいる。後ろ姿がすごく可愛い。とても癒される。
 だが、その少女は俺と同じ学校の校門をくぐったのだ。
 繰り返しになるが、俺の通う学校は男子校だ。だが少女がいる。
 学校名を確認したがあっている。
 ならばあの少女が男子ということになる。ありえない。あんな可愛い男子が存在するのか?
 僕が困惑している間にその少女はどこかに行っていた。
 もしかしたら春の浮かれた陽気が見せた幻覚かもしれない。いや、きっとそうだ。忘れよう。
 僕は表を確認し、自分の教室へと向かった。
「え?」
 教室にセーラー服の少女がいた。
 大人しく座って、退屈そうに時計を見つめている。
 まとうオーラがちょっと怖い。触れたら感電しそうだ。
 ひとまず気づかれぬようそっと教室に入った。
 自分の席について、筆記具を取り出した。飾り気のない黒のナイロンの筆箱からシャーペンと消しゴムを出す。どちらもありふれた目立たないものだ。
 僕は高校でひっそりと生きていたい。授業中はおとなしく授業を受け、休み時間は数人の知り合いと話して時間を潰す。そんなささやかな幸せを求めているのだ。
 今のところ、僕は教室の中のモブになれている。
 セーラー服の少女がクラス中の注目を集めているからだ。
 少女の方をチラチラと見ながら話すもの。
 話しかけてみようと様子を伺うもの。
 我関せずと読書をするもの。
 クラスメイトたちの反応は様々だ。
 ブレザーを着た男が少女に話しかけた。取り巻きたちが椅子に座ってニヤニヤしながら見守っている。
「おはよう。俺、|東山ひがしやま。今日からよろしくな」
 話ぶりが陽キャだ。誰にでも優しくてクラス全体で盛り上げる感じの人間だ。たまにうっとうしいこともあるが、みんないい人で嫌いじゃない。
「おはようございます。桜田と申します。よろしくお願いします」*
 幼馴染は男子校でセーラー服を着ていた。
 桜が舞い散る春。僕は高校生になった。
 決め手は制服がないことだ。
 中学の時は学ランだった。これが苦しいったらありゃしない。
 高校は制服のないところと決めていた。そして自分の学力と相談して家の近くにある男子校に入学することになった。
 そう。僕が通うのは男子校のはずだ。
 だが目の前にセーラー服の少女がいる。後ろ姿がすごく可愛い。とても癒される。
 だが、その少女は俺と同じ学校の校門をくぐったのだ。
 繰り返しになるが、俺の通う学校は男子校だ。だが少女がいる。
 学校名を確認したがあっている。
 ならばあの少女が男子ということになる。ありえない。あんな可愛い男子が存在するのか?
 僕が困惑している間にその少女はどこかに行っていた。
 もしかしたら春の浮かれた陽気が見せた幻覚かもしれない。いや、きっとそうだ。忘れよう。
 僕は表を確認し、自分の教室へと向かった。
「え?」
 教室にセーラー服の少女がいた。
 大人しく座って、退屈そうに時計を見つめている。
 まとうオーラがちょっと怖い。触れたら感電しそうだ。
 ひとまず気づかれぬようそっと教室に入った。
 自分の席について、筆記具を取り出した。飾り気のない黒のナイロンの筆箱からシャーペンと消しゴムを出す。どちらもありふれた目立たないものだ。
 僕は高校でひっそりと生きていたい。授業中はおとなしく授業を受け、休み時間は数人の知り合いと話して時間を潰す。そんなささやかな幸せを求めているのだ。
 今のところ、僕は教室の中のモブになれている。
 セーラー服の少女がクラス中の注目を集めているからだ。
 少女の方をチラチラと見ながら話すもの。
 話しかけてみようと様子を伺うもの。
 我関せずと読書をするもの。
 クラスメイトたちの反応は様々だ。
 ブレザーを着た男が少女に話しかけた。取り巻きたちが椅子に座ってニヤニヤしながら見守っている。
「おはよう。俺、|東山ひがしやま。今日からよろしくな」
 話ぶりが陽キャだ。誰にでも優しくてクラス全体で盛り上げる感じの人間だ。たまにうっとうしいこともあるが、みんないい人で嫌いじゃない。
「おはよー! 私は|桜田さくらだだよ。よろしくねー」
 人懐っこい笑みを浮かべている。
 声は男子にしては高めで,女子と言われても違和感がない。中性的な声色も桜田の性別をわからなくさせている。
 にしても桜田か。俺の幼馴染と苗字が同じである。
 桜田は家が近くてよくお互いの家に遊びに行っていた。小学校までは一緒だったが中学が別で,それ以来あまり話していない。
 でもあいつは休み時間にはドッヂボールをし校庭へ駆け出すような奴だった。ボールを捕まえては相手チームを倒していた。
 そして年がら年中半袖短パンだった。雪が降ろうとも嵐が来ようとも半袖短パンだった。風邪を引くこともなかった。ずっとその格好で校庭を駆けまわっていた。
 セーラー服を着てるところが想像つかない。
 あれはきっと違う桜田だろう。そうに違いない。というかそうであってくれ。
「あれ,|黒川くろかわじゃん。久しぶり」
 目があって,話しかけられた。
 どうやら知り合いの桜田だったようだ。
「ひ,久しぶり」
「この格好みてよ。可愛いでしょ」
 僕の前まできて,くるりと一回転して見せられた。
 放置された東山君がポカンとしてるよ。可哀想だからあっちに行ってあげて。
「……うん。可愛いと思うよ」
「なんだその間は!」
「だってここ男子校だよ」
「ふむふむ。中学変な女子に目をつけられて男子校に逃げてきたんだね。安心して。私は男だ!」
「どこに安心できる要素があるんだよ」
 隣の名前も知らないクラスメイトに目線で助けを求めた。目を逸らされた。
「私が男であることだよ。黒川君。君への入学祝いにラブコメのような三年間をプレゼントするよ。楽しもうね」
「何を言っているんだい?」
「言葉通りラブコメみたいに可愛い子から言いよられる生活だよ!」
「可愛い子とは」
「私のこと」
 もうだめだ。きっと中学でつらいことがたくさんあったのだろう。それで人格が変わりこうなったのだろう。もう僕にはどうにもできない。
「頑張れよ。僕は知らないから」
「そんな! 私は,」
 桜田は何か言いかけたが,チャイムが鳴り担任が来たので席に戻ってくれた。
 朝から疲れた。周りからの視線が痛い。もう嫌だ。帰りたい。
 入学式が終わった帰り道。
 誰か友人を作って一緒に帰りたい。平穏な高校生活へと軌道修正したい。
 でもまた邪魔が入った。
「黒川君! 一緒に帰ろ」
 駆け寄ってきて腕を掴まれた。正直言って可愛い。
 周りを取り囲んで質問攻めにしていた陽キャたちが睨んでくる。ちょっと怖い。
「なんでだよ」
「いいじゃん。一緒に帰るだけだよ」
 それだけで僕の予定が崩れるんだ。
「あの人たちうっとうしいからさ。逃げるの手伝ってよ」
 そう耳打ちされた。
 その格好できたらこうなるのはわかっていただろうに。でも置いていくのも哀れなので一緒に帰ることにした。仕方がないやつだ。
「わかったよ」
「やったー!」
 小さく飛び跳ねて喜んでいる。赤いリボンが平らな胸元でゆれている。
 なんで男なのに一々言動が可愛いんだ。
 悩みながら校門まで一緒に行った。
「ほら。ここまでくれば十分だろ」
「えー。家近いんだからもっと一緒にいようよ」
「嫌だ。目立つ」
「ここで揉めてる方が目立つよ。あ、私は折れるつもりはないからね」
 こういうときの桜田は頑固だ。なんとしてでも要望を通してくる。
「わかったよ」
「いぇーい! ありがとうね。黒川君」
 家までの20分。校長の話が長いやら担任が優しそうやらどうでもいい話をしながら帰った。
 翌日。登校中にセーラー服を見ることはなかった。かわりに学ランの生徒がいた。制服のないうちの学校では珍しい。
「ってまた桜田か」
「目立たない格好にしたよ。これなら一緒に帰ってくれるよね」
 確かに学ランになっている。で今日は胸がある。何か入れてるのだろう。
 苦しくなったりしないだろうか。
「……わかったよ。好きにしろよ。好きな格好でいいよ」
 好きなものを押さえているのを見るとちょっとイライラするのだ。自分が目立ってでも桜田の好きを止めない方がいい。
「本当! じゃあ明日は何着てこようかなー」
「ほどほどにな」
「はーい!」
 今日も言動が可愛い。はーいって言いながら右手を上げ、ピシッとした。あざといとはこういうことなのだろうか。
 桜田はふわふわしているように見えるが中身はしっかり者だ。昔から変わっていない。
 授業中はしっかりノートを取っていて寝ることはない。よく発言していて先生にも好かれそうだ。きっと陽キャの中でも中心人物になれるだろう。
 なのになぜか僕なんかに話しかけてくる。
「ここの先生の説明面白かったね」
 先ほども可愛さとわかりやすさが両立された素晴らしいノートと共に話しかけられた。
 僕は適当に相槌を打ちながら聞く。
 話しながら揺れる胸が気になるのだ。
「何みてるの? エッチ」
「どうせ偽物だろ」
 偽物の胸にロマンはない。夢も希望もつまっていない。
「そうだけど。でも気になるんでしょ?」
「入手経路が気になるな」
「お姉ちゃんからもらったよ。あの人も平ペタだからね」
「それいじると怒られるだろ」
「うん。結構気にしてるみたい。フラれるたびに『あんな脂肪の塊なんて無駄だ』って泣いてるよ」
 桜田の家に遊びに行ったとき、お姉さんを二人で胸の話でいじってゲンコツくらったことがあった。懐かしい話だ。くらったゲンコツは痛かったな。
 あれからずいぶん経ったがまだ悩んでいたのか。もうお気の毒にとしか言えない。
 こんな二人しか知らない懐かしい話を続けていると周りの人間から桜田について聞かれるようになった。
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幼馴染が男の娘になってたBL(タイトル未定)
初公開日: 2023年12月26日
最終更新日: 2023年12月27日
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寝落ちするまでBL小説を書きます
よければ覗いてみてください