暫く兄さまと妹と、それから騒ぎを聞きつけた父様と一緒にお話に興じていると、ご学友候補から外された子供達のご挨拶の番になった。
基本的に挨拶は格式の高い順。
田舎貴族の中でそこそこ高い格式の僕の家は三番目位に呼ばれる予定だ。
身だしなみの最終チェックを父様と兄さまに行ってもらい、列に並ぶことにする。
ご学友候補から外された子供達に対する挨拶の時間は短い。
来年以降は親だけ挨拶すれば良いので、お義理程度の妹の顔通しも本日するつもりだ。
ご学友候補やご学友だった頃は、それこそ毎月一回はお目通ししてたんだけどね。
「次、アルシェント家。」
「はい、アルシェントけのじなん、ルイ・アルシェントでございます。」
それでも王子様が初等部に入学される予定の今年は、同年代の子供が主役だ。
上の学年の子や、大人は添え物。
お呼ばれしたので、僕はしっかりとご挨拶する。
「レオナルドおうじ、おたんじょうびおめでとうございます。いもうとのカノンノと共に、アルシェントけいちどう、おうじさまのごけんこうとさらなるごかつやくをおいのりもうしあげます。」
勿論、お祝いの言葉も忘れずに。
長いし嚙みそうになるから、家でいっぱい練習したよ………。
練習台になってくれた母様は噛む度ににこにこするし………。
「あ、ああ。礼を言う。それで、その………」
頭を下げたままだから、どういう表情なのか分からないけど、何故かレオナルド王子はひどく言い淀んでいる。
いつだって自分が正しいと胸を張る、王子様らしくない。
どうしたんだろうと思うけど、頭を上げて良いとは言われてないからどうしたらいいのか分からない。
「あ、面を上げよ。」
すげぇついでみたいに言ってるね。
マジでらしくなくて、思わず近くに控えてる従者の人を見れば、その人も困ってた。
プロフェッショナルなのに顔に出しちゃうくらいって、どんだけなの。
「その、先程ドミニクから持病があると聞いた。届を見たが、心臓が原因だと。大事ないか?」
しかし王子様もひどく困ったような表情で、僕にそう聞いてきた。
それも恐る恐るといった聞き方で。
こんな王子様、見たことなくて困惑する。
だって、あの時は無表情で淡々と僕の家族を処刑したじゃないか!
「えっと、まだほっさはでてないのですが、どうなるかはわからないので、ようすみです。」
「そうか。」
しーん。
王子様の方から会話をぶった切るような相槌を打たれるから、何も言えず無常に時間が過ぎそうになる。
時間もったいないな。
早く下がっていいよって合図だして欲しい。
「治る見込みは、ないのか………?」
そう思っていたら、泣きそうな顔でそう聞かれた。
なんだ、それ。
全く関わらなければ、そうやって慮ることが出来るのか。
じゃあどうして、僕をあんなに嫌ったの?
僕が何をしてしまったのか、未だに何も分からない。
「ようすみ、としか。もうしわけございません、いまも、たいちょうがすぐれないので………」
早く終わらせたくて告げた言葉に、父様と兄さまと、そして王子様が反応した。
多分、自分でも思うけど、顔色悪くなってると思う。
今の王子様は何も悪くない。
それは分かっているけれど、やっぱりどうしても、思い出してしまうから。
「体調が悪い中、無理をさせた。」
王子様のその言葉を合図に、僕の番は終わる。
静かに列を離れ、王子様の視界からも離れると父様が抱っこしてくれた。
「疲れたね。よくできたよ、ルイ。頑張った、偉かったね。」
父様がそう言って、僕の背中を撫でてくれる。
疲れてるのは妹も同じだから、僕が頑張らなきゃいけないのに。
でも父様の大きく温かな掌に、僕はじわじわと瞼を閉じてしまった。