牛天ワンライ11月4日
お題   陽だまり   片道切符  調味料
「これ、意外と重いんだけどー!」 
「天童は鍛え方が足りないな、こっちも重いぞ」
牛島が左手に持ってたビニール袋を揺らすとガサガサと鳴る。
天童は自分が提げた袋の中身を見て、まだマシかあと呟いた。
二人は寮でお好み焼きパーティをする、その買い出し係に任命されたのだった。
ただ、その時にみんなが気づいたのは圧倒的な調味料不足で、集まった人数は相当数。
買い出しに行かねば作れない、と言っていた所を天童が通りかかり、ロード帰りの牛島を捕まえてあれよあれよと言いくるめ、今に至る。
「まあ、若利くんと一緒に居られるのもあとチョイだからさぁ、嬉しいんダケドね」
ニヒヒと天童が笑うと反比例して牛島の端正な顔の美しい両眉に皺が寄る。
彼らは春高バレーの選手権大会で、ダークホース烏野に僅差で負けてしまっていた。
天童はその際に言ったのだ、高校でバレーは辞めると、だから情熱大陸からオファーきたら友達枠で出るからね、と。
その時は「ああ」しか言わなかった牛島だったが、あれから天童がその話題に触れる度に眉間に皺を寄せて悩むような素振りを見せるようになった。
だが、天童は敢えてそれに触れないでいた。
触れてしまえば、なにかが変わる気がして。
天童はぶらぶらと袋をぶら下げながら、小さな段差の上を歩く。
「なんだかさ、この道オレらみたいだね、先が重なることがない、さ。なんだろ、互いに片道切符持ってる感じ〜てな」
ねえジョバンニと、天童は銀河鉄道の夜のオマージュのように語り出す。
その度にガサガサと鳴る袋だけが、どこか現実味帯びていた。
「ジョバンニではない。」
「わかってるって、あのさ、オレが若利くんの前から姿を消しても、追わないでネ」
不穏な例えに牛島の歩みが止まる。
天童は止まらないままにバランスを取って段差の上を歩いていく。
牛島には理解が出来なかった。
天童が、ここにいる天童が自分から消える、その可能性があることに、気づきたくもなかった。
天童の言葉は続く。
「若利くんには前を向いてバレーに邁進して行って欲しいワケよ。
ゆくゆくは龍神ジャパンとか名前がついて、世界に立ち向かうんだから、歩みを止めるオレを振り向かないで欲しいンダ」
歩みが止まらない天童と、歩みが止まった牛島の間は開いていた。
まるで、天童の心の距離のようで、引かれたラインのようで、牛島にはそれをどうすることもできない。
ふと、天童の足が止まった。
夕闇が近づく中、彼は頭上を見上げている。
その顔がどうしても見たくて、牛島は走り出した。
ビニール袋が煩わしげにガサゴソとさざめく。
その音でさえ、うるさかった。
牛島の鼓動は跳ね上がり、たった短い距離なのに息を切らせて走る。
天童はゆっくりと歩んでいく。
重ならない距離、でも走っていればいつか追いつく。
そう、今の彼らのように。
ぱしっと掴まれる、その勢いのままに後ろから天童は抱きしめられた。
「うわっとおおお! ? 」
バランスを崩した天童が慌てて踏ん張り、何とか倒れずに済んだ。
「もう、何してんのさ! ? って、なんて顔してんノ……」 
天童が首だけ背後に仰け反らせて、牛島の顔を見た。
それは、まるで迷子のわんこのようで。
天童はぶっふぅぅぅぅと吹き出す。
そして、抱きしめられた腕の中、よしよしと牛島の頭を器用に撫でながら。
音もなく、陽だまりのように、この上なく幸せそうに笑ったのだった。
牛島の心臓が高鳴る。
それを知らずして、天童はゆっくり彼から体を離し、片手を差し伸べて「早く帰らないと、みんなに怒られちゃう」と、先程とは違う、普段の笑い方で牛島を寮へと導いていくのだった---。
【⠀道が違えど、二人ならきっと】
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