帰宅して目に飛び込んできた情景が、あまりにも普通で。
なんでもない当り前のことが、当たり前だったことがそこにあるのに、言葉が出なかった。
「デンジ?どうした?」
首を傾げて、訝しげに俺を見つめてくる、その視線だとか。
呆然とする俺をからかうように手を振る仕草だとか。
あまりにも、あまりにも今までと変わらない。
変わらない、当たり前の、違和感。
「おい、デンジ?どうした?具合でも悪いのか?」
額に当てられた手の感触に、思わず払いのけてしまった。
だらりと下がった腕に視線を落として、今を考えた。
これは現実か?
それとも、都合のいい夢なのか?
「おい、何か言えよ。大丈夫なのか?」
「・・・なん、で」
「ん?」
「なんで、アキが、ここにいるんだよ」
何言ってんだと、不思議そうな顔。
それもすぐに不機嫌な表情に変わり、ついと顎が上がった。
あぁ。間違いねぇ。間違いなく、俺が知ってる早川アキなのに。
「俺が俺の家に居て何が悪いんだ。それとも都合が悪いことでもあるのか?」
そうだ。ここはアキん家なんだから、アキがいるのは当たり前なんだ。
でも、それは今ありえないことだ。
「つうか、デンジお前どこに行ってたんだ。パワーもいないし」
「・・・病院」
「は?なんでだよ?怪我でもしたのか?それともやっぱりどこか悪いのか?」
心配して詰め寄ってくるアキに、大丈夫だって言って安心させてやんなきゃなんねぇのに、俺は笑うことすらできなかった。
さっきまでアキは変わらず、昏々と眠り続けていた。
装置に繋がれ、白い部屋、白いベッドで。
なのに、どうして。
「・・・なんで、アキがここにいるんだよ」
アキは、間違いなく眠ったままだったのに。
間違いなく。
1年前からアキは眠ったままのはずなのに。
ここまで!