久々に2人で過ごす夜、何と甘美なものであろうか。なんて、心の中で格好つけて、またデイビットに身を寄せた。
 私もデイビットも、何も言わない。ただただこの緩やかな逢瀬に身を任せるだけ。時折はたと視線が合って、どちらかが目を逸らすまでそのままでいて、逸らさなかった方が、してやったりと笑う。互いの手に触れ合って、時折膝も触れ合って、その温もりに少しだけ安堵する。何の意味も持たない時間だ。デイビットもそれを分かっていて、でも、その為に自分に我慢を強いるつもりは無いと言ってくれたから、『できる限りこの時間を一日の中に収めないこと』を条件に、二週間に数度、この『何でもない時間』を作っている。
 この時間を取るのは大抵夜。本日のタスクを全て終わらせた後ともなれば、デイビットとて一息つきたくもなる…はず、多分、きっと。となれば、本日の容量が残り少ない、或いはほぼゼロである可能性も必然的に高まる。私は、あろうことかそれを逆手に取り、普段素面では絶対に伝えられない言葉を、一言、また一言と、虚空に彷徨わせている。
 好きだよ、のたった四文字から始まったそれは、日を追うごとに少しずつ熱を帯びていった。お日様を透かして輝く無造作な髪が好き。人よりほんの少しだけ肉厚で、僅かにかさついていて、それでも世界の何より優しく触れてくれる唇が好き。力強く抱き寄せてくれる大きな手が好き。あの日、好きだと何一つ飾らずに伝えてくれた真っ直ぐさが好き。
 ──大好き。愛してるんだ。そう、夜が来るごとに伝え続け、朝が来て、デイビットに昨夜は何を話したのかと尋ねられ、微かな寂しさを覚えながら朝食に舌鼓を打つ。
 今夜はそれがいつになく寂しく感じられて、何も言えず黙り込んでしまった。
「立香」
 ふと浮かない顔を上げると、デイビットがこちらを覗き込んでいる。
「ん…どうかしたの、デイビット?」
「いや。ただ、君の言葉を待っていた」
 いつにも増して真剣な声色に、ぐっと喉の奥が閉まるように思え…待って、いまデイビット、なんて言った?
「待ってた…って」
「あぁ。今も待っている」
 さも当然と言うように、デイビットは続ける。今までの事は全て覚えている、とでも言いたげな顔は、いつものデイビットより幾分か幼く感じられた。
「…今日は言ってくれないのか?」
 じっとこちらを見つめる双眸に観念するまで、あと5秒。
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久々にデイぐだ♀を書く。
初公開日: 2023年07月08日
最終更新日: 2023年07月08日
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ワンドロワンライより『期待』お借りします。