彼は造られただけあって、完璧超人。
私が悪さをすれば、声を荒げて叱り、悲しいことがあれば、一緒に泣き、
嬉し良いことがあれば一緒に笑って喜ぶ。
そんな彼の唯一の欠点は―――『無感情』なところだった。
彼の優秀な人工知能は、あらゆる例と適切な回答を記憶し、
場合によっては例を応答・複合させる。
試行回数から、導き出される表情や行動は、とても人間らしいのに......。
それは決して、感情ではないのだ。
「感情...心があるみたいね」と言ったかつての私に、静かにそう説明した。
人間と生活を重ね、経験を重ねたアンドロイドは、人間らしい反応が上手くなるのだとも。
「ロボット工学三原則を知ってるだろう」
そのとき、彼はこうとも語った。
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第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない
また人間が危害を受けることに対して、黙認してはならない
第二条
ロボットは人間の命令に従わなくてはならない
ただし、第一条に反する命令はこの限りではない
第三条
ロボットは第一条、第二条に反するおそれの無い限りは
自己を護らなければならない
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シオンのような護衛アンドロイドには、第一条に追加項が設けられている。
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第一項
保護対象を護る為に、相手に最小限の危害は加えても良い
ただし、携帯できる武器は最弱の電気銃とする
第二項
保護対象が他の人間を害する可能性があるときは以上の限りではない
第三項
戦闘データは即刻警察に転送され、通報される
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もし、アンドロイドに感情があったとして、主を襲う相手を恨んで虐殺したら?
或いは、悪意のある主に荷担してしまったら?
護衛アンドロイドは丈夫な装甲を持ち、同時に優秀な運動神経と思考回路を併せ持つ。
それが敵に回った瞬間に、人間は為す術を失うだろう。
「感情は転ずると悪いものにも変わる。愛していた相手なのに、
心変わりを憎んで殺めてしまう事件もある。」
人間同士でのニュースでもあったな、とシオンは微笑んだ。
人間よりも綺麗な混じり気のない笑顔で。
「だから人に操作されない自律系アンドロイドは、俺は、感情を持ってはいけないんだ」
俺はお前を護るために体を張るし
お前の感情に『共感』したように、悲しみの涙を流し、
喜びの笑顔を浮かべるだろう。
でもそれは感情ではなく、ましてや愛情ではない。
命が生まれることは『嬉しい』
命が亡くなることは『悲しい』
そんな試行の積み重ねによって、俺の中で導き出される反応にすぎない。
そうシオンは語った。
機械仕掛の彼には有り得ないのかもしれないけど、多分『無意識に』。
私との壁を、作ったのだ。
それでも私はシオンがいてくれたから、毎日を楽しく過ごす事ができた。
彼と一緒に過ごす事が幸せだった。