「....リリーはね」
俺の問いかけには答えず、リリーが呟いた。柔らかな髪の毛をさらりと落として、
俯いて。
「リナリア様には会えないから、.........ほんとは、ほんとはね」
ゆっくりと少女の本音が紡れる。
「やっぱり寂しくて、胸がぎゅーってしちゃうの...」
でもね、と言葉が続く。
持ち上がった顔には、笑みがあった。
「でも、リナリア様の笑ってる顔を思い出すと、なんだか暖かくなって、にこにこするんだぁ」
リリーはこちらを見ると、笑顔を引っ込めて、怪訝そうに訊ねる。
「シオン?」
リナリア
君の名を口にするたびに、胸を衝く痛みがあるのに―――
それでも、君の笑顔を記憶に辿ると、また微笑みが反射で浮かぶのは―――
そして、ああ、今こうして涙がこぼれ落ちていくのも
人間の反応を真似ているんじゃない。そうだろう?
―――『俺』が想っているんだ。
「俺も、リナリアが好きだよ」
瞳から溢れる涙を拭いながら、俺は独白した。
リリーに対してではなく、虚空に向かって。
彼女がいなくなって、『かなしい』。
とても、とてもかなしい。
リナリアに応えてやりたかった。
でも、もう―――
「シオン!これっ!」
甲高い声にはっとすると、リリーががばっとこちらに腕を突き出したところだった。
その手に握られていたのは―――四葉のクローバー
「リナリア様に、あげて」
受け取って呆然としている俺に、リリーは息せき切って続ける。
「リナリア様、教えてくれたの。あのね、クローバーの『はなことば』はね―――」
*
協会の裏手にある墓地に、俺は佇んでいた。
「....君なら言わなくても知っているんだろう?」
捧げられたクローバーは、笑うように葉をゆらめかせる。
「俺は、ここで生きるよ。神父様にお願いして、ここでリリー達を守っていくことにした」
まだあどけなかった頃の君のように、無邪気に、素直に俺に笑いかける子供達。
その笑顔と真っ直ぐな眼差し。
守りたいと思った。
あの頃よりも、ひたむきに。
「あの屋敷で君と過ごしたように、君がいるところで。」
君と一緒に、生きていくよ。
ざあっと風が吹き抜けた。
それがいいよ、と言うように。微笑むように。
「シオーンっ」
リリーや、他の子供たちの声が響いてくる。そろそろ行ってやらないと。
遊び相手がいないと、退屈だろうから。
「行ってくるよ」
リナリア。
さよなら、と君は言わなかったから。
「おやすみ、リナリア。また明日」
シオン「君を忘れない」
クローバー「約束」
リナリア「この恋に気づいて」
fin.