「....リリーはね」
俺の問いかけには答えず、リリーが呟いた。柔らかな髪の毛をさらりと落として、
俯いて。
「リナリア様には会えないから、.........ほんとは、ほんとはね」
ゆっくりと少女の本音が紡れる。
「やっぱり寂しくて、胸がぎゅーってしちゃうの...」
でもね、と言葉が続く。
持ち上がった顔には、笑みがあった。
「でも、リナリア様の笑ってる顔を思い出すと、なんだか暖かくなって、にこにこするんだぁ」
リリーはこちらを見ると、笑顔を引っ込めて、怪訝そうに訊ねる。
「シオン?」
リナリア
君の名を口にするたびに、胸を衝く痛みがあるのに―――
それでも、君の笑顔を記憶に辿ると、また微笑みが反射で浮かぶのは―――
そして、ああ、今こうして涙がこぼれ落ちていくのも
人間の反応を真似ているんじゃない。そうだろう?
―――『俺』が想っているんだ。
「俺も、リナリアが好きだよ」
瞳から溢れる涙を拭いながら、俺は独白した。
リリーに対してではなく、虚空に向かって。
彼女がいなくなって、『かなしい』。
とても、とてもかなしい。
リナリアに応えてやりたかった。
でも、もう―――
「シオン!これっ!」
甲高い声にはっとすると、リリーががばっとこちらに腕を突き出したところだった。
その手に握られていたのは―――四葉のクローバー
「リナリア様に、あげて」
受け取って呆然としている俺に、リリーは息せき切って続ける。
「リナリア様、教えてくれたの。あのね、クローバーの『はなことば』はね―――」
協会の裏手にある墓地に、俺は佇んでいた。
「....君なら言わなくても知っているんだろう?」
捧げられたクローバーは、笑うように葉をゆらめかせる。
「俺は、ここで生きるよ。神父様にお願いして、ここでリリー達を守っていくことにした」
まだあどけなかった頃の君のように、無邪気に、素直に俺に笑いかける子供達。
その笑顔と真っ直ぐな眼差し。
守りたいと思った。
あの頃よりも、ひたむきに。
「あの屋敷で君と過ごしたように、君がいるところで。」
君と一緒に、生きていくよ。
ざあっと風が吹き抜けた。
それがいいよ、と言うように。微笑むように。
「シオーンっ」
リリーや、他の子供たちの声が響いてくる。そろそろ行ってやらないと。
遊び相手がいないと、退屈だろうから。
「行ってくるよ」
リナリア。
さよなら、と君は言わなかったから。
「おやすみ、リナリア。また明日」
シオン「君を忘れない」
クローバー「約束」
リナリア「この恋に気づいて」
fin.
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