月と大地、あと太陽
世界観はファンタジー世界。勇者とか魔王とか賢者が居て戦いが起きてたりする。勇者や魔王は実力継承制で、勇者や魔王という肩書に特別な力(ステータス増強、対特攻)は無く、ただの名誉かつ形式的な称号。義務も特権も無くただそう在ったがために大多数につけられたもの。それ以上でもそれ以下でもない。
勇者=勇ある者。勇気とは多面的で、どうも定義というもの自体がおこがましい気がする。彼の場合、彼がそうすべきだと思ったからそうなった。それを外部から客観的に見ると勇気ある行動、決断、思考だった。完全に無自覚。
酒場に入ったらカウンタ−席に座って、店主にどれがおすすめと無邪気に聞く
魔王=魔の王。魔物の王、魔法の王。勇者と違っていろいろと名称の詳細は変わるけれど、どの王も実力は桁外れであることは間違いない。今代の魔王は魔物を実力で従える魔物の王。彼もしくは彼女は生まれたときからその身に力を宿していた。在るだけで強く、その存在感に今居る魔物たちが自ら軍門に下るそういう自体を起こした。
酒場では気になるメニューを片っ端から頼む。
賢者=智ある者、賢しき者、識る者、憶えている者。前記すべてを満たさなければ真なる賢者に非ず。んなわけない、賢者とはただ永く生きただけの者であり、過去を忘れられない愚か者。それが賢者であると賢者は言う。
酒場では他の人が食べてるメニューを見ながら、悩んだ挙げ句店員さんにおすすめのメニュー聞くタイプ。
ほんへ
薄暗い森の中、ではなく月の光が照らす空に一対の翼を羽ばたかせている人型の何かが一体。その速さは遥か下にある木々を揺らすほどの風量だ。その飛行体が飛ぶ先には森の中にそびえ立つ怪しげな石の塔があった。
塔の最上部には大きめの机に二つの椅子がある。飛んできた者は翼をしまうと、塔の最上階に着地。勝手知ったるように椅子にどかっと座る。
「おい賢者!居るのは分かってる早く出てこい」
怒鳴る声に反応してか、石造りであるはずの床から何故か人が浮かび上がってくる。丈の長いローブに杖、白く染まった髪はそれ相応の年月を重ねていることが見て取れる。その容貌、肌がピッチピチで無ければ。
「酷いじゃないか。せっかく寝ようと思ってたのに、夜ふかしはお肌の大敵なんだよ?」
「お前なら私が森に入った瞬間わかってるだろ?それにその浮いてるつまみと酒はなんだ」
賢者は肩をすくめると、浮かしていた酒たちを机に移す。怒鳴った人物はさっそくお酒を手に取りそのまま口へ入れる、その所作は荒っぽくだけれど気品があると感じられる妙な動き、つまり似合っていた。
「君は相変わらず美味しそうに食べるね。僕も美味しく食べることには賛成なんだけど」
「たわけ、美味しいものは美味しい、不味いものは不味い。それは真理だろう。」
「まあそうだけど、やっぱり人間同士…うーん、ある程度駆け引きとかそういうコミュニケーションがある種族同士だとどうしてもねー」
「ふん、面倒な」
賢者は苦笑して、会話を挟みながらも美味しそうにぱくついている人物へ問いを投げかける。
「ところで魔王様、最近君のところはどうなっているんだい」
魔王、それは今代に関しては魔物の王。生まれ持ったその強さに魔物たちが恐れをなした。そして在るだけで畏怖させるそういう存在であり称号。魔王と呼ばれたその人物は鬱陶しげに賢者を見る。
「おい賢者、私はそういう呼ばれ方は好きではない。呼ぶなら魔王と呼べ魔王と」
「はいはーい、魔王」
「うむ、それでよい」
魔王は不満げにしていた顔から一転、すぐに酒を口に入れ美味しそうにほころばせる。つまみを頬張りまた美味しそうに口角を上げる。
「おーい、魔王。君の近況はどうなんだーい」
「む、そういわれてもいつも通りの放し飼いだ。あとはなんか上手く行っている気がする」
「それはまた大雑把な」
「大雑把な方がお前からしたら楽だろう」
自慢げに言う魔王に対して、賢者は面倒そうな顔で酒を飲む。
実際、魔王が居るところの情報を得るのは至極困難で全体の把握など夢のまた夢。こうやって全土を文字通り把握している魔王から全体の大まかな情報を言われる方が楽では在るのだ。
「楽ではあるケド、こうやって見透かされてる感じがなんか納得いかない」
「私は王であるからして、見る目はあるのだよ」
「君の場合は超常的な勘でしょ勘。だから納得いかないんだよ」
賢者は不満げにぐいっと酒をかっ食らう。
魔王は賢者らしからぬ賢者に笑い、今度は優雅に酒を飲む。
「賢者様におきましては、お体の方はお変わりないでしょうか?」
「うーわ、魔王がそういうふうに喋るの気持ちわるー。今度勇者のやつに見せてやろ」
「おい馬鹿やめろ。どうやって今の記録した。あいつに見られたら私は憤死する」
酒が回りはじめた彼らの話は、時折拳や魔法を交えながら進んでいった。種族、生い立ち、世界の仕組み、最近の流行り、政治、街角のパン屋、好きな食い物、趣味、新たにはじめたこと、誰かが死んだ、生まれた。色々なことを話して、飲んで、食べて、軒並みお酒もつまみも無くなった。夜が明けるまでもう間もなくといったところで彼らの話は互いをどう表すかに移った。
「なあ、賢者。私を何かに表すのならどうする?」
「月」
「即答したな」
「僕は?」
「大地」
「そっちも即答じゃないか」
ゲラゲラと彼らは笑った。お酒に、妙な話題、そして夜も明けかかっている。みっつ揃ってしまえば何をしてもこの二人は笑うに違いない。
「ところで魔王、なんで僕は大地なの。包容力でも感じちゃった?」
「たわけ、お前の知識や経験がこの前見たカラフルな崖に似ていると感じてな。思わずそう答えてしまっただけだ」
魔王は勢いに任せて語る。
賢者が教えてくれた地層というものをあのカラフルな崖で初めて実感した。今この大地に住んでいる私もそうだが足下を無自覚に過ごしている。だけれどこの大地は幾万年の、想像もつかない時間と積み重ねを経てここにある。積み重なった土は色々な性質を備え、それらが合わさり頑強な地面となったり、命育む地面や逆に命を拒む泥となったりと色々とある。
それらを知識に置き換えてみると不思議なことにお前が浮かぶんだ。そう魔王は締めくくる。
「わあお、魔王がそこまで考えられるなんておじちゃん感動した」
「おい賢者、お前の年齢だとおじちゃんじゃなくてじじいだろう?間違えるな」
「はいはいそうですねー、じじい感無量」
また二人はガハガハ笑う。月明かりの下見える二人の容貌はどちらも大変若く、麗しい。会話さえ聞いていなければ一枚の絵画として名作になる程度には二人並ぶ図は絵になる。
「ところで私を月に例えたのはどういうことだ?」
「それはもちろん君の容貌内面含めて月のように美しいと思ったからだよ」
賢者は少し恥ずかしげにだけれど得意げに語る。
今天上にある月。なによりそこに在るだけで美しいと思うんだ。いつ何時どこにいようと、どんな状況でもあの月は美しかった。
最近の研究であの月がこの世界に影響を及ぼしてることが分かったんだ。魔物の出現傾向だったり、潮の満ち引き、果てにはある種族の精神にまで。ただ在るだけなのに影響を及ぼす。すごいよねえ
過去の君や今の君を見ていると、僕はまだ君の一面しか見れてないんだなあと実感する。そう賢者は締めくくる。
「あ」
「どうした賢者」
「いや月って本能っぽいなあって」
「む?理解はできないが納得できるな。なんでだ?」
「その勘こそ本能の権化だよねえ」
そういって賢者はゲラゲラ笑う。
魔王は何かを感じ取ったのか賢者の頭へチョップを敢行。賢者は予想していたのか酒に振り回されながらもなんとか回避。
「む」
「どうしたの魔王」
「賢者は理性そのものだなと」
「さっきの例えで理解は出来るけど納得はしたくないなあ」
「それこそ理性よなあ」
魔王はくつくつ笑う。
賢者は察したのか。魔王に向かって衝撃の魔法を放つ。その魔法は何の予兆もなく魔王の死角から放たれ、魔王の頭へ正確に向かう。魔王は迫りくる魔法を躱さず裏拳で対応した。
「こすい賢者め」
「脳筋魔王め」
互いに互いを見つめ今度は吹き出す。大地は依然として塔を支え、天上の月は変わらず地上を照らしていた。
「なあ、賢者」
「なに、魔王」
「あいつを表すと何になるんだろうな」
「勇者?」
「そうだ」
「太陽」
「即答だな。私もそう思ったが」
方や誇らしげに、もう一方は憎らしげに語る。
あの子は明るく温かみのある子だった。
あいつは腹が立つほどにこちらを照らしてきた。
時にこちらを焚き付け、時に寄り添う。勇者の与える熱は、あの眩しい意志は嫌いでは無かったと両者は語る。勇者に照らされ芽吹いた二人は夜明けを前にぽつりと語る。
「ただ森に引きこもってた僕が、まさか世に名高き賢者なんて称号が貰えるとは」
「ただ意思なき暴力であった私が、まさか世に轟く魔王なんて称号が貰えるとは」
両者は思い出す。自身の前に現れた勇者でなく、ただの若者であったあの目を。あの目に、あの熱に自分は変わらされたのだと言い訳がましく二人は愚痴った。
「思い出したらムカついてきた。あいつ今どこに居るんだ」
「勇者ならちょっと前にこの森に入ってきたみたいだね。目的地は多分ここなんだろうけどなんか森の中で迷子になってるの笑う」
「それはお前が結界を張っているからだろうに、あいつ回収してきていいか」
「いいよー、ついでに紐なしバンジーもよろしく」
「承った」
魔王は翼を広げ、空へ羽ばたき、賢者は準備のためか塔の中へ消えていった。二人ともそれはもう大変口角が上がっている様子で、何を楽しみにしているかは明白である。辺鄙な石塔で絶叫が響くが今日も世界は恙無く回っている。
〜Fin〜
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月と大地、あと太陽
初公開日: 2023年02月17日
最終更新日: 2023年10月15日
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コメント
思いついた話書きます。
orap
今更おれあぽにどっぷり嵌ったので書きなぐり。いやあ、かみとさんのスナイパーの安心感すっごいしめっちゃ…
狐雪
阿白日常譚(#ピザ窯の仲間達)
ツイッターにある#ピザ窯の仲間達 の日常を書きます。妄想多め&キャラ設定甘め
狐雪