わたしは冷えに弱い。特に足の冷えなんかは。
そのまま布団に入れば、どれだけくるまろうにも隙間はできてしまうもので、あっという間に足先から熱が奪われていく。小さい頃なんかはそれで寝付けずにぐずることもしばしばあったらしい。
だからわたしは寝る時、基本的に湯たんぽを使う。湯たんぽがあれば朝まで適温が保たれ、ぐっすり寝られる。わたしの冬のお供、必需品だ。
そんな必需品をあまり使わなくなったのはいつ頃だろう、と振り返ろうとしたものの、答えは明白だった。
何故なら目の前に、天然湯たんぽがいるのだから。
「……」
豆電球にかすかに浮かび上がる当の湯たんぽは、とっくに目を閉じたまま、呼吸に合わせて微動するだけ。明日が舞台というのもあって、流石に寝入るのが早い。
寝る時は完全消灯派のわたしにとって、この束の間の時間は決して悪いものじゃない。
燈子の寝顔を、薄暗がりの中ではあるけれども、こうして堪能できるのだから。
もうすっかり燈子は大人になったというのに、体温は未だに子供みたいに温かい。おかげで冬場はすごく助かってる。反対に真夏だと暑苦しいくらいなのだけど。
そういえば初めてお泊りした時も、湯たんぽなしで寝られたのを思い出した。それはまぁその、そういうことをやったからっていうのもあるのかな、と思ってたけど、こうやって普通に一緒に寝るだけでこんなにも温かいのだから、やっぱり燈子が子供体温なのだろう。
それでもやっぱり湯たんぽ――燈子じゃない方の――を全く使わないわけじゃない。燈子が劇団の遠征や合宿で家を空けると、代打として出番がくる。
そう。明日から燈子は遠征がある。それは仕方がないこと。
だから今の内に充電しておきたかった。
もぞもぞと燈子に近寄る。起こさないように配慮しながら不格好にその体を抱き締め、足を絡める。
「……あったか」
そんなわたしの行動も露知らず、湯たんぽはすぅすぅと寝息を立てている。
それに苦笑を零し、頬に一瞬だけ唇を落としてから目を閉じる。
燈子を感じながら、わたしはいつの間にか眠りに就いていた。