前に作ったもので常連から好評だったものを要望や感想を聞いたうえで新しく作り直す。人間に近いとはいえ、あくまでも我は人外でしかなく完全に人間の感覚を理解することはできないのだから意見を聞いて作った方が相手も嬉しいだろう。
「…守りの効果が発動した時に弾け飛ばないブレスレットか」
なかなか難しいことをいう。これは守った相手がどのような状態になるかで変わるのだから、病気から守ったなら弾けたりはしない。多分大きな怪我から守られたんだろう…あぁ我一人で選別するなんて言わなければよかった。
「ふむ、誰ぞに意見を聞いた方が良いか」
「じゃあ私でも大丈夫かな?」
「…いつから後ろに居た?」
「あえていうなら最初から…?押し入れ入ったら寝てた」
「それで音もなく声をかけてきたのか。心臓に悪いぞ」
「普段のアオだったら気づいてるからいいかなって」
へらりと笑う圭に何とも言えない気持ちで見つめたら「まぁまぁ!いつもの選別作業でしょ?私がやるからアオは呪具制作に集中してくれていいよ!」なんて話を逸らす。別に怒ったりはしないが、彼女は我を含め家族に怒られるのを心底嫌うから後ろめたいと思うと話を逸らそうとしてくる。…まぁ、そこが可愛いと言えばそうなのだが
「…この弾け飛ばなくなるのはだめ。使用済みか分からない人もいるし、多分少しヒビが入るくらいに抑えられても支障が出るでしょ」
「まぁ出来たとして守りとしても効果は薄れるだろうな」
「それならこっちの方が良くないかな?ピアス型の魔除けが欲しいけど穴が開いてないからイヤリングも作ってほしいって」
「名前忘れたがピアスをイヤリングにするのあったよな?それじゃダメなのか?」
「効果がなくなるんじゃないか、とか元からイヤリングなのが良いとか思う人も居るだろうね」
「まぁそれならある程度子供でもつけられるから良いな…デザインは同じでも?」
「デザインはお任せ。イヤリングなら子供用のデザイン作るのもありだよね、孫とか子供に買いやすくなるし」
子供用というと、おもちゃの指輪みたいな大きな石がキラキラみたいなやつだろうか。ただ耳に下げるとなると重い可能性があるのか…シンプルなのが良いという子も居るだろうから、カフも視野に入れておこう。子供向けのデザインはまた考えておかねばな
「イヤリングは作るが、他には何がある?」
「うーん…キラキラ可愛いものは年齢的に手に取りづらい。とか男でもつけやすいのが欲しいって意見は結構ある。アクセサリー以外に持ち歩けるものが欲しいとかね」
「元は常連への呪具だったからな。人の子が必ず持ち歩くものはなんだ?」
「ハンカチとか?」
「確かにそれなら老若男女問わないな」
「自宅用だったら小物入れとか私は嬉しいかな。外出ってなると難しいけど」
確かに置いておくものは依頼以外で作ってはいないな。その試作で数点売ったが、売れたのかは気にしてなかったからな…そうなると今回はイヤリングとハンカチを作る方向にしようか
「手伝い頼める?」
「良いよ!なに作るか決めたの?」
「とりあえずイヤリングとハンカチから」
「今まで作ったピアス持ってこなくて大丈夫?」
「違うデザインの物を作るから問題はない」
まずはイヤリングに付ける石を選んでもらう。石一つにも意味があるため、石選びだけでも時間がかかる。その点、彼女は石を創っている魔獣達に好かれているからか良い石を勘で選び取ってくれるから作るこちらとしては非常に助かる。
創っている魔獣とそれらを従えてる魔飼は経験で良い石を選んではくれるが、こんなのも分からないの?という顔をしてくるため極力頼りたくはないのが現実だ
「これ、新入りちゃんが作った石かな?澄んでて綺麗」
「水晶ではないな…。オリジナルか?」
「創作石産むのが好きみたいだから。お花上げると石にお花を埋めて飾ってくれてたりするよ」
「これは効果が分からないから調べてからしか作れないな…今度サンプルを貰いたいから新入りを紹介してもらってもいいか?」
「勿論!…あ、このラピスラズリいいね」
持ち上げられたラピスラズリは確かに他のラピスラズリと比べると見た目は少し悪いが、力が強く込められている。こうして我は注視してようやっと分かるのに彼女は勘で当てていくのは何となく気に入らない気持ちにもなるが…
「助かった。ラピスラズリなら9月と12月の誕生石だし誕生日の贈り物としても良いな」
「幸運石だっけ…?幸せを呼ぶって言われてるよね。」
「あぁ、あとは判断力などを良くしてくれるとも」
「じゃあこの石で最初のイヤリングを作るの?」
「そうだな、我としてはシンプルな物の方が好みだから今回のイヤリングはシンプルなものにしよう」
「シンプルなのは男の人もつけやすくていいね」
とりあえず、デザインを持ってきたい前のピアスを持ってきてそのデザインそっくりに作るためにも材料集めからだ。
一応家族や友人とお揃いにしたいと買っていく客もいるから、それを考えたら数点多めに作っておく必要があるはず…少なくともイヤリングは5は必要だろう。好評だったら追加で10作ればいい。
「折角選んでもらったからさっそく作り始めたい」
「そっか、じゃあ邪魔にならないように部屋から出ておくね。ご飯とかは完成してから食べれるようにしておくから」
「ありがとう。完成したら鈴を鳴らして呼ぶ」
「じゃあ私はハンカチの刺繍デザインとか考えておくね!」
ニコニコと笑ってデザイン用の紙を持って行った圭に小さく礼をつぶやいて作業に取り掛かる。彼女が選んだ石で作るのはいつも通りだが、今回の守りは客からのリクエストだ。その分期待値も上がってるだろうから頑張らなければ
彼女が隣の部屋で紙にペンを滑らせる音が聞こえてくるから、多分食事などの準備時以外は今日あそこで作業をするんだろう。彼女の手を煩わせないためにも早く終わらせなければ…。ラピスラズリが入った引き出しから数個取り出して緩む口元をそっと隠した