若年層で人気の作家の五次元リアルはネットの一部のアンチから、作品がAI生成によるものだと疑われていた。
 五次元リアルの作品の更新速度が早いことから、アンチによる当て擦りのように湧いた疑念だったが、作品の内容からしてAI生成でないことはファンには明らかであった。
 一方で作者のリアルの喧嘩っ早い性格によって、リアルはアンチとレスバをしてしまっていた。そして売り言葉に買い言葉が続いて、最終的には五次元リアルによるAI生成ではないことを証明するための執筆ライブ配信が始まった。
『ある男はパソコンを前に文章を入力していた。自分の作成した文章がリアルタイムで執筆されることを証明するためだった。公開されたリンクをを開くと、男が入力した文章が表示される。』
 五次元リアルが配信ライブで執筆し始めたのは、丁度リアルと同じ執筆配信ライブをしている男の話だった。
 リアルは実は想像力があまりなく、自分の感情や思考をほぼそのまま文章に出力しているに過ぎない。今回も同じように、自分がAIを利用していないことを証明すること自体を小説にするつもりらしかった。
『男はPCを前に呟いた。
「馬鹿馬鹿しい。こんなことしてなんになる」
 それでも男の文字を入力する指は止まらなかった。男は執筆し始める前までは、真面目に作品を執筆して自分がリアルタイムで作品を作れることを証明しようと思っていた。
しかしよくよく考えれば、リアルタイムで文字が表示されることは、実際にその時考えたこと表しているわけではないのだ。
例えば、手元にある文章が書かれた紙を見ながら、適当に文字を区切ったり、間違えたり、追加したりしながら入力していく。そうすればまるで考えながら執筆してるように見せることもできるわけだ。
本当に証明しようと思ったならば、文章の表示画面の他に、執筆者本人の映像を配信する必要があるし、それも他人のPCで何も持ち込むことはできないようにするなどの条件が必要となる。
それこそ何らかの試験のようにカンニングを防止する必要があった。
 その事に気づいてからは、この証明はただの茶番だった。
 それでも男は文字を入力する手を止めなかった。』
 そこまで入力して五次元リアルの指が止まった。さっき自分で作中で書いた通り、この配信は茶番だった。AIを使用しないで執筆したと証明することはできない。
 
 それでも五次元リアルは書かなければならない。書くことを止めるとは出来なかった。目の前に試験官が立っているからだ。あの日からずっと。
 試験官は半袖半ズボンのどこにでもいそうな少年の姿をしている。手には五次元リアルが使っていたノート。
 試験官はいつもどんな時も無邪気に笑う。
『続き楽しみにしてるね』
 だからリアルは書き続けなければならなかった。
 どこにでもいる普通の少年。五次元リアルが寝坊して待ち合わせに遅刻
したから、交通事故に遭った少年。
 リアルが寝坊しなければ、遅刻しないで時間通りに出かけることができたなら未来があった少年。
 リアルの目には、未だ少年の姿が映る。彼はいつも通りつづきを楽しみに待っている。
 リアルの指は止まらない、止めてはいけなかった。
 だがリアルが今執筆ししている作品の男は、何故書くのをやめないのだろう。
 リアルは想像することが得意でない。想像することが出来ないと指が止まってしまう。
 ふと顔を上げると、自分の目だけに映る少年はいつものように笑う。
『続きを楽しみにしてるね』
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チキチキ執筆耐久レースなう
初公開日: 2026年07月31日
最終更新日: 2026年07月31日
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