「変なこと聞くんだけど……」
 ふんふん、とうなずく影狼とわかさぎ姫。
「もし……もしだよ? 自分がたくさんいたら……どう思う? どれが本当の自分か、どうやったら見分けることができると思う?」
「……」
 顔を見合わせる二人。そして沈黙。
「「なんか変なものでも食べたの?」」
「ふたりして失礼だなあ!」
「もう1回八意先生に見てもらったほうがいいんじゃないの?」
 ため息混じりにそう言う影狼。
「やめてよもう……私だっておかしなこと言ってるって自覚はあるんだからさ……」
「でも、なんでいきなりそんなこと言い出したの? っていうか、その話って解決したんじゃなかったっけ?」
 そう、わかさぎ姫の言う通り、この話は解決したはずなのだ。夢の中の、あの出来事を通して。
 夢の中に散らばった、記憶の欠片。
 私が知らないはずの記憶。
 増えすぎた私の頭。
 そして、私の知らない、夢の中の私。
 私は夢の中で出会った夢の支配者を名乗る妖怪・ドレミーの要請のもと、散らばった記憶の欠片を再収集した。そして、一連の事件の黒幕だった夢の中の自分と出会い……。
 でも、なんだか……なんだか、まだやり残したことがあるような気がしてならない。そして、それがなんだか、自分でもよくわからないのだ。
「うーん……なんだか、やり残したことがあるような気がするのよね、夢の中で」
「じゃあ、また夢の中に言ってみれば?」
「そんな、お茶しに行くみたいな気軽な調子で言われても……。まああの世界はまだ残ってるみたいだけど、私が自由に出入りできるわけじゃないし。ドレミーに頼もうにも、いったいどこにいるのか……」
「呼びました?」
「うわあびっくりした!!」
 いきなり後ろから声をかけられて、私は飛び上がりそうになった。振り向けば、そこにはなんか絶妙に胡散臭い顔。
 夢の支配者、ドレミー・スイートその人だ。
「なななな、なに突然出てきてるのよ!」
「いやあ失礼。ちょうど赤蛮奇さんに用事があったものですから。あ、そちらが今泉影狼さんにわかさぎ姫さんですね。わたくしドレミー・スイートと申します。以後お見知りおきを」
 心臓が止まりそうになっている私を差し置いて、マイペースに挨拶をしているドレミー。
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