「主様、一緒に食べませんか?」
夏の暑い昼下がり。物吉から渡されたのは、2本を分けて食べるタイプのアイス。
「やった、ありがとう。今日も暑いもんね」
縁側に足を投げ出しながら2人、並んでアイスを食べる。チョココーヒーの甘さと苦さが、暑くて火照った身体にじんわりとしみていく。
遠くから聞こえる、セミの鳴く声。水遊びしてはしゃいでいる刀剣男士の声。……そして隣には、上着を脱いでノースリーブのシャツのままアイスを食べる物吉。
夏だなぁ、と思うと同時に、特徴的な珊瑚色の横髪を耳にかける一瞬の仕草にドキッとして、急いで目をそらしてしまった。
……多分物吉は、何も知りやしないんだ。あたしがずっと、物吉に片思いしてるなんてさ。
なんで上着脱いで来たの。ドキドキして全然顔見れないじゃん。一緒にアイス食べれて嬉しいのに、顔見れないから全然話が出来ないじゃんか。
「暑いですねぇ」って物吉がぽつりとつぶやく。いろんなことが頭の中でぐるぐるして、「そうだね」って頷くので精いっぱいだった。
アイスはあと少しでなくなっちゃう。……もう少し一緒にいたいけど、どう伝えたらいいか分かんない。
どうしようかと考えてるうちに、一瞬手が触れ合った。
「あっ、ごめ……」
ほんの一瞬だったのに、触れ合ったところがすごく熱い。そこから熱がどんどん広がって、全身が熱くなっていく。
物吉は薄橙色の大きな目をまんまるにしたかと思えば、なにか言いたそうだったのを引っこめて目をそらしてしまった。
これじゃもうますます顔なんか見れやしない。その後はお互い沈黙のままアイスを食べ終えてしまって、なんとなくその場から動くこともできず、ただ無言で縁側に座っていた。
お互い何も言えずにいると、「物吉ー、手合わせやろうぜー」と、遠くからソハヤが呼んでる声がする。
「……あ、すみません。呼ばれてるみたいなので、ボクもう行きますね」
「……うん。行ってらっしゃい」
みんみん、じじじと、セミの声だけが響く。触れ合った手は、まだじんじんと熱い。
誰もいなくなったところで、触れ合ったところにそっとキスをした。
「……ああ、暑いなぁ……」
主様と一瞬触れ合った手が、じんわりと熱い。
一瞬手が触れただけだったのに、主様があんな顔をするなんて。
「……物吉?お前何ニヤニヤしてんだ?」
「え?……ふふ、なんでもありませんよ」
ソハヤさんの質問をはぐらかし、触れ合った手にそっと口づけを落とす。
──ねぇ、主様。あんな顔されたら、少しは期待してもいいですよね?
手合わせが終わったら、次は一緒に冷たい飲み物でも飲もう。……その時には、もう少し大胆に迫ってみようかと笑って、木刀をぎゅっと握りしめた。