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1つ目は『宇宙船のコクピット』
2つ目は『お惣菜』
3つ目は『歩む』
地球からの船が降りてくる日だった。食堂の大きな窓から覗ける中庭のポートからは、コクピットのロボットが機能を停止させていた。荷物を降ろしたこの空の箱に乗り込んで地球に戻れるのだろうかと考えたことは一度だけではないが、帰りの燃料や食料を考えるとそれは難しいし、なにより地球にやってきた貨物船はその後解体されて研究施設の増設や補修のための素材になるものだから、それは結局机上の空論になって終わる。この船でおろされたパックの食料は各国の料理をそろえており、湯で戻したり機材で温めたらそれなりに食べられるものになっていた。
その日の彼は食堂から一枚のユーロ札と引き換えに食材棚に置いてあったコロッケとコーヒーのリキッドを手に取り、部屋に戻る。この間マモノはまとめて討伐したし、ケモノの生息地でもずいぶん暴れていたらしく、襲撃の気配もない。真っ白い廊下に並ぶ扉を一つ一つ歩き過ごし、自分の部屋の扉が閉まったところでようやく一息吐いた。彼の部門は戦闘であり、それ以前に護衛職だったものだから自分のパーソナルスペースに入るまで気は抜けない。時折研究施設の外からの赤い来客もありはするのだが、今日はそれもないようで。久方ぶりの一人。ポケットに入れていたコーヒーのリキッドをメーカーにセットして、出来上がるまで手の中のコロッケの包みを開く。茶色の衣が包みの中にこぼれ、数週間の宇宙の旅を経験したとは思えないような脂の匂いを伝えてくる。元々食がそこまで太いわけでもないのだから、彼からしたら食事などこれで十分だ。ざく、とかじる。ジャガイモとひき肉、パセリの味わいが広がる。ドロリとした中身が口の中をやけどしそうな熱をもって流れるが、それを厚い舌が受け止めて喉の奥に流し込む。そのままざくざくとかじって最後には紙切れだけになり、そのタイミングでコーヒーメーカーも出来上がりを示す音を鳴らす。紙をぐしゃと手のなかで丸めてゴミ箱に捨て、白いマグの中にある黒色でぐっと脂を洗い流した。
ここはBPL、地球の望みが錨を降ろした最果ての星の研究所。その一部屋で、男は少しだけと目を閉じた。
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手取川
20220417三題噺
初公開日:
2022年04月17日
最終更新日:
2022年04月17日
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