「……今でも、狙撃手志望なの?」
 そう訊いた彼女の声には明確な躊躇いが滲んでいた。
 シャワーを浴びたばかりの髪はぐっしょりと濡れている。ろくに乾かしもせず寮の部屋まで戻って来た私を見て、向かい部屋の主は分かりやすく顔をしかめた。
 すっかり冷えた水分を含んだ毛先がTシャツに触れ、点々と染みを作っている。思わずぶるりと身を震わせた。春とは言え、屋内はまだ少し冷える。まして濡れたままでは。
 ドライヤー持ってくるから少し待ってて! と言われてしまったので、私は大人しく自室で『待て』をしていた。窓から見上げられる空の高いところで鳥が飛んでいる。
「何を見てるの?」
 ぼんやり外を眺めていると、ヴィヴィアンがノックもなしにやって来た。その手には宣言通りドライヤーが握られている。それだけでなく、なにやら可愛らしいデザインの瓶や数本の櫛なんかもあった。一体何に使うのか、と首を傾げる。
「鳥。……ねぇ、ドライヤーだけじゃなかった?」
「ドライヤーのために必要なんですー」やや呆れた様子で続ける。「ヘアオイルでしょ、濡れた髪用のクシでしょ、こっちは仕上げ用のクシ! せっかく細くて綺麗な髪してるのに、どうしてあんたはそうなのかなぁ」
 ヴィヴィアンはお洒落だ。そう言うと、毎回決まって変な顔をされてしまう。正しく言うならば、美容に頓着しなさすぎる人間の言う『お洒落』にいかほどの価値があるのか疑っている、ということなのだろう。
 窓際からコンセントの届く位置に移動させられる。私の後ろに立ったヴィヴィアンが大袈裟にコホンと咳払いした。
 もともと口数が多いほうではない。お喋り好きなヴィヴィアンが話し、私が聞き役になる。そういう時間の過ごし方が一番長かった。入学式後に偶然会ったあの日から、私たちがゆっくりと築いてきた居心地のいい空気感だ。
 最近士官学校の近くの街に新しいスイーツショップができたらしい。そろそろネモフィラが見ごろの季節だ。しばらく訓練と試験が続くから、落ち着いたら二人でお出かけしたいね。そういえば、今度校内で射撃大会が開催されるらしいよ。エントリー期限はいつだったっけ。参加するの?
 そんな他愛のない会話が繰り返される。その流れが途切れた一番最後にやって来たのは、士官学校という特殊な環境ゆえの内容だったが。
 ドライヤーの風に揉まれながら、私は背後を振り仰いだ。
「……なーに。前向いてくれないと、乾かせないよ」
 ヴィヴィアンが苦笑する。仕方がないなぁ、彼女はいつもそういうふうに私を見る。まるで、世話のやける姉妹か何かを相手するように。
 私は彼女とは違う。明るく笑って場を和ませることが、侮辱を受けて反射的に怒ることが、自分の感情の揺らぎに向き合うことが、そういうことが上手くできない。屈託ない強さに、酷く焦がれる。憧れている。
 憧れているから、その横顔をしょっちゅう眺めている。一方的に。だからこそ、何となく察せることがあった。ヴィヴィアンが嘘が下手で、隠し事もそんなに上手くない。
「ヴィヴィアン」
「なに?」
「……あの。私が射撃大会出るの、嫌だったり、する?」
 適切な言葉が見当たらなくて疑問をむき出しのまま口にすると、ヴィヴィアンはぱちりと大きな翠の目を瞬かせた。小動物じみたその可愛らしい仕草の裏に、明確な動揺が見える。
「な……なんで? そんなわけないじゃん! いつも実戦訓練でお世話になってる身としては、その実力を思う存分発揮してほしいよ! 大丈夫、あんたなら一番になれるに決まってる!」
「優勝できるかどうかは分からないけど……、いや、そうじゃなくて」
 そうじゃなくて、と口ごもる。露骨に話を逸らされて、それでも私は器用に話の核心を掴めない。
「……分かった。大会には出る。嫌じゃないんだよね」
「だから、さっきから嫌なわけないって言ってるのに」
「じゃあ……、」言葉を探す。けれども、やはり上手く言えない。「じゃあ、ヴィヴィアン。私が銃を変えたらいい?」
「は――はああ?」
 さすがにこの言葉は想定外だったのだろう。ヴィヴィアンはぎょっとして一度ドライヤーを机に置く。私の両肩をがしりと掴み、鬼気迫る表情でまくし立てた。
「ど、どう、どうしてそうなるの⁉ あの狙撃銃は……UL96A1は相棒みたいなものでしょ⁉ 世界で一番大事にしてますーって感じに毎日溺愛してるのに! 大丈夫? 変なもの食べた? それとも頭打った……?」
「そ、そこまででは」
 落ち着いて、と両手を掲げて制する。さすがにヴィヴィアンの言い分は少し大袈裟だ。溺愛って、まるで犬相手のような言い方だ。
 UL96A1は士官学校に進学することを決めたとき、支援者であるダンローおじさんから贈られた大事な銃だ。丁寧に接しなければという義務感もある。そうでなくとも現代銃は精密機器だ。手入れを欠かさないのは普通のことだろう。
「あんたがその銃を使わなかったら、なんか逆に私が恨まれそうだよ⁉」
「誰に?」
「UL96A1に……」
 そんな馬鹿な。
「じゃあ、UL96A1で出場する。予定通り狙撃部門かな」
「うん。……そうだよ、そうしたほうがいい。そうに決まってる」
「……やっぱり、ヴィヴィアン、何か隠してる」
「え⁉ そ、そんなことは」
「嘘。わかるよ」
「う、ううう」
 椅子の背凭れに両腕を乗せ、白状するまで正面を向くまいと決める。じっと無言でヴィヴィアンの顔を見上げ続けると、彼女はころころと表情を変えた。最初はムッと唇をへの字に曲げて、次第に眉尻がへなりと下がり、しまいには大きく肩をすくめて嘆息した。
「――降参、もう降参! もう、妙なことばっかり鋭いんだから」
「妙なことじゃない。他でもない、ヴィヴィアンのことだから」
「……っ、う、だ、騙されないんだからね! この人誑しめ!」
 ヴィヴィアンは部屋の中心からもう一つ椅子を引っ張って来て、私の隣に座った。膝の上に両手を置き、せわしなく握ったり開いたりしている。彼女が話を切り出してくれるまで、私は黙ってその様子を見ていた。こういうとき、気の利いた言葉の一つでも言えたらよかったのかもしれないけれど。
 やがて、ヴィヴィアンがゆっくりと口を開く。
「……今でも、狙撃手志望なの?」
 そう訊いた彼女の声には明確な躊躇いが滲んでいた。
 フィルクレヴァート陸軍士官学校は、第三次世界大戦以前に存在したそれらとは少し違った性質を持つ。大戦後の人口減少、そして世界帝府による圧政を経て、公的な教育機関は随分と廃れてしまったらしい。先の革命戦争から七年。インフラ整備と共に急速に推し進められた教育機関、図書館等の公共サービスの在り方を見直す運動は、連合軍直属の士官学校にも適応される。
 士官学校とは銘打っているものの、ここでは一般教養や医療知識など、幅広い授業がカリキュラムに含まれている。卒業すれば高卒認定も受けられる。卒業生のほとんどが連合軍へと奉職するが、一部一般企業や医療機関へ進む者もいるらしい。そして、連合軍への所属という道だけでもじゅうぶんな選択肢があった。
 私は狙撃兵を志望して入学した。
 だからダンローおじさんが選んでくれた銃はボルトアクション式狙撃銃のUL96A1だったのだ。そうでなければならなかった。もちろん、UL96A1以外の銃で射撃大会に出場する気は毛頭ない。
「そうだよ」
 それ以外ありえない。
 ヴィヴィアンの目をまっすぐに見て答える。翠の瞳が揺らぎ、やがて彼女の手元に視線が落ちた。
「……そう。そっか」
「ヴィヴィアン……、私は」
「ごめん。……ごめん、こんなこと言って。あんたの覚悟に失礼だった。……失礼だって、分かってるんだけど、でも」
 こういうとき、どういう言葉を掛ければ正解なのだろう。ヴィヴィアンにこんな表情をさせたいわけじゃない。それでも、私はこうする以外に知らない。彼女が私と逆の立場なら、きっともっと上手くできたに違いないのに。
 ――狙撃兵になることを後ろ向きに捉えたことはない。たとえどんな扱いを受けようと、私は絶対にこの道を諦めることはないし、どんな目に遭っても生き延びる。たとえ、捕虜となって国際法を無視した報復を受ける未来があろうと、死神として味方から疎まれようと、それが懸念材料になることはない。
 そういうことを、そのまま言ったらいいのだろうか。
「……あんたが……、狙撃手になることに、強いこだわりがあるのは分かる。危険だから止めてほしいとか、怖い道を選んでほしくないとか、私だってそんなわがままを押し付けるつもりじゃない。できると思うよ、きっとあんたはすごく優秀な狙撃手になる。絶対に、なれるよ。ずっと隣で見たきたから、分かる。――狙撃手のあんたは、間違いなく、英雄になる」
 ――死神になれる。
 狙撃兵にとっては最上級の誉め言葉だ。歴史に名を残す狙撃手の英雄の多くは、死神や悪魔と同列視される。公式記録の殺人戦果が五〇〇に上る者だっている。状況によっては十倍の戦力差をひっくり返し得る、狙撃手の誉とはそういうものだ。
 私は、そういう道を選ぼうとしている。
「でも」
 喉の奥から絞り出したような声で何度も「でも」と呟きながら、ヴィヴィアンは私の手を取った。温かい人の体温が指先に馴染む。
「……でも、さ。あんた、きっと、良い将にもなれると思うんだよ」
 想定外の言葉に、今度は私が目を瞬かせる番だった。
「将、って。……士官を目指せってこと?」
「そう。……そうだよ、あんたは絶対に良い士官になれる。間違いない、絶対に!」
「い……、いや、それは。さすがにお世辞でも大袈裟すぎる」
「私がお世辞なんか言うわけないでしょ!」
 思わずごくりと唾を飲み込んだ。
 ヴィヴィアンが嘘を吐いていないことなど、はっきりと分かっている。それでも、私はどうしても彼女の言葉を信じきることができなかった。いや、彼女の言葉ではない。『私が士官になる未来』が一ミクロンも想像できなかった。
 愛想が無くて、人付き合いが下手で、言葉を選ぶ能力がない。テンプレートから外れた礼儀作法が苦手で、しゅんと項垂れる親友に気の利いた冗談を言ってやることもできない。およそ人の上に立つ者として相応しくない人格だ。自分の能力の限界値を理解しているからこそ、私は私が士官に向いていないことをよく知っている。
 それでも、ヴィヴィアンは頭を振って否定した。
「あんたは士官を目指せる」
 何度も強く繰り返す。
「良い士官になって、それで。それであんたが……、好き好んで、人を、殺さなくてもいいようになれば、そうじゃなければ」語尾は力無くしぼみ、結局最後のほうはほとんど消えてしまった。
 握られた手を見下ろす。訓練で細かい傷が絶えない荒れた手だ。同年代の普通に親のいる子であれば、まずこうはならないだろう。自分の境遇を特別不幸だと思ったことはない。大戦で、圧政で、多くの血が流れた。沢山の死体が積み上げられた。無残に打ち捨てられ、感染症の予防のためだけに燃やされ灰だけが残る。各地でそんな光景が見られたはずだ。両親の死は特別なことではなかった。私は、それを知っている。だから、自分の境遇が特別不幸なわけではない。ただ、自分一人の手ではどうしようもない理不尽は、いつだって予告なく訪れる。
 その理不尽に打ち克つために銃が必要だった。私に必要なのが狙撃銃だった。人が死神になり得るだけの力を、十倍の戦力差を単騎でひっくり返せるだけの強さを、それを求めて生きてきた。
 人の心の機微に聡いヴィヴィアンが、私の唯一無二の親友が、それを知らないはずがない。
 それでも。
「……士官。士官かぁ」
 実際に口にすると重みが違う。意味の無い仮想だけでなく、具体的に進路先として検討するならば、まったく今まで通りというわけにはいかないだろう。問題は山積みだ。教官に相談して、カリキュラムを見直して、想像以上の苦労があるに違いない。
「できるかな」
「……! できる、なれる、絶対! 私が言うんだから間違いないっ!」
 パッと輝くような笑顔を見せて、両手を強く握ったヴィヴィアンはずいっと前のめりになった。今にもこのまま飛び跳ねそうな勢いだ。感情表現が豊かで真っすぐで、そんな彼女の言葉だから、私は信じてみることにした。信じてみることができた。たとえ、自分のことが信じられなくても。
「でも、射撃大会はUL96A1で出場するよ」
「うんうん、そうしな、そうしたほうがいい。そうじゃなきゃ私がUL96A1に恨まれちゃう」
「いや、それはないと思うけど」
「あんたとUL96A1は、なんかこう、眩しいくらい素敵な相棒! って感じだもん。あんたは銃火器全般の扱いが上手いし、狙撃銃しか扱えないわけじゃないけどさ、やっぱりあんたにはその銃でなくちゃ」
「狙撃銃を背負った、狙撃手志望の士官って、そんなのあり?」
 思わずそう呟くと、ヴィヴィアンはにっこり笑ってVサインを作ってみせた。
「――オンリーワンって感じで最高にかっこいいじゃん!」
   ✦
「すっかり騙された」
 メモリアルウォールに刻まれた名前を指先でなぞりながら、私は何度もそう呟いた。周囲に人の気配がないことは良かった。今の言葉と私を見たら、きっと誰もが死人に苦言を呈する頭のおかしな人間だと思うに違いない。
 騙された。もう一度口の中だけで繰り返す。そう、私は唯一無二の親友に騙されたのだ。彼女は確かに『良い士官になる』と言った。けれども『すごく優秀な狙撃手になる』とも言ったのだ。つまり、私が『優秀な士官になる』とは一言も言っていない。『良い』なんて幅の広い舌触りの良い言葉にすっかり騙されて、私は毎日苦労している。
 四月の風が頬を撫でる。そろそろネモフィラが綺麗に咲く頃だろう。青い花が一面に咲く自然公園は、定番のお出かけ先だった。スイーツショップの春の新作を楽しみ、運動しなきゃと遠くまで歩いて、あの花畑を泳ぐように進む。そうして、来年も一緒に来ようねと約束する。――来年の誕生日も、こうやって祝ってね。二人で過ごそうね。
 結局、その約束は果たせなかった。それだけではない。私は彼女の言葉の多くを踏みにじり、今ここに生きている。化けて出たならそれはもう長いながいお説教が始まるに違いない。
 ――対して、私は彼女の言葉に生かされているというのに。
 もう慣れてしまった手袋を外し、右手を青空に掲げた。手の甲に刻まれる薔薇の紋様のせいで、私は狙撃手になる道を諦めた。精密、正確な狙撃に必要な技術素質はそれこそ山のようにある。特に、利き手利き指の感触は命綱にも等しい。手の甲だけでなく腕まで伝い、時には頸まで絞めるこの傷がある限り、私がかつてと同じように狙撃を行うことはできないだろう。
 狙撃手になるためにここへ来た。士官学校で訓練に明け暮れた。今、私は士官を目指している。この道を指差してくれたのは、他でもないヴィヴィアンだ。彼女が私を助けてくれた。彼女の言葉が私を生かしてくれた。
 私は、ヴィヴィアンを見殺しにしたというのに。
「……マスター! マスター、どこに居るんだ!」
 春風に乗ってやって来た声に顔を上げた。声が大きくて、自己主張が強くて、可愛い相棒の声だ。
 ほどなくして、彼は私の居場所を的確に探り当てた。
「マスター、探した。ここに居たのか」
「マークス」
 鮮血のような赤い瞳をぱちぱちと瞬かせ、マークスは私の顔とメモリアルウォールを見比べた。いまいち感情が表情に出ない。だから、彼の真意は言葉にされるまでよく読めない。
「……あの人間の名前」
 ぽつりと呟く。悲嘆に暮れるでもなく、感傷に浸るでもなく、ただ事実のみを告げる声だった。
 マークスが私以外の人間を認識するのは珍しい。会話に上がる名前と言えば、上官であるラッセル教官、恭遠教官、フランスの一件で関わることになった一部の貴族、それとダンローおじさん程度だ。マークスが直接ヴィヴィアンと会って話したことはない。けれどもやはりと言うべきか、彼の中では印象的な存在なのかもしれない。
「ヴィヴィアン、ね」
「ああ。……マスターの、親友」
「そうだよ」
 意外なことに、マークスが情報を付け加えた。
「誕生日か」
「……、そう、だけど、よく分かったね」
「銃だったころ、マスターの一番近くに居た人間だ。覚えてる。マスターは俺を連れて行ってくれなかった」
「しょうがないよ。持ち出し許可が下りるわけないし」
 そう言っても、マークスは不機嫌そうにむくれてしまった。
「今は人の身体がある。ずっとマスターと一緒にいられる」
 そんなふうに真剣に言われると断りづらい。マークスと一緒の時間が嫌だと思ったことは一度もないけれど、マークスの言う「ずっと一緒」は本当の意味で物理的にずっと一緒なのだ。そうなると、人間的な生活を送る上で困ることも少なくない。
「……あ。じゃあ、一緒に行こうか」
「どこへ?」
「ネモフィラの花を見に」少し迷って、結局そのまま続ける。「ヴィヴィアンの誕生日に、毎年行こうって約束してる」
 ヴィヴィアンと二人でとはいかないが。それでも、あの場所には行かなければならない。せめてこの約束くらい、叶えたい。多くの約束を無視してしまった私が今更何を、と呆れられるかもしれないが。
「ああ。マスターとなら、どこへでも。俺の居場所はマスターの隣だ」
 マークスは力強く頷いた。
 温かい春風に乗って、どこか遠い場所から甘い花の香りが漂ってくる。
 寮へと戻る途中、ふと彼女の言葉を思い出して、マークスにこう訊いてみた。
「ねぇ。もしもの話だけど。射撃大会に、私がUL96A1以外の銃を使って出場していたらどうする?」
 マークスはぱたりと足を止めた。顔面蒼白で口をぱくぱくと動かし、わなわなと震え、やがて腹の底から絞り出したような声でこう言った。
「……マスターが俺以外を、大事な場面で使うなんてあり得ない……! 受け入れられない……! マ、マスターにそうさせた人間を恨むことしか、俺はマスターの道具だから、でも……」
「ご、ごめん。ごめん、マークス、冗談だから。もしもの話だから。UL96A1以外の銃を使うことなんてないよ」
 何という事か。ヴィヴィアンは正しく予言者かもしれない。士官になる未来だけではなく、マークスの性質までピタリと言い当ててしまった。懐かしいあの笑顔に、猛烈な寂しさとぽっかり穴が開いたような喪失感に襲われる。ああ、ヴィヴィアンこそ。彼女こそ『優秀な士官』になれる人間だった。彼女に助けられる人間は絶対に多かった。その未来を私が摘み取って、踏みにじってしまった。
「……マスター?」
「何でもない。行こう、マークス」
 貴銃士マークス。ボルトアクション式狙撃銃UL96A1の化身。私の愛銃で、相棒。狙撃銃を背負った士官なんて、と笑い囁かれる未来は遠のいた。貴銃士を従えるマスターである士官候補生。それが今の肩書だ。
 この道へ導いてくれた唯一の親友へ手向ける花を探しに、近々マークスと出掛けよう。彼女が言ってくれたように、私にはUL96A1が、マークスが必要だ。
 甘い花の香りに混じって、「――もう、しょうがないなぁ、あんたたちは。やっぱり私が言う通りになったじゃん!」と、軽やかに笑う声が聞こえてきた――そんな気がした。
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応援してます!!!!!!!❤️
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きなこ湯
わー!ありがとうございます!!!!!!!頑張ります!!!!!!!
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きなこ湯
完成です!!!!ありがとうございました
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ヴィ誕SS
初公開日: 2022年04月07日
最終更新日: 2022年04月08日
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1014Rヴィ誕SS、終わるまで寝ない
銃マスワンライ(2024/6/8お題「山・海」)
銃マスワンライをやる部屋。※今日は世にも奇妙な物語を観ながらやるのでぜんぜん進みません。
きなこ湯
銃マスワンライ(2024/6/1お題「読書・演劇」)
銃マスワンライ2024/6/1 お題「読書・演劇」をやる部屋。一時間で書き上げることを目標としていま…
きなこ湯
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行方不明になったランスキーをルチアーノが助けに行って、ホームデ厶で賭けする話
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