「うー……ん!」
 大きく伸びをしたカルカノーレの影が、街灯に淡く照らされ薄く伸びてゆく。すっかり日も落ちた頃合いで、石畳の輪郭線もぼやけて遠い。腰元まで伸びた赤毛混じりの明るい金髪が夜風に揺れた。市街地付近に潜伏していたトルレ・シャフの構成員を捕縛して連合軍へと引き渡し、任務はひとまず完了である。
 木製ストックの銃を担ぎ直して短く息を吐いたカルカノーレに対し、ベネッタが軽く首を傾げる。
「そんなに消耗したか?」
「まあ。何と言うか、手間は増えたなと思ってさ」
「違いない」
 候補生はふたりの〝物騒さ〟はよく理解していた。敢えて口を挟まずにいるも、ベネッタはそれを許してくれるほど穏便で優しい貴銃士ではなかった。
「上層部は口が堅いんだろう」
「……」
 トルレ・シャフの構成員は主に二種類に分けられる。使い捨ての駒として使われる外部の人間と、組織内部の人間だ。対比は圧倒的に前者が多く、対トルレ・シャフ作戦で捕縛した人間のほとんどは大した情報を握らされていない。一方、後者の人間は忠誠心が強い。連合軍の規定内の尋問では何の情報も落とさないのが常だ。連合軍に在籍する人間にとってはある程度周知の事実である。現在は士官学校の貴銃士として活動しているふたりが知っていても、おかしなことはない。同時に、彼らの経歴的に別の懸念点が生じかねないことも事実であった。
 カルカノーレが候補生の顔を覗き込み、悪戯っぽく笑う。
「オレたちに任せてくれたりしない? 絶対いい結果を出すよ」
「……気持ちだけ受け取っておく」
 候補生ができるだけ穏当に返すと、カルカノーレはエメラルドグリーンの瞳を細めて「そっか」と頷いた。反対隣りに立つベネッタもわずかに口の端を上げる。こちらの戸惑いなど承知の上だろう。己の物となっても隠し切れない〝物騒さ〟に、候補生は心の内で嘆息した。
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銃マスワンライ(2024/6/8お題「山・海」)
初公開日: 2024年06月08日
最終更新日: 2024年06月08日
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コメント
銃マスワンライをやる部屋。
※今日は世にも奇妙な物語を観ながらやるのでぜんぜん進みません。