ならば原因は……必然的にシステム内部にあるということになる。
実用化を控えた一大プロジェクトを、こんなところで頓挫させるわけには行かない。
私の率いるチームは、文字通り血眼になって「ネクサス6」に発生した謎のバグの正体を探り始めた。
そして1ヶ月が飛ぶように過ぎ……我々は未だにバグの正体を掴めてはいなかった。
いや……正確に言えば、現場主任である私以外の、より厳密に言えば「ネクサス6」内のメタバースに実際に触れた者は、皆、ひとりの例外もなく問題のバグに接触していた。
皆、システム内で、一人の少女を見たと口を揃えて報告しているのだ。
曰く、「中学生くらいの背の低い女の子」「十字型の不思議な髪留め」「真っ白なキャミソール姿」「クマのパジャマを着ていた」「学校の制服姿だった」など。
たちの悪い冗談だと笑い飛ばせる状態ではなかった。バグを残したまま「ネクサス6」を発売できるはずがない。それ以上に、チーム内には異様な熱気が蔓延し始めていた。
皆、文字通り寝食を忘れて「ネクサス6」内の謎のバグ――謎の少女を探していた。バグを排除するため――ではない。
皆、いつしかその謎の少女に再会することに異様な執着を示すようになっていったのだ。
謎の少女を、「女神」とすら呼ぶものすらいた。
バグ――謎の少女の発見から1ヶ月半を数える頃には、私のチームは以前とは全く異なる集団に変容していた。
この状態をなんと表現するのが適切なのか、私にはわからない。なにが起こっているのかも。
いや、なにが起こっているのかを知る方法ならある。
私自身が、「ネクサス6」内に没入<ジャック・イン>するのだ。そして、私自身がその謎の少女とやらの姿を確かめればいい。
現場主任の私がそれを言い出したときに、止めようとする者は一人もいなかった。それどころか、チーム全員がそれを歓迎する素振りすら見せた。