「結月ゆかりとONE」「足立レイと東北ずん子」と「料理」「テディーベア」「歌」
書くぜ!
 学校へと向かう道すがら遠くに、鮮やかなオレンジを見た。
 その子の名前を足立レイという。
 この街では少し有名な、アンドロイドだ。
 *
 一時間目、板書をしながら来る時に見た足立レイの事を思い出す。
 私にとって彼女は、なんだか少し不思議に思うのだ。友人にもアンドロイドはいるものの、違うのだ。
 なんというか、彼女はその、普通のアンドロイドよりも人間的ではない。
 それが、不思議なのだ。
「じゃあ、次東北」
「あ、はい」
 思考が途切れ、現実へと戻ってくる。
 オレンジを思考の端に置いて、教科書へと向き合い、立ち上がり、読み上げる。
「うつくしきものーー」
 彼女も、誰かにとってはかわいらしいもの、なのだろうか。
 そんなことを考えながら読み続ける。
 なんだか、いつもと違ってはやく授業が終わればいいのになんて思った。
 *
「やーっと終わった」
 そんな言葉が聞こえて、そうだ終わったんだと思考を戻す。
「うん、終わったね」
 そんな事を話しながら鞄に教科書を詰めていく。そんな姿を見ながら隣に立つ友達はいう。
「……ずん子今日ぼーっとしたわね」
「え? そう?」
「うん」
 すっとぼけては見たものの自覚はあった。
「……テスト勉強してるから、かな?」
 それでもなんだか誤魔化してしまうのだ。
「あぁ、それもそうね。私もしなきゃ」
 そうして二人で下駄箱まで向かう。
「じゃあまたね」
「うん、またね」
 そういって手を振りながら、考える。
 なんだか、帰って勉強する気にはならない。少しぶらぶら歩いてしまおうか。
 いやでも勉強もすべきだろう。それに今日は買い物を頼まれている。
 少しだけ葛藤して少しだけ、長い道を歩こうと決めた。近くの小高い丘の遊歩道に繋がる道。あそこなら20分程度の寄り道だ。
 このくらいなら、問題ないだろうと思う。
 それに、テストの点数が下がったとしても自己責任だ。自分で責任を取れるならいいだろう。
 そう言い聞かせて歩き出した。
 *
 ふと、空が暗くなっている事に気づいた。
 どうやらダラダラ歩いてしまっていたらしい。
 20分の寄り道が、一時間程度の寄り道になっていた。
 急いで帰らないとと思うったところで、遠くで歌声が聞こえた。
 英語の歌だ。
 掠れた、機械的な声。
 吸い寄せられるように声の聞こえる方に、ただただ向かう。
 山の方へ、上へ上へ。
 展望台とも言える、少しだけ整備されたところに出た時、夕日が目に刺さり手で光を遮る。
 何度か瞬きをした後に少女というには些か大きな影が見えた。
「ー……ーー……」
 それが、あんまりにも美しくて、ただ、黙ってそこに居続けた。聞き惚れてたのか、見惚れていたのか、圧倒されたのか、よくわからない。
 それでも美しかった。
 階段に座り込み思う。
 明日からも、私は彼女に対する考えは特に変わらないだろう。
 でも、彼女の歌声のことをまず思い出すのだろう。
 鮮やかなオレンジと共に。
終わる!
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