『松島の中富課長に対する馴れ馴れしい態度に先輩らしく注意する玄田と、まぁいいじゃねぇかと笑って見守る鎌田部長』
 雪が降ろうが槍が降ろうが、警察業務は止まることがない。
 いや、槍など降ろうものなら機動隊は確実に呼び出されるだろうし、市民の皆さんからの通報は鳴りやまないに違いない。そんなくだらないことを考えながら、中富は町山署内で書類仕事を片付けていた。日中は忙しくとてもではないがデスクワークなど集中して出来やしない。
 だが、そんな中富の集中を乱す存在が二人、いた。
「……何難しい顔してんのさ。眉間に皺寄ってる」
 ほら、と言いながら松島が中富の額を示す。町山署に異動してからこちら、部下たちとのコミュニケーションを円滑にするために出来るだけ笑顔でいることを心がけている中富だが、古巣の仲間の前では地が出てしまうらしい。
「……もう帰ったら? 用事は済んだんだろ?」
 町山署での用事のついでに居座る二人――松島と鎌田に向けて、どこかつっけんどんに中富が言い放った。
「冷たいですよ中富課長。せっかく町山に来る用事があったから……かわいい後輩が挨拶しに来たっていうのに……」
 松島は小首を傾げ、片目をつぶって自分の頭に片手を当てた。てへ、とでも言いたげな仕草は普段は絶対にやらないであろうもので中富をからかっていることは一目瞭然だった。舐められているのか、それとも良いように解釈するのであれば懐かれているのか……と中富は内心ため息をつく。
「ほら、もう十分挨拶してもらったから。遅いし帰って休めば? 明日の職務に障るだろう」
「……しばらくこちらで勤務なんです。聖子たちの部屋に泊めてもらうしへーきへーき」
 松島が中富の缶コーヒーを奪って飲もうとした瞬間、課室の入り口から低い声が響いてきた。
「……松島。上官になんて……口の利き方を……」
「玄田先輩!」
 松島はあっけらかんとした顔で立ち上がり、飄々と挨拶をした。それを尻目に玄田は、
「……申し訳ありません中富課長。私の教育が行き届かず」
 と折り目正しく頭を下げている。さすがの松島も少しだけ気まずそうだ。
 中富はそっと缶コーヒーを取り戻しながら苦笑する。少しは取りなそうかと中富が口を開く前に、それまで口を噤んでいた鎌田が軽い調子で口を開いた。
「まあまあ、いいじゃねえか。松島みたいなキャラは実際貴重だ。どこにでも、誰とでもうまくやりやがるし懐に入り込むのも上手い。……そういえば、ここの署の川合先生もちょっと似た雰囲気があるなあ」
 よりによって玄田の前でその話題を出したことによってその場に緊張が走る。知ってか知らずか鎌田は言葉を続ける。
「あの癖になる似顔絵、いいよなあ」
「そうだね。検挙率も高いし、縁起物として持ってるよ」
 中富がそっと懐を押さえる。その場にいる全員が『お守り代わりにするにはソウルフル過ぎるだろう』と思ったが、一応最も階級が上の中富には誰も何も言えない。
「川合先生は根性モンだしなあ」
「ああ、いい部下だよ」
 さりげなく言葉を続けていく中富と鎌田だが、松島は何を言っていいのか分からない顔をしている。
「……川合ちゃん、いい子ですよね。一度調べの補助についてもらったことがあって、随分助けてもらいました」
 玄田はぽつりとつぶやいた
「ああいう『持っている』感じのある子はいるものですよね」
 と重ねて零し、用事を思い出したと付け加えて玄田は去っていった。
「……ふう、気まずかった……!」
 松島が青い顔をしている。川合の話題が出てからこちら、息を止めていたようだ。
「ははっ、少しは黙っている気になったか?」
「ちょ、鎌田部長もしかして……わざと……!?」
「さあ? 俺は本当に川合先生と松島は似たところがあると思ってるよ」
 どこ吹く風と言った調子で呟いた鎌田は、どこか生気を抜かれたように疲れた顔をしている松島に帰るよう促しながら中富に目配せをした。
「……これは貸し一つだと言ってもいいか?」
「……今度、缶コーヒーでも奢りますよ」
 缶コーヒーかよ、と笑いながら鎌田は去っていく。
 玄田へのフォローもしなければ……と頭痛の種が増えた中富は、松島が飲みかけて残していった缶コーヒーを飲み干すのだった。 
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ヅメSS
初公開日: 2022年01月21日
最終更新日: 2022年01月21日
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コメント
頂いたお題に沿って書きました
タコピー(しずまり)SS
タコピーのしずまりで何かしらのSSを書きます(ノープラン
rido
お題SS配信
いただいたお題でSSを書きます。
rido
ランを助けにいくルチがホールデ厶する話 ★
行方不明になったランスキーをルチアーノが助けに行って、ホームデ厶で賭けする話
のーべる