「あったけぇ〜……」
「そうだな〜……」
 間延びした声がサウスのリビングに響く。通い慣れてしまった部屋ではあるが、家主が誰一人もいない中のんびりするのも憚れたけれどオスカーが許してくれたから良いとする。本来の目的であったブラッドは別の会議があるからパトロールはなく、部屋に戻ってくるまで待っていてくれば良いとの声と共に向けられた自慢のコタツというものにも興味があった。言葉に甘えて三人がパトロールに行ってる間お邪魔した結果、抜け出せなくなっていた。
 最初は足だけ入れていたのに気がつけばキースは顔以外すっぽりと埋まっている。低いテーブルと毛布の下で丸くなっている体にぶつからないように足を曲げ暖をとっていると目の前でふよふよとミカンが浮いていた。
「あ、キースこれ勝手に取ったんじゃないか?」
「いいだろ別に。お前も共犯者になれよ」
 緑の光に包まれたそれはぽすん、と手のひらの上に納まってからキースに視線を向けると既に皮をむいて食べ始めていた。人の部屋のものを勝手に食べるのは如何なものか。我が家のようにくつろいでる姿に呆れてモノも言えなくなるが、小腹がすいてる身には丁度良くもあって。内心でブラッド、オスカー、アキラくんにウィルくんへ謝罪をして皮へと爪を立てる。今度、ピザの差し入れでも持ってこよう。
「ウエストにも置いてもらうか、コイツ」
「あはは、それだとキースリビングで寝ちゃいそう」
「ジュニアやフェイスも大人しく丸くなってそうじゃねーか?」
「二人はキースとは違ってしっかりしてるから大丈夫だよ」
「おまえなぁ……」
 じろりと向けられた視線を無視して粒を口へと運ぶ。甘酸っぱくて美味しいミカンは幾らでも食べれちゃいそうだ。指を動かすペースを緩めていると、キースは寝たままもぞもぞと動き出す。狭いスペースで動かれるとぶつかっちゃいそうなんだけどな……なんて呑気に考えていると真横から顔を出してきては毛布の中に埋まっている下半身へと腕が伸ばされる。
「ひぁっ!?ちょ、ちょっとキース……!?」
「あ〜あったけぇ……」
 腰へと回る腕にぎゅっと力が篭もる。その動きがなんだかいやらしいものに思えてきては体の内側でゾクゾクと何かが這い上がってきた。わざとなのかニヤついているキースへと鋭い視線を向けてもさっきの俺と同じように無視をしてくる。どうしよう、ここはサウスの部屋なのに。のんびりとしすぎて上手く働かない頭でぐるぐると考えていると扉が音を鳴らして開き、待っていたブラッドの姿が見えた。
「ディノ、どうしたんだ」
「ぶ、ブラッド助けてくれ〜!」
「おまっ、なんでブラッドに助け求めてんだよ!?」
「……ほう、キースはそこで何やってるんだ?」
 ぴたりと止んだキースの手の動きに安堵で身体の緊張が緩んでいくのがわかる。キースに触られるのは好きだけど、時と場所は考えてくれ。早まった心拍数を落ち着かせようと深呼吸をして、ここはサウスの部屋だから、と理性が働いたけれどウエストだとどうなるか分からない。やっぱりウエストの部屋にコタツを置くのは控えた方がいいのではないかと思う。
 それでも近付くブラッドに対して逃げるようにコタツの中へと潜り込んでいくキースの姿はなんだか猫みたいで面白い。小さな世界で生まれる攻防戦を見ながら、のんびりとコタツに入ってピザパーティをしても楽しそうだと考えながらまだ残っていたミカンを食べた。
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