「甘織少しいいかしら」
木曜日のお昼休み紗月さんに声をかけられた。
「あなたにお願いがあるのだけどいいかしら?」
「まるで十年来からの大親友のような紗月さんからのお願い!?きくきく何でもきちゃう!」
「その喋り方は余りにもう会いから消えてほしいわね」
「消失をお望み!?」
わたしはこんなにも紗月さんのことを思っているのになんてひどい。
「そのうざい考え方を続けるなら本当に消えてもらうことになるわ」
「ひぇ・・・」
親友の紗月さんのから頼られたことに対して喜んでいただけなのにあまりにもひどい仕打ちだ。
「で、お願い事って何?わたし自慢じゃないけど難しいことは何もできないよ」
「それは本当に自慢じゃなわね。でも安心していいわよ。甘織程度の人間でもできることだから」
「程度は余計だよ!!」
**
「結局わたしの家でお泊り会がしたいってことでいいんだよね?」
時刻は次の日つまりは金曜日の夕方。我が家の玄関先では小さめの旅行バッグを肩にかけた紗月さんが立っていた。
あの後、紗月さんから私の家に泊りに来たいという申し出を受けお母さんに泊めてもよいか確認を取ってみたところ、二つ返事で許可がもらえたので突発的なお泊り会が決行された。
「別にそれがお願い事ってわけじゃないのだけど、まあそういうことになるわね。」
「ん??じゃあ別の頼みごとがあるってこと?」
「そうなるわね」
「それってわたしの家じゃないとできないことなの?」
「そうね。あなたがいないとできないことよ」
どうやらわたしの家で何をしたいのかはまだ教えてくれないらしい。
ん?あれ?ちょっと待って。急すぎて実感がなかったんだけど今からわたし親友の紗月さんとお泊り会をするってこと!?
どうしよう!?すごくテンションが上がってきた!一緒に見る映画とか借りてきたほうがいいかな?それとも一緒に遊べるパーティゲームとか用意したほうがいいかな?
こんなことなら事前にしっかり準備しておくんだった・・・
「・・・急なお願いだったし別に断ってくれてもよかったのよ」
「え?いや、普通に泊って行ってくれていいよ。お母さんもお父さんも今日は家にいないし、妹も友達の家に行くって言ってたから家で騒いでも問題ないだろうし。ちょうど一人で寂しかったんだよね」
それに紗月さんなら一回泊ったことあるしわたしの家族からの信頼もあるから何ら問題はないのだ。
「そう、ならいいのだけど」
**
とりあえず紗月さんを部屋へ案内する。
「ねえ甘織。泊めてくれるお礼に今日の晩御飯私が作ってもいいかしら?」
「え?紗月さんが晩御飯作ってくれるの!?」
今日はお母さんもいないし適当にコンビニで済ませようと思ってたから何か作ってもらえるのは凄くありがたい。
「どうせあなたのことだからコンビニで済ませようとか考えていたんでしょ」
見抜かれてるし
不健康だし、お金もそれなりにするから程々にしなさいとたしなめられた。
まるでお母さんみたいなこと言うじゃん。
「晩御飯私が作ってもいいなら買い物に行くわよ甘織」
「え?今から?」
「勝手に冷蔵庫の中身は使えないでしょ」
**
紗月さんと近くのスーパーまで晩御飯の食材を買いに来た。
「それで何を買ってくの紗月さん」
「甘織は嫌いな食べ物とかある?」
「特には無いよ。大抵何でも食べれるし」
「そう、じゃあ今日は公園に生えてる雑草にしましょうか」
「そこまでなんでも食べれるわけじゃないよ!」
わたしは虫かなんかなのか?
「冗談よ。普通にオムライスにするけどいいわよね」
「うん!オムライス大好きだから問題ないよ」
わぁ紗月さんの作るオムライスってどんな感じなんだろう。
そんなことを考えてるうちに紗月さんがテキパキを必要な食材を買い物かごを入れていく。
「お金は割り勘にしましょうか」
「え、作ってもらうのに悪いよ」
「作るのは泊めてくれるお礼よ。食材の代金までせしめるつもりはないわ」
「まあ。紗月さんがそういうのならいいんだけど」
結局、食材の代金は割り勘にしたけど家まで荷物は私が持つことにした。紗月さんに作ってもらうんだしこれぐらいはしないとね。
**
家に戻ってきて、キッチンでエプロンをつけ料理をする紗月さん。トントンと包丁の音と野菜を炒める音が聞こえてくる。
こうして一緒に買い物に行って料理している紗月さんを見ているとまるで同棲しているみたいだ。まあそんなこと言ったら包丁がすっ飛んできそうなので言わないけど。
「ねえ、甘織。ずっと見られていると流石に料理しずらいのだけど」
「え?あ、そんな見てた?」
「おそらく始めるところからずっと見てたわね。」
「・・・ご、ごめん」
「別にいいけど。暇なら少し手伝う?」
「お母さんみたいなこと言うじゃん」
まあ、わたしのお母さんは全部一人でやってしまうので手伝ったことなんて一度もないんだけどね。
「というか、甘織って料理できるの?私のイメージだと卵も割れない印象なんだけど」
「わ、わたしだって料理ぐらいできますし!」
「例えば?」
「・・・・・・・・・お米ぐらい炊けますし」
「それは料理じゃないわね」
うぐ・・・
「はぁ。それじゃ一人ぐらいしたときとかに苦労するから。ケチャップライスを炒めるぐらいは手伝いなさい。」
「は、はい」
結局紗月さんと肩を並べて一緒に料理することになった。
とはいっても、材料を切ったりするのは全部紗月さんがやっちゃっててわたしはそれをフライパンでかき混ぜながら炒めていくだけっだったのだけれど。
**
紗月さんと一緒に作った晩御飯を食べ終え片付けも終わらせた後。
お風呂にお湯がたまるのを待ちながら二人でリビングのソファでゆったりしていた。
「結局紗月さんのお願いって何だったの?」
「もう一度確かめたかったのよ。」
「え?何を?」
「あなたをどう思っているのか?」
「え?何を?」
「あなたをどう思っているのか」
「そ、それは親友としてですよね・・・」
「いや、普通に恋愛対象として好きがどうかよ」
「直球ストレート!?」
どうしてまた急にそんなことを
「そ、そんなやぶへびをつつくようなことしなくてもいいんじゃないかな」
「私中途半端なことは好きじゃないのよ」
「つ、つまり?」
「私が甘織のことを好きかどうか確かめたいから協力してほしいわ。それが今回甘織の家に泊りに来た理由よ。」
「ぐ、具体的には何をするのさ」
「そうね・・・」
腕を組みながら紗月さんが考え込む。
そうしている間にピーっとお風呂が沸いた時のアラームが鳴った。
「とりあえずお風呂入った後に考えましょう」
「う、うん」
「また一緒に入るのもいいわね」
「よくないよ!」
もちろんお風呂は別々に入った。まあ紗月さんとわたしは恋人ではなく親友なので何が起こるわけでもないんだけど、何か起こったら大変だからね。
**
わたしのことを好きなのかどうか確かめたいと紗月さんは言った。
結局それってどうすればわかるんだろう・・・
わたしとしてはこれから楽しいお泊り会だと思っていたからなんかこう面食らった感じだ。
でも、まあ確かめるって言ったって多分手を握ったりとかするだけだよね。もう期間限定の恋人でもないんだからそんなに気負う必要もないか!
そう楽観的に考えているとわたしの部屋のドアが開いた。
「お風呂いただいたわ」
「うん」
お風呂から出てきた紗月さんはTシャツに短パンというラフな格好でベットに座っていたわたしのすぐ隣というか肩が触れ合いそうなぐらいの距離の位置に座った。
「ちょっと!なんでこんな近いところに座るのさ!」
「え?ダメかしら?」
「だ、ダメじゃないけど」
いや、ダメじゃ人だけどお風呂上りって体が温かいしまだ湿っている髪の毛が首筋に張り付いていたりして妙に色っぽいし、同じシャンプーとボディソープ使ってる筈なのに紗月さんはすごくいい匂いだしで・・・その、えっちじゃないですかね?
こんな状態の紗月さんが体をくっつけてすぐ隣に座るなんて意識しないほうがムリだよ!!
「はぁ・・・甘織がいやならやめるわよ」
嫌がらせをしたいわけじゃないしと少ししょんぼりとしたようにそっと離れる紗月さん。
その表情はまるで捨てられた子犬みたいで罪悪感がものすごい勢いで私をわたしをぶん殴ってきた。
「い、嫌じゃないから!紗月さんの好きにしていいよ」
そんな表情されたら邪険にできないじゃん。
「あらそう。じゃあそうするわ」
表情がすっと戻り素早く後ろ側に回り込みそのままわたしを抱きしめてきた。
「え?ちょ!?え!?」
「好きにしていいんでしょ?なら私の好きなようにするわ」
紗月さんの声がすぐ後ろから聞こえてくる。
さっきの表情は演技だったってこと!?
「だ、騙したな」
「別に騙したつもりはないわよ。思いを顔に出してただけよ」
「いつもは顔に出さないくせに!」
紗月さんから逃れようともがいているけど腕でがっちりと抑え込まれてしまい抜け出すことができない。こんなに柔らかくて細い腕なのにどこからこんな力がでてくるのだろうか。
そんなことより紗月さんが後ろから完全に密着しているので、例え紗月さんのであろうと(余りにも失礼)胸の膨らみが背中に当たっててどうすればいいのこれ!?
控えめなサイズなのにお風呂上がりで下着もつけていないから柔らかさがダイレクトに伝わってくる。
なんで自分にもついているものなのに他の人の胸ってすごく柔らかく感じるし触れちゃうとなんかこうえっちなきぶんになるんだろう・・・
「やわらかいわね」
「え!?紗月さんの胸の話!?」もしかして私の考えていたことがまたバレてた!?
「・・・・・・・・・・・・は?」
あれ?
「私はあなたのお腹周りの話をしようとしたのだけど・・・あなたね。いくら何でも欲望に忠実すぎじゃないかしら?」
「ち、違うから!紗月さんが妙に体をくっつけてくるから意識せざる終えなかったというか。つい反射で答えちゃったというか」
顔を上げると紗月さんがこの世のものとは思えないほどの軽蔑の表情でこちらを見ていた。
「まあ、仕方ないわね。あなたは相手が美人なら誰にでも手を出す欲望丸出しのスケベな女の子だものね」
「ち、違いますぅ!それは周りのみんなが悪いんですぅ!」
「自分の行いを周りの所為だと言い張るのは最高に悪性が強いわね」
「だ、だって真唯も紫陽花さんもスキンシップ多いし意識しちゃうじゃん・・・というか今のは紗月さんが好きかどうか確かめたいなんて言って軽率に抱きしめてくるからじゃん!」これは本当にわたしの所為じゃないじゃん!
後ろから急に抱きしめてくるんだよ?普通は手を繋ぐところからABCを刻んでいくものなんじゃないの?
「しょうがないわね。ならもう少し軽めにしましょうか」
そういうと紗月さんはわたしの手を握ってきた。
ふにふにと感触を確かめるように恋人つなぎをしたりと色々握り方を変えながら触ってくる。まあ、これぐらいならいいかな。
「ど、どう?好きかどうかの判断ついた?」
「よくわからないわね」
紗月さんは真剣そうにわたしの手を触り続けている。こんなことで好きかどうか判断つくのかな?でも、紗月さんが満足するまではやらせてあげよう色々今まで助けてもらっているわけだし。
「もう少し触っててもいいかしら」
「うん、気が済むまでどうぞ」
わたしがそう返事をすると紗月さんは私の手をじっと見ながらまた真剣そうに手を触りだした。
猫が頬ずりしてくるみたいに私の手を紗月さんの手が指を絡ませて擦り合う。
紗月さんのその動きに対してわたしもぎゅっと握り返すと紗月さんもぎゅっと握り返してくる。
今度は手を放して少し逃げようとしてみたら追いかけるようにわたしの手に引っ付いてきた。
お互い何も喋らないけどコミュニケーションをとってるみたいでちょっと面白い。
唐突にわたしの手のひらに紗月さんの華奢な指がつぅーっと線を書くように触れた。
「んぅ!」
「・・・どうしたの甘織」
「い、いやなんかちょっとビックリしただけ」恥ずかしいなんか変な声出ちゃった。
また紗月さんがわたしの手のひらをなぞった。
「ひゃぁ!」
「・・・・」
「って紗月さんこれ楽しんでるでしょ!」
「別に楽しんでるわけじゃないわよ」
「楽しんでるんじゃないにしてももう終わり!」
なんかこれ以上触られちゃうとなんか変な気分になっちゃいそうだし終わり終わり解散!
そう言い切ると紗月さんの手からパッと手を放す。紗月さんの手の温もりが離れてしまってなんか残念な気がしたけど気のせいだ。
**
「で、結局答えは出たの紗月さん」
「そうね、結論から言うのだけど、まだよくわかっていないわ」
まあ、そうだよね手を握ってただけなんだし・・・
「だって、手を握ってただけでしょ?」
「うん、まあそれはそうなんだけど」
となると次は何をするんだろう?
「別にキスより先のことをしようってわけじゃないわよ」
「キスはする気なの!?」
「あなた的には友達同士だったら普通にするんでしょ?」
「いや・・・それはそうかもだけど」
「まあいいわ。今日はもう遅いし寝ましょうか」
「え?あっうん寝よう寝よう!」
なんかこれ以上続けるとキス以上のことまで流れでされてしまいそうだったのでここで終わってくれるみたいでよかったぁ。
わたしはリモコンで電気を消して自分の布団に潜り込んだ。
紗月さんも私の布団に潜り込んできた。
「なんでさ!!」
「え?添い寝をすれば甘織を好きかどうかわかるかと思って」
「今日はもう寝るって言ったじゃん!」
「別に確認をやめるなんて一言も言ってないわよ」
今度はさっきとは違い前から紗月さんに抱きしめられる形になった。
背中から紗月さんの暖かさを感じていた時と違って紗月さんに包まれているみたいでなんかいい匂いもするし凄く安心する。いや、状況は全然安心できる状態じゃないんだけど。
「やっぱりあなたを好きかどうか判断ができないわ甘織」
ベットの中でわたしを抱き枕みたいに抱きながら紗月さんがつぶやく。
「も、もうこの状態で好きかどうかわからないなら普通に友人として好きなだけなんじゃないですかね!」
「でも、よくわからないけど不思議といい気分なのよね」
「いや、どっちだよ!!!」
もうさずっと引っ付いてきたり手を握ったり布団で一緒に抱き合ったり(いやらしい意味ではなく)して悪い気がしないならそれはもう好きといってもいいんじゃないかな・・・
でも、それを自分から言うのはなんか自意識過剰みたいでなんか嫌だしわたしは親友として紗月さんと接していたいので余計なことは言わない。
「でも、あなたもきれいな女性とこうやって寝れるんだから悪くはないでしょ」
「そ、それは紗月さんほどの美人と寝れるのはどちらかといえば嬉しいけども」
「じゃあいいわね、このまま寝ましょう」
「よくないよ!」
**
もう今日は後ろから抱かれたり前から抱かれたりいろいろ触ってきたりして紗月さんにやられっぱなしだ・・・
いやでも、このままじゃ終われない!
大体紗月さんだって期間限定の恋人だったときはいろいろやってくるとき赤面して恥ずかしがっていたこともあるんだしこっちから責めたら恥ずかしがるのでは?
そうだ!こっちから仕掛けてぎゃふんといわせてやろう。
よし、即座に実行に移そう。
「紗月さん!」
布団の中でわたしを抱き締めている紗月さんの腕をえいやと振りほどき体勢を入れ替え紗月さんに覆いかぶさるような体勢になる。
「ちょ、ちょっと甘織」
紗月さんが驚き紗月さんの顔が少し赤くなる。雪みたいにきれいだった白い肌が赤く染まりだす。
わたしはなにも言わず紗月さんの頬に触れる。
紗月さんの頬っぺた凄く柔らかいしすべすべしてる。触った感触が心地よくて思わずすっと指で撫でてしまう。
「・・・っん」
紗月さんの口から吐息が漏れた。
わたしは何も言わない紗月さんの夜陰のように黒い瞳を見つめるばかりだ。
近くで見てもやっぱり整った顔で美人だなって思う。その顔へと自分の顔を徐々に近づけていく。
いいのかなこんなことして。と少し疑問が浮かんだけどやめないことにした。だってやられっぱなしじゃ悔しいから。
「紗月さん」
「甘織・・・」
申し合わせたわけじゃないけど紗月さんが目を閉じてわたしはそのまま紗月さんに顔を近づけていく。
紗月さんの唇とわたしの唇が触れ合った。
別にどうってことはない友達同士のキスだから何があるわけでもない。そのはずなのに私の心臓の音はこれ以上ないほど大きく鳴り響いていて緊張で耳がキーンとなっていた。
どれぐらいの時間くっつけていたのかわからない唇を放した。これだけのことをすれば紗月さんも恥ずかしがって自分の布団で寝てくれるはずだよね。
「ねえ、甘織」
「は、はい!」
不味い紗月さん凄く怒ってそう。やりすぎちゃったかも。
「今わかったわ」
「え、何を?」
「私があなたを好きかどうか」
「え?」
あれ?
借りてきた猫のようにおとなしかった紗月さんが急に私の腕をつかみぐるんと体勢を入れ替えた。今度はわたしが紗月さんに押し倒される形になる。
「あなたが気づかせたのだから半分はあなたの責任よ、甘織」
**
朝日で目が覚める。
私の隣には一糸まとわぬ姿となってすぅすぅと寝息を立てている紗月さんがいてその隣に全裸のわたしが打ち上げられたマグロみたいに横たわっていた。
「あっれぇ???」
結局昨日はどうなったんだっけ?なんかもういろいろと凄くて白い肌と紗月さんの声が凄くかわいかったような気がしているんだけどよく覚えていない・・・
「おはよう甘織」
「お、おはようございます」
「昨日はありがとう甘織。おかげでしっかりと答えが出たわ」
「やっぱり大親友として大好きってことでいいんですよね。いやー答えが出てよかったなぁ」
「あれだけのことをしてまだわかっていないならもう一回ぐらい教え込んでおいたほうがいいわね」
「ちょ、ちょっとこんな朝っぱらから!?ステイステイ!?紗月さん待って!?わあああああ」
もう二度と自分から強気に攻めることはやめようと心に誓うれな子だった。
終わり。