この扉の前に立つと、いつも少し、いや少しどころではなく緊張する。
 バクバクと音を立てる心臓は胸を突き破ってどこかへ走り去ってしまう気がするし、腕に抱えた荷物は汗でふやけてしまいそうだ。
 それでも、この扉の前に立つ。
 震える指が、緊張で紅潮した頬が、耳の奥でざあざあと音を立てる血潮の音が、本当のことを彼に伝えてしまわないように何度も唾を飲み込んで。
 走り出すような心臓が飛んで出てしまわないように、胸の上に手を置いて深呼吸を一回、二回、それでも足りなくて三回。
 被った帽子のツバをぐいっと指で引き下げて、強く目を閉じてから顔を上げる。
 持ち上げた指がボタンを押せば、もう引き返すことはできない。
——ピンポーン……
 扉の向こうに人の動く気配を感じる。
 かちゃり、と少しだけ開いた扉から美しい青と金色が見える。
「ドヴルピアンさん、子犬のマークの宅急便です。お届け物にあがりました」
「はい、いつもご苦労様です」
 インターホンがあるのに、わざわざ扉を開けて確認をする理由。
 聞いたことはないけれど、聞く必要がないことも分かっている。
「お荷物はどちらにお運びしましょう」
「では、こちらへ」
 ふわり、と花が綻ぶような笑みが零れて、開かれた扉の中。
 荷物ごと踏み入れたその背後で、玄関の扉の鍵がかかる鈍い音が響いた。
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