再燃する記憶の回路の断章
この文章は脈略なく書かれます。またオチもありません。
*再燃
「素晴らしいわ」
老婦人は、いとおしい男の潰れた片目に口づけをした。
「光栄です、マダム」
*再燃
従順な悪魔の作り方
大きな窓のある部屋で育てる事
才能に築かせないこと
きょうだいをつくること
最初に代償が払われる。文句を言うな。
動物を飼わないこと
本を与えないこと
広間の掃除をさせること
相談しないこと ただし相手の要求はなるべく聞くこと
節約すること それこそ血を絞るように
賢く
*再燃
男はいつものように、真夜中に目が覚めた。睡眠薬がいつも途切れる。
医者は分量を増やしてくれない。ダイニングでコップに水をくむ。
そこからの記憶はいつもあいまいだ。とんぷくを飲んだような気もすれば、ただ水が減っただけのような気もする。
月もなく、陽もないこの夜、いつもと違うのは、遠い街灯に照らされて、テーブルの上に銀色に光る拳銃が置いてある事だった。
それは男の持ち物で、スライドの認識番号も記憶と正しく、まさに自分のものだという気分であって、背もたれのある椅子にもたれているここから、手を伸ばせば届く所にそれはある。
保管ケースは二階にあって、どうやって持ってきたのか覚えていない。弾を入れたか、マガジンは洗ったか、銀の拳銃に関して思い起こして、どうしてここに置いたのか思い出せない。
*再燃
半分オオカミになったバディが、タクティカルベストを着込んだまま、古い納屋の屋根に上った。どういうった丹力か、手すりに登り、窓枠から飛び上がり、崩れかけた屋根の上に立った。
バディは月光の影になり、天を仰ぎ、人狼の姿で遠吠えをあげた。人らしからぬ、良く通るやまびこのような音だった。
周囲に四本足の普通のオオカミがいるのが分かった。バディはもう一度吠え、元の人間の声でゲラゲラ笑った。半身に火傷を負って、そこから皮が生じて、やはり、彼はオオカミだった。
*再燃
近所の草むらに白い野良猫が住んでいたが、最近見かけなくなった。はて、拾われたか、つがいに誘われる時期だったか。
時々思うのだが、白い猫は、草むらで余計目立つのではなかろうか。まあ、人間はかわいい猫ちゃん(餌を食べている間は。トイレの問題に関わった人間はみな猫嫌いだ)を捕食したりはしないので、白猫が生息するんだろうな、と思ったりする。
このまま草むらで野良猫が生き続けたら、いつか緑色のフッサフサした猫に淘汰されるのだろうか。黒猫がいるのだから、緑色の色素があってもよさそうな感じがする。やけにもっさりした草があるなと思ったら、にゅっと足が生えてトコトコ歩いていく。そういう緑の猫が現れるだろうか。
*再燃
クソ寒い雪の日に迷い込んだ猫に、クソ上官は「こいつの年齢を訪ねよう」と言った。
「控えめに言ってバカですか上官。猫が分かるわけないでしょうが」
「聞いてみないと分からねえだろがよ」と、上官殿はしわくちゃなトランプをガラスのテーブルに置いた。山にしたトランプを扇に広げて、「よお、おめえはいくつなんだ」と至極真面目に猫に言った。
「分かるわけないでしょうに」
しかして猫は、右手(右足?)をすっと伸ばし、ハートの3に置いた。
「3歳か。べっぴんさんじゃねえか」
「べっぴんて……。今日び久々聞きましたよ」
猫は、左手(左足?)もすっと伸ばし、今度はハートの10に置いた。
「13歳なのでは?」もはや諦めて、遊びに付き合うことにしたので、10と3を足してそのように答えた。
「まあ30歳という事はないだろうな」
猫は、人間にはない差し手……というか尻尾を起用にくるっと回し、ぺしぺしとカードを叩いた。
それはハートの7だった。シンボルが同じなのは偶然だろうか?それともこの猫は分かっているのか?
「あ~……20歳?」
「いや137だろ! すげえな! こいつはアヌビスの化身だぜ!」
「137歳な訳ないでしょうが。あと貴殿がおっしゃりたいのは、猫の頭と人の身体を持つエジプトの神バステトで合致しておりますか?」
「猫かわいい」
聞いてない。ああ聞いてない。いつものことよ。
*再燃
欠けたものを形容する時、その周囲を表現すれば、おのずと見えることもあるだろう
*再燃
total output #5
*再燃
男は自動ロックの電子ドアの前に立ち、祈るように
「開いてくれよ」
と言った。
女は、
「私の解除ナンバーを試すわ」と言ったが、男はそれを静止した。みれば、タッチパネルには何も表示がない。数字が入力できないのなら、どれほど階級の高い番号でも意味がなかった。
男は右手の病衣をまくりあげ、一度拳を作った。まだ感覚が鈍い。それでも指は動く。
「どうするの」
「静かに」
男はタッチパネルの前に立ち、拳が見えるように手をかざした。仄かに光ったパネルは、認証待ちを表している。
「トーマスとマッシュに」
男はそう言って、指をパチンと鳴らした。名前はどちらも男の名前ではない。男の不思議な呪いにもにた認証の動作で、最後のドアロックが開いた。
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再燃する記憶の回路の断章【オチはない】
初公開日: 2021年11月11日
最終更新日: 2021年11月11日
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