書きたいところから書いて肉付けするタイプなので、行ったり来たりします。スマホだと見づらいと思います。途中でウワーッ無理!となった場合中断するし疲れたら放り出しちゃうと思います。今回カプ要素なし。
事の発端は、とある女性からの相談だった。
「母が霊媒師に入れ込んでいるんです」
ナゴヤ市街地にある天国法律相談事務所。応接室のソファに掛けた女性は、心底疲れた顔をしていた。
「霊媒師、ですか」
「はい。ほぼ毎日通って、亡くなった父と話をしに行くんです。もちろん毎回お金を払って」
獄はメモを取りながら、顎髭を指先で撫でた。
「……正直、霊媒師の能力自体の真偽は判断のしようがない。お金を使っているのは事実でしょうが、法外な値段を請求されているのでなければ詐欺ともいえない」
「私も正直、母がそれで満足しているのであれば、少し頻度を減らすように助言する程度で済みました。けれど、霊媒師に言われるがままにあれも買ってこれも買って、そりゃあひとつひとつの値段は法外でなくても、総計するととんでもない金額になるんです。詐欺ではなくても、なにかこう、民事でもなんとかなりませんか」
「……フム……」
少し考えて、メモ帳の文字の上をトントンと指先で叩いた。
刑事事件は無理だ。明らかに虚偽のことを吹き込んで不利益を被ったという証拠がない。民事でも、当の本人が入れ込んでいるという現状を考えれば現実的ではない。
「……申し訳ありませんが、ご相談の内容については弁護士の職域を出ております。法律で解決することはできない」
「そんな……」
相談者は項垂れた。言いつつも、獄は少々気の毒に思った。この相談内容では、弁護士も警察も探偵も動いてはくれないだろう。なにより被害者本人の意思で霊媒師のもとに通っているという現状が、あらゆる解決の糸口をつぶしているのだ。
「……霊媒師が偽物だという確証がおありなのですか」
「……確証、というものはありませんが……。私はもともとそういったものを信じないので、母が頻繁に通い始めたころに同席したことがあるんです。どうせ詐欺に決まっている、その場で糾弾してやろうって思っていました。そして実際は、証拠を掴ませる発言なんて何一つしないんです」
「母がいろいろと一方的に話して、そしてそれに相槌を打つだけ。父は生前から口数の多くない人でしたし、事実父と母の会話はそんな感じでした。母はそれに完全に満足して、疑うなんて考えもしないみたいでした。……結局、インチキだという決め手もありません。けれど、本物だとも思えません。どちらの確証もないんです」
獄はますます相談者が気の毒になった。これでは今後ずっと、ただの世間話をするために霊媒師に金を払うことになってしまう。
「心中お察しします。……ですがやはり、この件は私の手には余る」
「そう、です、よね……」
「ただし、インチキかどうかを判断できる者に心当たりがあります。彼は少なくとも霊媒師よりは信頼がおける。……まあ多少、ほんの少し、見た目と素行がアレですが」
「というわけだ」
「霊媒師だぁ~~?いいじゃねえか偽物でも、本人が満足してんだろ?」
「度が過ぎるってことだろ。お前も毎日毎日墓参りしてる人見たらなんか言うだろ」
「別に。故人を思うのは残された者の勝手だ。ちっと線香代と花代が大変だなァって思うくらい」
「まぁとにかく、当事者以外は迷惑被ってるってことは事実だ。信仰宗教と一緒だろ、すべてが嘘だったと知ったときに一番傷つくのも当事者なんだ」
「そんなもんかねぇ……」
「現状、霊媒師が本物なのか偽物なのかの判断がまずつかん。お前、そういうの見えんだろ」
「見えるっつーか、居るっつーか、まぁそうだな」
中略
「こちらの〇〇さんのご家族の意向で、私とこの男が同席させていただくことになりました。お邪魔はいたしませんので、どうかただの見学と思ってください。よろしいですか?」
「……構いませんよ。ご家族が同席することは多いのです。インチキだろうと疑ってね。けれど皆さん何も言わずにお帰りになるわ。あなた方もそうなるでしょう」
霊媒師は不敵に笑って、手元の長い香に火をつけた。それを香炉に静かに置いて、目元のヴェールをおろす。
「始めます」
霊媒師は静かに手を合わせ、背中を丸めて俯いた。なにかブツブツ言っている。しばらくすると体が左右に少しずつ揺れ始め、突然ガタンと立ち上がった。その場にいた者が揃って固唾を飲んで見守る中、霊媒師はそっと椅子に腰を下ろした。
「……こ、これ、霊が降りてきたとかいう、ことなのか……?」
「知らね。イタコの口寄せってやつなんだろうよ。あれは宗派違ぇから知らねえ」
小声で話しかける獄に対し、空却は心底興味なさそうに返した。宗派の違いなんて大したことじゃねえって普段から言うくせに。
霊媒師はそっとヴェールを上げた。正面に座っていた女性が「あっ」と小さく叫び、口元を押さえる。横から見ていた獄と空却にはよくわからず、少し身を乗り出す。
かと思ったら、霊媒師はゆっくりとこちらを見た。反対側の窓が逆光になって、ヴェールの紫色が透ける。
「……え?」
先に異変に気付いたのは獄だった。ほんの少し肩が強張るのを感じて、隣の空却も霊媒師に目を凝らす。
「は?」
目が金色だった。先ほど話していた時とは別人のようで、思わず空却も絶句した。
―ーいやいや待て、驚くようなことじゃない。俯いたときにカラコンを入れることくらいは可能なはずだ。落ち着け。
獄は頭を高速回転させたが、それでもこの状況に体は強張ったままだ。以前の幽霊騒動があったときも、獄は余裕綽々なふうを装ってはいたが、超常現象が平気な人間なんてそうはいない。獄は普通にこういうものが苦手なのである。
「くうこう」
鈴を転がすような声で、霊媒師が口を開いた。
「……え?」
明らかに、先ほど話していた声とは違う。だがそれどころではない。なぜ空却の名を呼んだのだ。
意味が分からず硬直するしかない獄には目もくれず、霊媒師はただ穏やかに空却を見つめていた。金色の目で、優しい女性の声。
「あなた、まぁ、そんなピアスをたくさん開けて……。今日はお勤めはどうしたの?父様を困らせてばかりいるんでしょう、まったく」
――誰だ……?
獄は、この霊媒師がいったい何を言っているのか、そしてどうして空却の方を向いて話しているのか、さっぱりわからずただ困惑するしかなかった。そして恐る恐る空却の方を見た。
空却は茫然としていた。ただ霊媒師の目を見返して、身動きもせず瞠目していた。
「お、おい。空却。どうした」
「……なんで……」
ぽつりと零れた声は、これまで聞いたことがないくらいにか細かった。横顔はみるみるうちに青褪め、空却はきつく己の腕に爪を立てていた。黒く塗られた指先が痛々しく白む。
「おい、空却!」
獄が空却の肩を掴んで揺さぶると、空却は弾かれたように獄を見て、そして真っ青な顔で立ち上がった。一歩、前によろけるように出て、二歩、気圧されたように下がった。呆気にとられて見上げている獄には目もくれず、空却はそのまま踵を返した。腰に下げた数珠がじゃらりと音を立て、そしてそのまま走って出ていってしまった。
「え?!空却?!」
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くーこーくんの誕生日小説(仮)
初公開日: 2021年08月13日
最終更新日: 2021年08月13日
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コメント
くーこー君のお誕生日小説、ネタは思い浮かんだけどマジでゼロスタートです。あんまり人いないだろうし気軽に書く。
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6月28日ジェイリドオンリー『ブレンドティーは恋の好機』の新刊になりたい話の執筆RTAです。 これよ…
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SSをぼんやり書きます。見直しは一旦度外視です。
宮古遠