暗闇とは、恐怖である。
完全な闇とは『視えない』ということ。一センチメートル先の様子すらも分からないということ。自分自身の身体すらも全く把握できないということ。
一歩先に進むことすらできない。前に手を伸ばすことすら困難。正常なテンポで呼吸を行うことすら厳しい。
『其処』に辿り着いてしまった人間にできることなど、せいぜい膝を抱えて震えることくらいだ。
小さな小さな子供だって知っている。暗闇が怖いことなんて。
だから、原初の人間は火を使った。だから、中世の人間は太陽が昇る時間しか働かなかった。だから、現代の人間は街灯というモノを各所に設置した。
暗いは、怖いだ。本当に、怖ろしくてたまらないのだ。
「……………………」
「――――――――――――」
「……、――――――」
「……、…………、……」
だから、彼女達四人は必死に息を潜め抜き足差し足忍び足でゆっくりと確実にトンネルの中を進んでいた。トンネルの中に一切の灯はない。トンネル照明は全て切れていて、オレンジ色の光はトンネルの中を照らさない。だから、今四人を包むのは完全な闇。暗黒。絶黒だけだ。
いや、『其処』にあるのが本当の意味での黒だけであったのであればまだマシだったのかもしれない。
だが違った。
それは、そこにあるのは『それ』だけではなかった。
だって、ほら。
今もまだ、聞こえている。
オト、が。
「縺ェ繧薙〒縺ォ縺偵k繧薙〒縺吶°縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺」
「縺?▲縺励g縺ォ縺?※縺ュ縺医?ゅ&縺ウ縺励>繧茨シ」
《《絵名の耳元で》》『《《何か》》』《《が何かを囁いた》》。
「ぃ―――――」
「っ!」
《《だって気づかれたら終わりだ》》。
彼女たちは、逃げている。
鬼から、鬼の住む駅から逃げている。
その場所は鬼駅。
その場所は、鬼駅。
かつてはすみという人物が迷い込んだ都市伝説上の、実在しないはずの駅。
ミステリーツアーの帰りの電車で、気づいたら彼女たちは下りていた。
鬼の住む駅。
きさらぎ駅に。