世界ってのは残酷だ。
 どうしようもないことは目の前に突然現れて、周りの人は俺を知らんぷりする。
 轟ッ!!!
 目の前で炎の嵐が吹き荒れる。
 シィィィィィィ
 雷の呼吸
 陸の型
 電轟雷轟
 四方に繰り出す斬撃。
 それは周囲の炎をえぐり取るように。
 空気を拒絶するように刀を振るう。
 そんなことできるのか?
 できるできないの話ではない。
 やれないと死ぬ。
 累(かさね)は溜めが必要であるため、即座に型を出す現状には適していない。
 それこそ、出したとしても俺の限界が早まるだけ。
「ほっほっほ、相変わらず人間には思えんのぉ」
 相変わらずも何も初対面なのにどうしてそんな昔から知っている感じなのですかぁ?!
 口には出さない。
 出す暇がない。
 後口大きく開くと喉が焼ける。
 今だって呼吸きついし。
 多分やけどしてる。
 並行して無呼吸呼吸(霊子だけ入れるやつ)やってるけど、全然うまくいかん。
 お世辞でもいいから上手く行ってくれ、マジで。
 ぶっちゃけ呼吸の霊圧上昇じゃなくて、素の身体能力でなんとかしてるまであるわ。
 後工夫。
 マント破って刀にくくりつけて振り回して回避してるし。
 効果あるかは知らないけど、やらないよりかはマシ。
 後マントがバサバサしてる関係でお爺さんを見なくて済む。
 今のお爺さんマジで怖いんだけど。
 ジジイと同レベよ?
 ほんと、訓練終盤で俺がだんだん慣れてきたときと同じくらいの本気度よ?
「まだ、生きるか」
 まだって何? まだって。
 ゴキブリかなんかだと思ってる? 人間様のこと。
 シィィィィィィィ
 雷の呼吸
 参の型
 聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)
 その足取りは流麗な水なんてものではない。
 虫のような、速く、刺すような軌道で炎の抜けを見つけ、移動していく。
 というか、なんでだろう。
 目の前でこんなにも苦しんでいるのに、なぜみんなは手を差し出してくれないんだろう。
 え、怖い。
 そんな俺の戦いハイレベルとかじゃないよね?
 多分普通に炎怖いから近づけないんだよね?
 こちとら困ってるの。
 いやもう困ってるとかのレベルじゃないけど。
 死ぬって。
 死んじゃうって。
「まるで嫌われているかのように感じてしまうの。
 少しは近寄らんか」
 やばいこのお爺さん自分の危険性を全く理解できていない系の人だ。
 どうすれば炎まみれの中で近づくの?
 その炎さ、お爺さんの周囲になればなるほど強くなるやんね。
 だから近づけば炭になるんですが。
 だからこまめに距離とってるんですけど。
 ……ん?
「それならば、ここら一体焼き払っても……」
 お爺さん物騒なこと言ってるけどさ、分かったわ。
 助けに来られないなら助けを求めれば良いんだ。
 目の前まで来て助けてください、って言われて助けない人ではないはずだ、浮竹さんは。
 足取りが軽くなる。
 先程までの終わらない戦いに終止符を撃てる可能性が出てきた。
 あわよくば戦いを変わってもらいたい。
 そう、変わってもらいたい。
 そうと決まれば、
 シィィィィィィィィ
 雷の呼吸
 壱の型
「ほう、ここで決めに来るかのぉ?」
 霹靂一閃
 お爺さんが勘違いしてくれてよかった。
 少し迎え撃とうとしてくれたおかげで、俺が振り向くのに反応が遅れている。
 目指すは浮竹さんたちの霊圧。
 何か他の霊圧も感じるが、別にそんなことはどうでもいい。
 炎の壁を無理やり突っ切り、目の前に現れたのは、壁。
 明らかに空間を遮っている壁を見つけた。
 おそらくは結界的なサムシング。
 知ったことか。
 俺に恥はない。
「ぶべっ」
 壁にぶつかろうが、
「えっ」
 どれだけ恥を晒そうが、
「た”す”け”て”!!!!!!!!!!!!!!!」
 俺は生きる。
☆☆☆☆☆
「えっ」
 七緒は思わず引いてしまった。
 それはそうだろう。
 ところどころ服を燃やしてすすだらけの顔をした高校生男子が、結界に顔を擦り付けて助けを懇願しているのだ。
 おそらく失礼に当たるとは思うが、だとしてもあまりにもこのプライドのプの字もない姿には、一歩後退りしてしまった。
「ははは」
「わ”ら”わ”な”い”で”」
 源氏は浮竹の笑いに思わず声をあげる。
 どうやら喉がやけどをしているせいで声が枯れてしまっているのだろう。
 濁声が更に情けなさに拍車を掛ける。
「まさか本当に生きているってか……結構ピンピンしているね」
「そ”ん”な”こ”と”な”い”で”す”」
 京楽の口からは驚愕の言葉が出る。
 正直、旅禍の一人にここまでの期待はしていなかった。
 殺されてしまうだろう、そんなことを考えて、それでも浮竹と自分が総隊長と対峙しなければ良い。
 そう考えて、ここで黙っているという選択肢をとった。
 だが目の前にいるのは、生きている旅禍の姿。
 それこそ、浮竹が我妻丈の弟子、といったときは少しは可能性を考えていたが、ここまで五体満足で生きているとは思えなかった。
 腕の一本や二本、失うくらいには想定はしていた。
「ほら、京楽、結界を解いてあげてくれないか?」
「いいのかい?」
「あぁ。
 ここまでやってくれたことに敬意を表して、変わるとしようじゃないか」
 浮竹は自身の斬魄刀に手を掛ける。
 少し意外だ、と京楽は感じた。
 浮竹と眼の前の旅禍にはなんら接点はないはずだ。
 それに、浮竹もおそらくは京楽と同じことを考えている、と思っていた。
 手を出さなくて済むならば、それに越したことはない。
 何かあるのか、そう思わせる行動。
「それじゃあ、僕もやりますか」
「いいのかい?」
「ははは、僕の真似か? 浮竹。
 それこそ、最初からやる気でいたよ~」
「ははは」
 浮竹が笑う。
 それこそ、京楽の嘘に気づいたから笑ったのだろう。
 結界が解ける。
 結界に張り付いていた源氏は重力に従い、地面に力なく落ちる。
 腰の斬魄刀に手を掛ける京楽。
「お主ら、手を出してよいのか?」
 そして聞こえるのは、重く、響く霊圧。
(このっ! 霊圧はっ!)
 七緒は自身の場違いを一瞬で理解する。
 この霊圧、重さ、格。
 すべてが違う。
 覚悟していたが、それを有に超える圧力。
 息が苦しい。
 まるで自分の体に重りが付いているみたいで、鈍い。
「ほれ、そこにいる副隊長と大馬鹿者の旅禍に全てをなすりつければ、今であれば引き返せるぞ?」
「数度の警告、ありがとうございます」
「だけど引き下がるわけにはいかないよ、山じい」
「教えたはずじゃ。
 正義を忽せにするものを儂は許せぬ、と」
 そんな中、炎を纏った鬼は、こちらに近づいてくる。
 無理だ。
 そんな感情が七緒の心を支配する。
「でも、その前に」
 京楽が後ろを振り向き、元柳斎から七緒を守るように立つ。
「大丈夫」
 次の瞬間、二人の姿は消えた。
(え、逃げた?)
 源氏はこころの中で最大限の失礼を働く。
 そして数秒とせずに京楽は再び同じところに姿を表す。
「ほう、一瞬で遠くまで行けるように成ったの」
「ありがとうございます」
 傍らに七緒の姿が無いのを見るに、京楽は自身の瞬歩で七緒を逃したことが容易に理解できる。
 それこそ、隊長だからこそできる技。
 それを理解した源氏は。
「え” お”れ”も”」
「あ」
 思わず自分も志願した。
 倒れた状態で京楽を見上げて話しているため、見下ろした京楽もやべ、という顔で源氏を見る。
「ま、まぁ彼はまだ戦えるようだし、協力してもらおうじゃないか」
「え”」
「そ、そうだね。
 彼にも働いてもらわないと」
「な”ん”で”」
 働いてもらうのだとすればすでに働いただろう。
 そう思ってしまう源氏であった。
「良い。
 どちらにしても、その小僧は叩き潰してやらないとのぉ」
 気迫。
 もし、この場に七緒が居たとすれば、意識を手放すのは想像に難くないほどの気迫に、源氏は。
「え”ぇ”……」
 温く(ぬるく)返す。
 それに、京楽と浮竹は少し驚く。
 これほどまでのプレッシャーを向けられてなお、倒れたままでいるその神経に。
「よ”っ”こ”ら”」
 枯れた声で緩やかに立ち上がる源氏。
 その姿はまるで強者を彷彿とさせる。
 が、
(これでなんとかなる。
 さっきの数倍はマシになった。
 というよりこの状況で逃げても良い?
 よくね? 女の子逃してたし。
 今行くか?
 それともある程度頑張りを見せてからのほうが……)
 内心ではこんな情けないことを考えている源氏には、そんな気迫は関係ない。
 気迫は先程から受けているし、死ぬかもしれないと分かれば自分の体が反応してくれる。
 それより頭にあるのは、自分の生存と時間稼ぎの件。
 生き残るのは、多分人が増えたからなんとかなりそう。
 もしどうにもならなかったら全力で逃げる。
 それだけ。
 しかし時間稼ぎの話だ。
 これが加わることで話が変わってくる。
 目下一番の問題は、どんくらい時間稼ぎするのかが分からない、という点。
 聞いときゃよかった、と源氏は心のなかで愚痴る。
「ほっほっほ、隊長二人に、羽虫が一匹かの」
 元柳斎は、笑う。
 その笑いは、親が子を見守る様。
 そして変わる。
「足りんのぉ」
 鬼の姿へ。
「さぁ、ひと頑張りしますか」
 京楽の言葉に、誰も言葉は返さない。
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BLEACH鬼滅二次創作 73話【連載】
初公開日: 2021年07月01日
最終更新日: 2021年07月03日
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コメント
BLEACH鬼滅の二次創作を書きます。
73話です。
本作、というかどの作でも割と気をつけているのですが、ご都合主義どうしよう、って言うのは悩みだったりします。
都合の良い展開ってある一定程度で飽きられる傾向にあるんですけど、それをここではどうしよう、ご都合に見えないようにするためには……とか考えることがあります。
前回のテキストライブ→https://txtlive.net/lr/1624969311407
次回のテキストライブ→https://txtlive.net/lr/1625296700244
作品URL→https://syosetu.org/novel/245544/
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