ファイナリアクロニクル ミラーリングデイズ
とりあえず書いてみた初稿
一話 先輩ジャーナリストの歓迎レポート
2-1 「事実を知らせる記者(仮」
ここまでのお話
エリシオの異動の打診を断る
父親から婚約破棄の話をきく
相手の家に取材にいく
気持ち新たにして、エリシオ受け入れへ
ここからのお話~ファイナリアクロニクル(以下FC)と共通話
だいたい6000字くらいか・・・8000から10,000いきそう。
概略 エリシオがやってきて、そうこうしているうちにエルは自分自身がエリシオと違って、事実を知らせる記者なんだと自覚する。
2-1
エリシオが競馬班にやってくる
エリシオがいきなり寝てる間に仕事終わらす
2-2
一緒に飯を食いに行くとオリバー現る
オリバーと絡めてエリシオのやったことを把握する
2-3
夜道でここまでのことを話すエル
謎の暴漢に襲われる
ミストとフィンに助けてもらう
2-4
深夜の大立ち回りとして記事にする
~~~~~
2-1
・展開メモ
エリシオが競馬班にやってくる →これまでのまとめ
エリシオがいきなり寝てる間に仕事終わらす →エリシオのキャラ紹介とエルの決意表明
・登場キャラクター
エル、エリシオ、先輩?
・舞台
会社(競馬班事務所
ーーーー本文ーーーー
『あなたに「いま」をお届けする――帝国ラジオ放送です、こんにちは』
定刻から始まったラジオ放送に耳を傾けているのは、留守番のエルだ。
現地取材班と留守番組と別れて、レース当日を迎えるのだが、残念ながら、エルは今日は留守番当番だった。いつもの鳥打帽をかぶり、落ち着かないそぶりで自身の書いた記事と出馬表を見比べる。
今回は大好きな逃げ馬を指名せず、後方待機からの最後の直線で一気に差してくる馬を指名したのだ。
いつもだったら、と考えるのはやめた。
今日は特別な日だ。
メインレースで逃げ馬を指名しない。その理由は……もはや語るまいと目をつぶる。
特別な理由はもう一つある。
それは、幼馴染で同居人だったエリシオの赴任だ。
世間的には左遷ともいう。
この二つが重なり、特別な日のよろしくない精神状態をつくりだした。
そして、レースが始めるというのに、エリシオは到着しないのだ。
「もう、教えることはいっぱいあるのに」
すでに先輩のつもりで、悪態をつく。
『さあ、レース開始です。先頭を走るのは……』
予想通りの展開になった。逃げるべき馬が逃げて、控えるべき馬が後方待機。
しかし、今の芝生の状態、出走馬の先行税のすくなさを考えると逃げ切りも十分にありえる。
後方からで届くのか。
いつまで後方にいるんだ。
あっという間に4コーナーを回った。
『さあ、直線に入って、先頭は……』
まだ逃げ馬がリードしていた。
ぎりっと歯を食いしばって、ひいきの差し馬の名前が実況されるのを待つ。
『馬群の中から飛び出して来るのは……』
エルの顔がぱあっと明るくなった。思わず拍手してしまう。
「差せ差せ差せ差せ!」
自然と声が出た。
ゆらっと人影がみえたのはきっと気のせいだ。
『先頭が入れ替わる! ゴールまであとわずか』
「よし、そのまま、そのまま!!」
いける、と馬券をぎゅっと握りしめた。
『大外からもう一頭すごい脚で来る馬がいます!』
えっ!っと思わずのけぞる。
「うそうそうそ、待って!!」
『一気にゴボウ抜きだ! ゴールを先頭で駆け抜けました!』
「2着ーーー! ウソでしょーーー」
えーーー! っと、ラジオの箱をばんばんと叩く。
「負けたの?」
よく知った穏やかな声がエルの耳に飛び込んできた。
はっと冷静になり、咳払いをする。
「これだから差し馬は嫌い。勝ったと思ってもまだ後ろにいるんだもん」
「やっぱり負けたの?」
「2着じゃだめなの。わたしは頭から買う主義だから、本命が2着なら負け。この話、しなかったっけ」
未練がましく、エルはラジオに耳を近づけるが、結果は変わらない。事実を淡々と実況するアナウンサーの声が残酷に響く。
そして、改めて、エリシオの顔を見上げる。
彼は背が高いため、どうしてもエルからだと見上げるようになってしまう。
自信なさそうな瞳と前髪の手入れが適当な金髪。整っている顔立ちなのだから、もう少し手を入れれば、といつも思うが、それは口に出さないことにしている。
「久しぶり、フロー……」
「その名前で呼ばないで」
スイッチが入るように瞬間的に咎める。
「わかってていってるでしょ。今の私は競馬記者のエル=プリメロよ。ようこそ、文化娯楽部の競馬班へ」
手を差し伸べると、軽く握手を返してくれる。
照れているのか、すぐ目をそらして、手もひっこめた。
照れる間柄でもないというのに。
「そこ、座ってて。今のレースの記事書かないといけないから」
あの、適当な応接ソファを指で指示して促す。
見届けながら、椅子をくるりと回してシャツの腕をまくって、タイプライターに向き直る。
その前に見出しを考えるために、思いつく単語を指折り数える。
「すぐに記事の見出しを思いつくなんてさすがだね」
まるで同業者のひやかしかヤジか。そんなつもりはないだろうが。
「静かにしてて、気が散る」
そう言い放つと、エリシオはソファに腰を落ち着かせていた。
タイプライターの打鍵音が静かな部屋によく響いた。
デスクも先輩も帰ってこないうちに書き上げてしまおう。
このレース、いつもよりも気合が入る。
なにしろ、逃げ馬を応援しないレースなのだから。
新しい視点で、新しい気持ちで、事実を紡ぐ。
わたしは事実を知らせる記者だ。
どんなに気持ちが入っても、あったことを冷静に、わかりやすく読者に伝えなければならない。
貴族の娘の道楽でもなければ、コネ入社した結婚までの腰掛でもない。
わけわからんことして追い出された、幼馴染の面倒をみれる、一人の先輩記者なのだからと言い聞かせて。
7/1
2-2
・展開メモ
エルがエリシオをつれてパブへ
貴族の娘なのに酒飲んでサイコーとか言っちゃう
常連のおっちゃんがからんでくる→エルの読者→そういう世界に身を置いている
エリシオのプチ嫉妬
エルがエリシオの左遷の話を切り出す→理解者アピール
広報官オリバー登場→エルとエリシオの同期アピール
フローラの名前で婚約破棄の話を持ち出す→さっさと切り上げる
エリシオがやらかした話への聞き取りに来たオリバー
エリシオを顛末を話す、いつもの陰謀論
意外と真面目に聞いて、すぐに帰るオリバー→思わせぶり
エルに気が合ってきたというエリシオ、エリシオ炎上の火消しのためというエル
・登場キャラクター
エル、エリシオ、オリバー
・舞台
パブ(大衆酒場
ーーーー本文ーーーー
先輩らしく、初日の夕飯をおごってあげると言い出したエルだったが、店のチョイスに連れてこられた後輩は気に入らないようだった。
喧噪やかましく、酒と煙草の臭いがたちこめる。
汗かきの中年男性のたまり場のような大衆酒場。
そんな男相手に露出の高いいろっぽいワンピースの女の姿もある。
その内の何人かは手に新聞をつかんでいた。
一人で壁に向かって煙草をふかしながら、読みふける男もいた。
久しぶりにエルはエリシオの顔を見上げた。
痩せてはいるが、高身長のエリシオの顔を見ようとするとどうしても見上げるかたちになってしまう。
エルの背の低さに原因があるが、今日は厚底やヒールを履いてきていないからだと言い訳したい。
テーブルの上に用意された樽ジョッキに目を移す。
「おつかれー」
エリシオとはいうと、周りを見渡してそわそわし、落ち着かない様子だ。
こういった場に慣れてないのが目に見えてわかる。
政治部の取材でだって、こういう場に身を置くだろうに。
「洒落たバーかなと思ったけど」
エルは首を横に振る。
「わたしの読者層はこっちの世界だから」
エルがしゃべり終わらないうちにどこかの中年男性が奇声が聞こえて、エリシオは難しい顔をする。
エルは当たり前のように笑顔でビールジョッキをあおる。
またエル自身も日雇い労働者のような格子柄の鳥打帽をかぶっていた。
「仕事明けのお酒は最高~」
白いブラウスに短パン姿で、短い脚ながらも生足を晒してふとももを組んで樽の椅子に腰かける。
親指を立て、上機嫌ぶりをアピールする。
一方のエリシオは表情が冴えない。
「よお、嬢ちゃん、レース回顧読んだよ!」
顔なじみの中年男性がテーブルに割り込んできた。筋肉質な方で客の波を割ってくる。
かすれた声でボリュームも大きく、迫力がある。
ヒゲで半分以上の顔が隠されているが、たくましさはよくわかる。
「俺、あのレースで負けたんだけど、何度も読んじまった」
本物の読者の声、だ。ふむふむと熱心に相槌をうつ。
途中で、とある事実に気づいてエリシオにささやく。
「おっちゃん、字読めたっけ……」
やかましい喧噪の中でおっちゃんには聞こえていない。酒の勢いもあって、記事の感想を述べていた。
「次は勝ったレースで読みてえな、また書いてくれよ」
「いつもありがと。たまにはわたしの予想にのっかってみれば?」
「ハッハッハ、冗談はやめてくれ、予想は俺の方がうまい」
「これでも丁寧な取材に基づいた分析予想を心がけていますけど」
「新聞はそれでいいんだよ、おかげで逆張りができる」
軽口をたたきながら、エリシオをほったらかして交流していた。
エリシオはむすっと押し黙って、水をあおる。
「おっちゃん、ごめん。今日はうちの新入りつれてきたんだ、ちょっと話したいからまた今度ね」
断りをいれると、おっちゃんはエリシオの肩をばんばんと叩いた。力が強く、逆にエリシオも体幹弱く、すぐによろめく。
「あんちゃん、線細いな! メシ食ってんのか。取材も体力いるだろ、こうみえて嬢ちゃんは頑張り屋だから支えてやれよ」
エルはおっちゃんの言葉に少し驚いた。←なにか違う表現で
しかし、前言撤回したくなるようにおっちゃんはエルに聞こえないようなひそひそ話をエリシオにする。
「あー、わたしの悪口言ってるでしょー」
エリシオは苦笑しながら手を振っている。
おっちゃんは豪快に笑いながらテーブルを離れていった。
ふうと、お互いに一息。
「あのおっちゃん、ほんとは読み書き出来ないはず。仲間に読んでもらって、わたしの前ではいかにも俺は愛読者みたいな顔するんだよね。わたしの読者はそういう人が多いよ。だから難しい表現は避けて誰でも知っている言葉で書かなきゃいけないっていう制約がある。でも競馬だから専門用語も多い。それでも楽しみに待ってる人がいるから、がんばらないいとって思うの。仕事としては政治部とはまたちょっと違う難しさがあるんじゃないかな」
急に仕事モードのぱりっとした顔でつまみの乾燥パスタをぽりぽりとかじりながら、エルは切り出す。
「……話は聞いたよ。政治部、追い出されたんだって?」
いきなり核心に触れる。話たい話題は他にもあるが、まずは先輩としてこれからだ。
「でも、それはエリシオのためだと思うよ」
まっすぐにエリシオを見て、エルは自分の想いを伝えたつもりだった。
「エルまで僕が嘘つきだと言うのか?」
嘘つき。
エルが嫌いなものの一つではあるが、エリシオはそれを言われる。
「はあ、変わらないね、あんたも。わたしは嘘が嫌いって知ってるでしょ。あんたが大噓つきなら、こんなところで一緒にいないから。昔から言ってるけど、エリシオは話を深堀しすぎて嘘っぽくなる傾向がある。気持ちが入り込んじゃうのはわかるんだけどね。そういう癖があるとは思うけど、それはそれとして、今回の件は罰で左遷だと考えない方がいいよ」
励ましているつもりだが、自分で言って、罰で左遷は間違ってないかもしれないと頭を抱えた。
「真実はいつも嘘みたいな話なんだ」
エリシオが逆に拳を握って、興奮気味に話す。
「エリシオ、落ち着いて」
トーンを落とした声で注意を促すとともに、違う意味の注意を顎をつかって表現した。
店のエントランス。
肩に房飾りのついた軍服姿の男が二人。店の扉をあけて、背筋を伸ばしてやってくる人物にむかって敬礼している。
その敬礼に応える返礼をして店に立ち入る若い金髪の男。
その様子をつぶさに観察しているエリシオの姿と思わず見比べながら、エルは苦虫を潰したような顔でエリシオに断りをいれる。
「あれ、オリバーでしょ。わたしは呼んでないからね」
腕を組んで思わず目つきも悪くなって、不満をあらわにする。
ぱりぽりと食べていた乾燥パスタを慌てて酒で流し込む。
やがて、軍服姿の身なりのいい金髪の青年はエルの姿に気づき、まっすぐにやってきた。微笑を携えて。
「やだ、オリバーじゃない。久しぶり!」
さっきまで舌打ちしていたとは思えないほど、明るく声をかける。
「やあ、フローラ。それに見習い記者のエリシオくん」
嫌味を含んだ言い方をして、オリバーはエリシオの肩をたたく。
エルはフローラと呼ばれた瞬間から、笑顔が消えた。真顔で酒を飲む。
二人でなにやら話しているが、どうせオリバーがマウントをとろうとしているだけだろう。
「エリシオ、君は何を知っている。皇太子殿下にあんな口を聞いた以上はネタがあるんだろうな。ああ、酒はグラスでいい、まだ勤務がある。すぐに出ていくよ」
エリシオを問いただしながら、通りがかったエプロン姿の若い売り子の女の子に注文する。
「わざわざそんな話を聞きに? それに、よくこの店わかったね」
どうせこんな店には知り合いはこないだろうと踏んだのだが。
その選択がよろしくなかったと失敗の腹いせに二杯目をあおる。
「社では一通りの話が済んだ。エリシオから直接話が聞きたいと思ってね」
いきつけを聞いたらここだと教えられという。
「それにフローラに謝らなければいけないことがある」
頬杖をつき、エルはほのかに赤く染まった頬を膨らます。
「いいよ、その話は。あのオヤジ、あたしの居場所を点数稼ぎにしたわね」
オヤジという言葉にエリシオは誰だかわかったようだ。
「まずはフローラ。すまなかった」
オリバーは脱帽し、頭を下げる。
いきなりの行為にエルは目を丸くした。それでも頬杖をついてそっぽを向く。
「……だから、その話はいいって」
エリシオは話がみえないらしく、頭にクエスチョンがついているようだった。
「なにがあった聞いていいかな」
自信なさげにエリシオが説明を求めるが、エルは露骨に表情をゆがめる。
代わりにオリバーが説明しようと口をあけたとき、エルは魚のフライをつっこんだ。
彼はむぐっと一瞬固まるが、冷静にもぐもぐと咀嚼し、手にしたグラスをあおる。
ふー、と息をつき、なぜか気持ち悪いほど笑顔だ。
「懐かしいよ、この感じ。学生時代を思い出す」
ハンカチで口元を拭きながら、オリバーはつぶやく。
「わたし、学生時代もエルの名前つかってたんだけど、忘れたかな。優等生のオリバーくん」
「ああ、そうだったね。フローラ」
がくっとエルの頬杖が崩れる。
「うちの居候が粗相したってきいたけど、文句があるならわたしがきく」
不機嫌さが増して、ついにケンカを売るように啖呵を切る。
「違うんだ。情報を持っているなら教えてほしいというだけだ。どうなんだ、エリシオ。同窓のよしみで教えてほしい」
エリシオはオリバーに向き直る。
エルとしては何があったか知らないが、オリバーが皇太子付きの広報官に出世したのはしっている。
わざわざここまでやってくるとはそうとう妙なことをエリシオが言ったのだろう。
エリシオは持論を聞いてもらえてうれしいのか、にやっと笑い、胸をおさえて語りだす。
「まずは鉄道強盗事件だ」
エリシオが語るには、新聞のベタ記事になるような小被害の鉄道強盗事件がきっかけだという。
汽車による貨物輸送は帝国陸運が仕切っている。だが、その組織は巨大すぎて末端までいくと、町の労働者と大差ない。貨物鉄道が原野で強盗に襲われ、荷物を奪われることはしばしばあるが、最近では汽車の性能が上がり、馬に拳銃程度では汽車はびくともしないし、乗り移れるほど遅い乗り物ではない。逆にとんでもない加速にはじきとばされるのがオチだ。さらに運ぶ貨物自体が多すぎるのも泥棒からすればでかすぎる獲物となって、鉄道強盗は下火となっていた。
だが、そこに目を付けた連中がいたとエリシオは力説する。
まずは線路上に倒木を置いて、鉄道を停めたのちに、狙いの貨物を奪う。
この事件のポイントは奪われたものが金塊であるとエリシオは目を輝かせて言う。
そんな大層なものを運ぶなら狙われるに決まっているから、穀物を運ぶ列車と書類上は偽装されていた。
強盗団はそれを奪っていった。唯一抵抗した男性一人が死亡。あとは軽傷。
書類上は穀物となっているから、報道は芋泥棒と笑って終わりだった。
真相は、違うとエリシオは得意げだ。
「これは政府の裏金を、没落貴族とレジスタンスが奪った事件なんだ」
この金塊を資金源にレジスタンスは勢力を拡大する。
仕切っていたはずの没落貴族は利用されただけだ。
表沙汰にしたものなら本当の意味で首が飛び、泣き寝入り。事件は表には出ない。
エリシオの話は長く、そこからの経緯が延々と続いたが、エルは一言で省略した。
「ようするに、そのレジスタンスたちが帝都で暗躍するんじゃないかって話?」
にわかに信じられない話だが、どんな反応をしたらよいか。
反応に迷っていると、向かいに座る皇太子付きの広報官、学生時代から秀才とうたわれたオリバーが眉間にしわをよせ、腕を組み、厳しい顔をしている。切れ長の目がクールと評判でそれこそ目鼻かたち整って美形とも評判で、その美形の顔が台無しだ。
オリバーのこの反応からすると、あながちウソではないとエルは読んだ。
思わず生唾を飲み込んでしまった。エリシオの妄想が現実に近い話だとあまり思いたくない。
「この話に証言者はいるのか」
オリバーが冷静に質問する。
「ああいる。鉄道強盗事件の被害者の息子だ……その計画に……反対……」
「反対?」
だんだんとエリシオとオリバーとの話になってしまった。
今回はオリバーが本気で付き合ってくれているからエリシオも楽しいだろうと、エルはそのやり取りを見て微笑みすら浮かべた。
おおかた、この話を政治部の編集長にぶちまけて、いや、オリバーが出てきてるところをみると、皇太子殿下に失礼なことを言ったに違いない。
命知らずも大概だが、エリシオらしいとも思う。
乾燥パスタをまたつまみ出し、一人でちびちびとビールのおかわりをいただく。
政治部では扱いきれないのもわかる話だが、もしかすると、と別の意味がひらめいた。
「ほう……面白いな。殿下の耳にいれておくかはともかく」
「オリバーは妄想とは言わないんだね」
「妄想……?」
オリバーは怪しく笑う。
「真実は案外妄想みたいなものだ。覚えておくんだな、居候くん。さてそろそろ次の予定に向かうか。邪魔したな」
いつの間にか運ばれていたグラスを飲み干し、彼は同じ金髪頭のエリシオに紙幣を握らせていた。
お代にしては多すぎる。
「高給取りは違うねえ」
と思わずエルがつぶやくも二人はまるで聞いてない。
オリバーはおつきの兵隊を引き連れて店を出ていくのを軽く手を振って見送ると、エルの手振りには珍しく笑顔を見せた。彼が出ていったあとはいつもの店の喧噪が響いた。
「あーあ、興が削がれちゃったな」
エルはため息一つ。
ふふっとエリシオはわらう。
「オリバーはエルに会いたくてここまで来たんじゃないかな」
はあーとエル呆れるようにのけぞるもまたため息をつく。
「それは妄想だよ、居候くん。どう考えても君のやったことの火消しにまわってるんじゃない」
なにをやったのかは知らないけど。
「エリシオの話をまともに受けられるのはきっと、わたしたちだけだと思うよ」
どこまでが本当なのかはわからないけれど、彼の話をもうちょっと聞いてあげよう。
今夜はなんだか優しくなれる気がした。
いったん休憩