ファイナリアクロニクル ミラーリングデイズ
冒頭書き出し案
一話 先輩ジャーナリストの歓迎レポート
4部構成 1-1
ーーーメモーーーー
ファーストシーン
新聞記者エルが原稿を書いているところに上司(名前未定)がやってきて、
エリシオの異動の話を持ち出す。エルが断るところ。
舞台:会社
タイプライターで記事を作成している女性新聞記者エル。
夢中でキーを押している。
声をかける気の弱そうな上司。
書き上げるエル。
上司がエリシオの話を持ち出す
断るエル。
先輩が登場、エルを諭そうとする
先輩を軽くいなすエル
ーーー本文ーーーー
ミラーリングデイズ
一章 先輩ジャーナリストの歓迎レポート
一話 新人競馬記者エル
『新人競馬記者エルの”わたしのイチオシ”』
タイプライターのキーを流れるように叩き、割り当てられたコラムのタイトルをうちこむ。
『追い切りで抜群の動きをみせた陽向(ひなた)は今レースでは先行逃げ切りで十分押し切れる力がある』
取材で得た情報と推しの馬の特徴を端的に文章に起こし、予想をつくる。
その名の通り、まだ新人というレッテルから抜け出せない若き女性記者エル=プリメロはその小さな手で激しくキーをたたく。
『対抗は……』
手が止まる。
目の前にぬうっと現れたのは、エルの上司だ。デスクと呼んでいる。
「なんですか、今、いいところなんです」
新人の若い娘らしからぬ、強気に反発する。
「エル君、ちょっと話があってね」
「今、忙しいんですけど」
記事の続きの文章がうまく決まらず、キーをうてずにエルは机をトントンと指でたたいた。
「エリシオ君の件だ」
幼馴染で実家に居候している青年の名を出されて、エルはかぶっていた鳥打帽をとって、デスクの顔を見た。
やせこけた中年の男性だ。冴えない、という言葉がよく似合う。
「エリシオがどうしたんです?」
「政治部から、うちに異動の打診があった」
エルはぶっと噴き出した。
「……っ、それって、厄介払いですか」
いやわからないが、とデスクは言葉を濁すが、当人をよく知るエルからしたら、この推測は高い確率で当たる。
「私は嫌ですよ。っていうか私だって、まだ新人ですよ」
新人らしくない態度で、視線をタイプライターに戻し、またカタカタとキーを打ちまくる。
やがてピリオドをうつと、乱雑に原稿を切り離し、そのまま横でつったっているデスクに手渡した。
「チェックお願いします」
立ち上がっても背の低いエルは見上げるようにデスクと対峙する。
彼は原稿をうけとりながらおろおろとするばかりだ。
「例のオーナー特集の取材行ってきます」
エルが先手必勝とばかりに宣言して、カバンにペンと手帳をしまう。
「待ちなよ」
声をかけてきたのはデスクではなかった。
髭をはやした40才前の男性。
「俺も行く」
「先輩」
エルの表情が少し明るくなったが、すぐに訝しげに口元をゆがめる。
「私と一緒だと奥さんに怒られるーって言ってませんでしたか」
「ああ、言った。若い女と二人で外をほっつき歩くのはどういうことだってな。でもな、そういったって、これも仕事なんだよ。まだお前だって新人だろ? そりゃあ、先輩としては」
と言いながら、肩に手を置いてくる。
無表情にその手を振り払って、エルはこんどはデスクに向き直る。
「デスク、聞きました? 私はまだ独り立ちできない新人なんです。だから新人が新人をかかえるなんてできませんよ」
「だれがエルの下につけるって」
「厄介者だから、どうせ一緒に育ったエルに任せておけばうまく扱ってくれるだろう、とかそういう話じゃないんです?」
デスクは苦笑したが答えなかった。
「ですよね、きっと。だったら、私はお断りします」
そう、宣言して、取材~と鼻歌うたいながら、第三帝国新聞社文化娯楽部競馬班の仕事部屋を出ようとした時だった。
がらっと空いたドアに初老の紳士が立っていた。
「やあ」
その顔を見て、エルは思わず頭を抱えた。
「うそでしょ」
まさかの訪問者だった。
「なんでここにいるの……お父様」
後ろでデスクと先輩が、ブランドフォード卿と裏声あげて、頭をさげているのが見なくてもわかった。
ーーーメモーーーー
1-2
ブランドフォード卿(エルの父)がやってきてエルに婚約破棄の話をして、
いろいろドタバタあって婚約相手の家に取材という名目で凸するがスルーされて泣ける
舞台:①会社→②婚約相手の家(リボー家;仮)
登場人物:①②エル、①父、①②先輩、①デスク、②婚約相手、②婚約相手の父
ーーー本文ーーーー
「ブランドフォード卿、いらっしゃるなら言っていただければ……社長に御用でしょうか」
シルクハットにタキシードのエルの父に、デスクが頭を下げて御用伺いをする。
エルは面白くない。
娘の職場に父親が顔出すとはまるで学校だ。
「何しに来たの」
上司よりも雑に父の予定を伺う。
「社長にちょっと急な話があってね、近くまで来たから寄ったんだよ。それにエル、君にも話があるんだ」
話があると言われて、デスクの顔を覗き込むとうんうんとうなずいている。
仕事中でも許可するということだろう。
ため息交じりに父を応接に案内する。
が、応接も何も衝立一枚で仕切られたソファーとテーブルセット。
父は首を振る。
「廊下でもいいかな」
新聞社なのにここの廊下は静かと評判なのをなぜ知っているのか、とエルは思い立ったが、よく考えれば社長と古いお友達なのだから、さもありなんということだろう。
「それで、話ってなに」
エルは廊下に出て扉を閉めるなり、声色低く尋ねた。
「フローラ=ブランドフォードとして、重要な話だ」
父も真面目な声色を使う。
そして、エルの本名を持ち出した。
「それだったら家帰ってから聞くけど?」
「そういって、帰らないじゃないか。アパート暮らしが板についたってきいているぞ」
ちっと舌打ちする。
「フローラ。心して聞いてほしい」
会話に溜めをつくってきた父の表現に思わず顔をあげて、目を合わせた。
「婚約が破棄された」
「……へ?」
「許嫁だったリボー家との婚約だ」
「あ、ああ。あれのこと……破棄? なんで?」
「詳しくはこの場では言えないが、政治的な理由だ」
「そっか。ダメか……」
別に愛し合っているというわけでもないから、それほどでもないとエルは口にしようと思ったが、言葉が出てこなかった。
「今の仕事やってていいよっていってたんだけどなあ……」
気落ちするまいと天を仰ぎ、やがてうつむく。
「そういうわけで、たまにはうちに帰っておいで」
「この話、うちで話した?」
「いやまだだよ」
「当分言わないでいいから」
「ああ、そうするよ」
「特に」
「エリシオ君かな」
むっつりと黙る。
「君の口から伝えたまえ」
はいはいと適当に流す。
「要件はそれだけ?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ早く社長のところへ行ってくれば、場所はわかるでしょ」
「ああ、そうするよ」
ステッキをふって、父は去っていった。
ふーっ、と息を吐いて、冷静になろうと努める。
それほど好きな相手でもなかったし、これで好きな仕事にうちこめるし、状況的にはいいことのはずだった。
それでも、感情の波はおさまらない。
事務所の扉を勢いよく開けると、すぐそばにデスクと先輩がいた。
そわそわして、慌てて書類の整理をはじめたりして、挙動不審だった。
「……聞いてましたね?」
「え、いや、なんのことかね……お父上は帰られただろうか」
隠しきれない額の汗を拭いているデスクの目は泳いでいた。
「エル、取材いけるか? それとも今日は帰るか?」
先輩がどや顔で声をかけてきた。
「やっぱり、聞いてたんじゃないですか。オーナー取材ですか? わたし行きますよ。こうなりゃ仕事します」
そういって、リストを見た直後、音もなく、涙が頬を伝った。
そのリストの中に、クロムウェル=リボーの名があったからだ。
クロムウェル=リボーは婚約者の父の名だ。
エルの父とは旧友にあたる。昔々、しょうもない話の流れで子どもたちの婚約を決めてしまったらしいと聞いている。
「先輩、わたし、あの人、苦手なんです」
婚約破棄の話を通してきたのは当たり前のように、クロムウェル=リボーだ。
といいつつ、結局は先輩を盾にリボー家の屋敷まで来てしまった。
複数の庭師によって手入れされているローズガーデンで二人は待たされた。
「あのオジサン、女の人が働くことをすごい嫌がるんです。女は長い髪で家を守れとかっていうタイプです」
「古いタイプのおじさんだな、俺は家事もやるぜ」
そういう話はいいです、とエルは小声で続ける。
「だから、わたしは髪を切ってからはあってません。わたしが髪をきったこと、知らないと思います。だから顔、わからないと思う。でも……」
「ああ、わかったよ、みなまでいうな。俺が先頭立ってやるから、助手ってことにしとく」
「ありがとうございます」
ひそひそ声で打ち合わせている間に初老の男の豪快な笑い声が聞こえてきた。
手練れな庭師に庭の状態を案内されて、ご機嫌なようだ。
先輩が頭を下げて、ようやく気付いたようすだ。
クロムウェルの隣に気の弱そうな、しかし、ハンサムな青年が感情なく佇んでいた。
エルは必要以上に頭を下げて、表情を隠した。
「おお、新聞屋か。わしの馬のことを取材しにきたんだったな」
「この度はご機会をいただき、ありがとうございます。わが社の誉れと存じます」
「よいよい、わしは競馬が好きでなあ……ん、後ろにいるのは新人かね、女か少年か」
「閣下にお話を拝聴できる良い機会と思いまして、新人教育も兼ねて・・・・・」
先輩が適当に話を合わせる。この人の得意技だ。
「そうかそうか。女の記者に競馬がわかるかどうかいささか疑問だが、まあ今日は機嫌がよい。なにせ息子は出世するわ、良い縁談があるわで我が家は安泰だわ、はっはっは」
「閣下、そのようなお話、わたくしどもはこれでも新聞記者。なにを書くかわかりませんよ」
「ほっほう、おぬし言うではないか、そうだったな。わしとしたことがうかつだった。そうだそうだ、馬の話だろ。わしは逃げ馬が好きでなあ。どんな馬も逃げさせるんだ。強くても弱くても見せ場をつくってくれる……」
先輩の起点に少しほっとしながら、メモをとるふりをして、いつまでも顔をあげなかった。
それでも、もう一人から視線を感じていたのはわかった。
先輩の取材が最後の質問を迎えるころ、義理の父になるはずだった男は上機嫌にその場をあとにしていった。
だが、一人青年だけが残った。
先輩の横をすり抜けて、エルの正面まで来た。
エルは顔をあげなかった。真っ白のメモばかりみていた。
そうしていると、しばらくして足元にみえていた男の靴が消えた。
「行ったぞ」
先輩は少し呆れていた。
「お前の正体に触れなかっただけでもえらいかもな」
エルは唇を噛んだ。
「単なる日和見なの、あれ」
吐き捨てるように。
1-3
ーーーメモーーーー
1-3
いろいろあって、オーナー取材特集記事ができる。
次の予想記事を書くエル。たまには差し馬本命にしよう。
そして、エリシオの異動を受け入れよう。
彼を理解できるのは自分だけかもしれない→こうならない?
舞台:会社
登場人物:エル、先輩、デスク、エリシオ?
ーーー本文ーーーー
神妙な面持ちでタイプライターに向かい合うエル。
先日の取材は結局先輩の独壇場、というよりエルの耳に何一つ言葉が入ってこなかったから、なにも書けず、先輩に仕事を譲ってしまった。
実績を少しでも積まないといけないのに。
ただでさえ、女性の記者は少ない。
女の取材は受けないとか平気で言い出す調教師やオーナーもいる。
先日のクロムウェル=リボーも似たようなものだ。先輩がいたからいいものの。
イライラともやもやの中間くらいが胸の中を支配して、集中しない。
「エル、次のレース、あのおっさんの馬出るぞ」
先輩が教えてくれる。
「知ってます」
出馬表を見て、記事を起こしにくい理由の一つだ。
「おっさんが言ってた通り、あそこの馬はすべて逃げ馬だ」
それもわかっていること。
そして、エルの本命にする馬はたいがいが逃げ馬だ。
「リボー卿と趣味が似ていて、辟易してます」
素直に吐露する。
「……なら、差し馬から買ってみてはどうかな。俺、おすすめなの教えるよ」
「それじゃ先輩の記事じゃないですか、これ、わたしが任されたコラムですよ」
自分のスタイルを貫くか、今の気分感情を優先させるか、キーを打てない理由の一つだ。
「コネで入社して、公私混同でみんなを振り回して、記事も書けない」
「まあそういうなよ、俺たちは少なくても理解者だからな。だいたい新人なんだから、振り回して当然だ。かみさんに叱られるくらいどうってことないしな。それに、ここで突き放したら、逆にまた叱られる。今回は俺の顔をたてるつもりで、差し馬の指名を頼むぜ。あなたは競馬記者のエル=プリメロなんだろ」
貴族の娘、フローラ=ブランドフォードではなくて。
二つのわたし。
ここではフローラではいてはいけないはずなのに。
いや、いつでもエルでいたいから、この仕事をしているはずだ。
!!!(この辺少し整理が必要)!!!
「……わかりました。ありがとうございます」
少し目をつむって、しばらく考え事をして、一気にキーをたたきまくる。
下書きもなしかよ、と隣で先輩がぼやく。
やがて、原稿を作り終えたようすで、ほっとしたように乱雑に切り離して、デスクに提出する。
「デスク、この前のエリシオの異動の話」
原稿を提出しながら、別の話題を振る。
「わたし、受けてもいいですよ。わたしも先輩として後輩の面倒をみます」
その宣言に先輩はエルの肩を抱こうとするが、それを振り払う。
「わたしをこの道にひきづりこんだやつにも、見届けてもらわないと」
陰鬱な学生時代に光を差しこんだ新聞部活動で、フローラはエルになった。
そのきっかけをつくったのは――。
「わたしは競馬記者のエル=プリメロです。世間がどう言おうがわたしはがんばりますからね」
2話につづく。
◆1話をとりあえず書き終えた課題
「競馬記者エル」の物語になった。
何が好きでどんなことで悩んで、どう気持ちを切り替えるのかの整理が必要。
先輩のキャラ造形をもう少し掘り下げ。名前の確定。
1-2を二分割してもよい?
1-3のクライマックスを整理して、1から再構成が必要。
とりあえず、こんな感じ?
本日ここまで。