お題「こっそり公の粉を生み出す話」
これ公ララでは難しくないか(ララヒカチャンの解釈違い的な意味で)
概念俺みたいな感じになりそう せつなさんごめんねーーー!!!
作業用BGM何にしよう ギャグ寄りな感じの……
アクアアルタ日和 ARIAのサントラです
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抜き足、差し足。そして忍び足。
限界まで足音と気配を消しながら階段を登る。
向かう先はただ一つ──水晶公の自室。
今は草木も眠る深夜二時。いくら彼でも眠りに就いていておかしくない時間だ。
いや、寝ている。水晶公は寝ている。そう冒険者の勘がささやいている。
何度もお邪魔したおかげで、彼の部屋はどの階のどこにあるかはしっかり覚えている。
細心の注意を払って、合鍵を差し込み、かちゃり。今までで一番音を立てずに解錠出来た気がする。さすが私。
これもオボロさんに忍者としてのイロハを叩き込んでもらったおかげだ。オボロさんありがとう。こんな使われ方されてるって知られたら下忍からやり直しさせられそうだから言わないけど。
「おじゃましまーす…………」
ほぼ吐息だけの挨拶をして侵入する。
どんな時であろうと、挨拶は重要だ。「挨拶なき者死すべし慈悲はない」ってオボロさん言ってた気がする。あっ、いや、ウソです言ってないかも。
まあいいや、今大事なのはそこじゃない。
部屋の奥、シングルサイズの簡素なベッドには、これまた簡素な寝間着で眠る水晶公がいた。
どーんとキングサイズのベッドで、もっと豪華な服着て寝ててもいいと思うけれど──といつも思う。仮にもこの街の管理者なわけだし。
彼のことだ。「自分より民が優先」みたいな思考なんだろう。清貧という言葉が良く似合う人だ。良いところではあるけど、困ったところでもあると思う。
閑話休題。
すぐ目の前まで来ても、水晶公が起きる気配はない。すやすやと心地良さそうな寝息まで聞こえてくる。
都合の良いことに水晶の右腕はこちら側に投げ出されていた。幸運の女神様ありがとう。蛮神になりそうだから祈らずに感謝だけにしておこう。
水晶公の腕の様子は──うん、極端にえぐれたり、欠けたりした様子は見られない。これなら軽く磨くだけで良さそうだ。
懐から紙やすり数枚を取り出し、そっと腕に当てた。
最初は腕を磨きたいだけだった。
せっかく綺麗な水晶なのだから。せっかくならツヤツヤになるまで磨きたい、ピカピカに光り輝かせたい──そんな気持ちだった。
けど、彼に直接言っても「必要ない」と言われそうで、だからこうして真夜中にこっそり忍び込んで磨く必要があったのだ。
納得がいくまで磨いて、跡形もなく片付けて、さあ帰ろう。その瞬間に、研磨して出てきた水晶の粉末を目にしてしまった。これがいけなかった。
細かい粉末になった、水晶。暗がりの中でもキラキラ輝くそれが美しく見えてしまって。つい魔が差し、運良く持っていた小瓶に詰めて持ち帰ってしまったのだ。証拠隠滅のつもりでは決して──なかったわけではないけれど。
かくして、その後も定期的にこっそり磨いては粉を小瓶に詰めて持ち帰っている。
公は腕がキラキラピカピカ、私は公の水晶の粉末をゲット。一挙両得というわけだ。
「それじゃ、しつれいしますねー……」
じっくり腕を検分して、中指の先に薄くだがキズがついているのを見つけた。
まずはそこを磨くか。そろりそろりと手を掴んで────。
「──捕まえたぞ」
「ひょえっ!?」
逆に私の手を掴まれた。とっさに振り払って逃げようとするも、伸びてきた公の左手が肩をしっかり掴んで引き寄せてくる。
「こんな夜更けに男の部屋へ忍び込んで!あなたは一体何をしてるんだ!」
「わあああ!ごめん!ごめん!悪気はなかったんです!」
ベッドに引きずり上げられる。公は私に「絶対に逃げるなよ」と念押しして、ベッドサイドのランプをつけた。
「…………それで。あなたは、今、何を?」
「な、なにもーしてないですーよー」
「目が泳いでいる。そんなわかりやすい嘘に私が騙されるとでも思っているのか?」
水晶公の声はいつもより低い。とても怒っている──ように見える。
「……わ、悪気はなかったんですよぅ」
「それは分かったから。何をしようとしていたんだ、私に」
「…………怒らない?」
「怒らない……と言いたいが、内容による」
下手にごまかしてこれ以上怒られる前にバラしてしまおう。
そして、私は白状した。
公の右腕が綺麗なのに磨かれていないのがもったいないと思ったこと。お願いしてもやらせてくれなさそうだからこっそり磨いていたこと。
磨いた後の粉末については──さすがに言えなかった。突っ込まれなければ黙っていても大丈夫なはずだ。
私の自白を聞き届けて、水晶公は深々とため息をついた。
「そんな理由で、こんなことを……」
「公にとっては『そんな理由』でも、私にとってはそうじゃないんです!」
「開き直るな!」
「スイマセン!」
公の深いため息、二回目。
「……あなたがどうしてもと言うのなら、拒みなどしないさ。だから、」
「へっ」
上半身が何かに引き寄せられる。青い床を見ていたはずの視界が暗くなった。額に当たった場所は固くて、これは──公の、肩?
「うわ……ひぇっ……」
「こんな時間ではなく、日中に来ると約束してくれ」
離れようとしても、背中に公の腕が回っていて動けない。優しく頭を撫でられて、思わずびくりと体が跳ねてしまった。公のくすくす笑う声が耳元でする。目がぐるぐる回り始めた。
「やくそくっ!約束します!約束するからはな、はなして」
「私は確かに老人だが、肉体は若い男の時分のままなのだ。たとえあなたが偉大な英雄だろうとも、ほら」
「んぎゃっ」
再び視界が変わった。次に見えたのは青い床──いや、これは天井だ。それと、水晶公の顔が──顔が近い!
「女性一人を押し倒すくらい、わけはない。あなたが夜更けに部屋に忍び込み、触れようとした相手はそういう存在だ。少しくらい警戒してくれ」
「す、すみ……ません……でした?」
「そうでないと…………勘違い、してしまいそうだから」
水晶公はため息まじりにそう言って、そのまま私に覆いかぶさってきた。
公の体は思っていたより重かった。彼は小柄だからもっと軽いかと思っていたけど、きっと腕が水晶だからかもしれない。
「あの……こ、公?」
「寝る。起きるまでここにいてくれ」
「はっ、はい……」
悪さをした私におしおき、とか、そういう類のものなのだろうか。ならば甘んじて受け入れるしかなさそうだ。
上から退き、横向きになった公を追いかけて私も寝返りをする。頭の下に公の左腕がさりげなく差し込まれた。これって、腕枕というやつなのでは。
「公、腕しびれちゃうよ」
「いいから」
取り付く島もなかった。大人しく寝るとしよう。
「……おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
また頭を優しく撫でられる。それで一気に眠気がやってきて、すぐに意識は途切れた。
  *
気持ちの良い寝息を立てて、英雄がすやすやと眠っている。私の、腕の中で。
「……『何をやっているんだ』と言われるべきは私の方だな」
肩を落とす私に、英雄が頭をこすりつけてくる。起きてから何度目かのため息をついた。
誰かが忍び込んできて、私の腕や手に触れているのは、なんとなく気づいていた。先週も手に触れられる感触で目が覚めて、薄く目を開いて──飛び上がるかと思った。
冒険者が、鼻歌を歌いながら私の手を磨いていたのだから。
それから毎日わざと右腕を投げ出すようにして寝て、ようやく釣れたのが今日だった。
本当なら、彼女を捕まえて、行動の意図をただして──やめるように言って、帰すつもりだった。
だが、あれほど真剣に私の右腕に対する情熱を語られては、そのまま帰らせたくなくなってしまった。
その結果が、これだ。
「……最近、妙に綺麗だと思っていたら。そういうことだったのか」
明度を落としたベッドサイドランプの光が、腕の中で複雑に反射する。
「自分の腕でなければ、綺麗に思えたかもしれないな……ッ!」
冒険者が距離を詰めてきた。にわかに心拍数が上がる。
背中に腕を回され、先程と力関係が逆転した。身動きが取れなくなった私は、諦めて彼女と同じようにする。
「…………こんな機会、今日だけ。今回、だけ──だから」
この一回限りの機会を、大切にしなければ。
冒険者の体をしっかり抱き直し、まぶたを閉じた。
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アスカ#粉を吸う人
おしまい!
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アスカ#粉を吸う人
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