「なんで、お前は闘うんだよ」
「いきなりどうしたんだよ」
 勉強部屋。
 訓練の最中に唐突に聞かれた質問。
「いやさ、一護に前に聞かれたやん? 俺がなんで戦うのかって」
「まぁ、聞いたな」
 訓練も残り数日というところで、源氏は質問を切り出してきた。
 確かに、俺は源氏に訓練が始まって丈さんに殺されかけて、つい聞いてしまった。
「いやまぁ、俺は終始生きるために戦ってるんだけど、一護って何と戦ってるのかなって」
「……俺は、目の前にあるもんを守りたいだけだ」
 この手の届く範囲で、守りたい。
 守れる力があるから、守りたいと思うから、守りたい。
「いやさ、今って守りたいもんが手の外にあるってことやん?
 朽木さんのことをわざわざ救いに生きたいだなんて」
「……寝覚めが悪いんから、だな」
「何だその理由」
 別に、御大層な理想を掲げていたりするわけではない。
 岩鷲のやつにも聞かれたが、俺は俺が助け出すと決めたから、助けるんだ。
「でもさ、死ぬかもしれんぞ?」
「だから、死なないようにこうしてるんだろ?」
「いやいや、死なないようにするために死にかけてるとか本末本末」
「……それは否定できないねぇな」
 源氏の真面目な顔をしたツッコミに思わず正気に戻る。
 こんなことになるとは思ってなかったし、こんなことなら、と思わなくもないが、
「一護、正直さ、俺は無理だと思うんだよ。
 朽木さん救うの」
「ん? そうか?」
 こんだけしごかれてちゃ救えると思ったんだけど、と続ける前に、
「こんなにボロボロになってさ、救えるかどうか分からないことをして、やる意味あるのか、って思わん?」
「……考えたことなかったな」
「……正直、俺は一護に死なれる方が困る。
 行け、とは言えないんだよな」
 頭をガシガシと掻いて、源氏は照れくさそうに話す。
 結構、こいつって友達のことを見ている。
 それこそ、さりげないフォローとか、空気を読む力とかはしっかりある。
 俺が一歩引いてる感じ、と言われることがあるが、源氏を見ているとこういうことなんだな、って理解できる。
「今回のシゴキで本当は諦めてくれるかと思ってたんだけど、かなり辛抱強くて、引いた」
「おい、源氏もやってんじゃんかよ」
「俺は別にいいのよ。
 個人的にぶん殴りたいやつがいて、それのついでに朽木さんを救おうかな、ってスタンスだから」
「んだよそれ」
 それを言うなら源氏も意味がわからない。
 生きるために闘う、と言いながら結構死にかけてるし、それなのに生きている。
 ほんと、こいつは『生きる』やつだ、と毎回思わせられる。
「いやほんと、やる必要ある? って感じは、マジである」
「……そんなに不安か?」
「いやいや、俺は遠くから見てたけど、お前毎回死にかけてんじゃねぇかよ」
「毎回では……ないと思うけど……」
「いやいや顔顔、こっち向いて話しなさいって」
 源氏がこちらを見て微笑んでいるというのが理解できる。
 あんまり長い付き合いではないのに、良いやつだからか、源氏はそばに居た。
 そんで虚を倒して……あのときはごまかし方面白かったな、あれ。
「それにさ、そんなにボロボロになってさ、周りのやつしっかり見てるか?」
 そこで、源氏の声がワントーン落ちる。
 明らかに、真面目に話している。
 それが理解できたから、俺は源氏の顔を見る。
 少し、悲しそうな顔だった。
「別にお前が決めたことで何をしようと構わねぇけど、それで傷つくのはお前だけじゃないんだぞ?」
「わかってるって」
「わかってないんだよ、お前の行動は」
 少し、源氏の声が荒ぶる。
「傷ついて、笑って、眉間にシワを寄せて、頑張って、傷ついて」
「……そう見えるか?」
「見える」
「……そっか」
 俺は、源氏の顔から視線をそらす。
「俺は、これ以上見ていられない」
「そうか」
「これ以上傷ついて、これ以上傷だらけに成って、何を得たいんだ」
「お前のためになるのか?」
「どうすれば、一護の脚を止められる?」
 源氏から……いや、あいつからの言葉。
 立ち上がる。
「知ってるよな?
 源氏に俺が『なんで闘うんだ?』って聞いたときの答えの、続き」
「あいつはさ、『生物的に死ななければいい』とは言ってないんだよ」
「源氏はさ『俺は俺が死なないように、生きる』って言っていたんだ」
 源氏が死にたくないのは、ここで死んだら嫌だ、と思うから。
 ここで死んだら、我妻源氏という存在が死を認めるから、絶対に死なない。
「それが、答えだったよな」
「斬月」
 瞬間、勉強部屋の風景は空気に溶けていき、空座町の光景が映し出される。
 そして源氏の居たところには、
『なぜ、わかった』
「源氏は生き意地汚いとか、泥臭い様に見えて、その中に自分がいるんだよ。
 わかってて、やったろ?」
『……私は、不安だ』
「不安?」
『死に迫り、迫り、迫り、迫り。
 そしてなおもお前の中にはあの男への憧憬が存在している』
「誰だよ」
 わかってるけど、照れくさい。
『存在も、生き方も、信念も、全て違うのに、お前は何をあの男に見ている』
「……さぁ?」
『……』
 疑問符を浮かべる。
 確かに、俺はあいつに憧れを抱いている。
 それは確かだ。
 でも、それがなんでかと言われると、
「わからん。
 とりあえず、勝てないから?」
『……理解できていない、と?』
「いや、俺もなんとなく、分かるんだよ。
 届かなくて、嫌になる気持ち」
 源氏がつねづね語るのは、生きるためには強くならなきゃならなくて、強くないとできることが少ない。
 それはなんでも同じだ、と。
 腕力でも、学力でも、知力でも。
「だから、したいことのために頑張る。
 それこそ、自分が死なないように」
『お前も、そう在りたい、と?』
「俺は守りたいんだから、そのために強くなるんだよ」
『あくまで、自分は自分、か』
「そうだろ、あいつと俺は違う。
 俺ができないことがあいつにはできるし、あいつにできないことが、俺にはできる」
 だから、
「俺は、お前の力を借りる。
 手を貸してくれ、斬月」
『私はお前のためを言っているのだぞ?』
「なら俺に手を貸してくれ。
 友達を、救いたいもんを、救うために」
『私は、お前から手を話したのだぞ?』
「でもお前は俺の斬魄刀だ。
 何度だって声を聞いてやる」
『恐れているのに、まだ闘うのか」
「恐れるからこそ、臆するからこそ、そこで踏み出すのが勇気だ」
 斬月はこちらを睨む。
 硬直。
 そして、
『私が手を貸せるのは、ほんの少しだ。
 傷口は止める。
 一発で決めろ』
☆☆☆☆☆
「あぁ?」
 更木剣八は、脚を止めた。
 斬ったあとのものには興味がない。
 それこそ、肉となり朽ちて行くだけだ。
 それが、興味を持った。
 いや、持たされた。
 その膨大な霊圧に。
 その姿に、
 そしてその、
「なぁに笑ってやがる」
「いや、まだ、俺はこいつと協力できてなかったなって」
「斬魄刀と協力?
 何いってんだお前?」
「その斬魄刀、悲鳴を上げてるな」
「糞、斬られて頭までおかしくなったのかよ?」
 更木剣八は、会話のできない一護に苛立ちを覚えながらも、自分の体が換気の悲鳴を上げているのに気づく。
(こいつなら、本気を出しても大丈夫そうだ)
 長らく忘れていた、本気。
 勝ち逃げされてから、開放することはめったになかった、この眼帯。
 霊力を、霊圧を食い尽くす化け物。
 更木剣八は、己の力を封じ込めることが敵わないため、つけることを了承した、手加減(うっとおしいもの)。
 おかげで楽しい戦いはあったが、心は踊らなかった。
 それが今、踊っている。
 こいつなら、こいつであれば、
「いいぜぇ」
 眼帯を外す。
 体からあふれる、霊圧。
 それは周囲の建物を押しつぶす。
 台風のような霊圧。
「ーーーーーー」
「ーーーーー」
「ーー」
「何話してんだ! 一発でぶった切ってやるよぉ!」
 そんな霊圧の中、凪の様に落ち着くふた……一人の姿。
 一護は誰かと話すように口を動かす。
 しかしその声は更木剣八には聞こえない。
 荒れ響く霊圧の台風。
 それが刀を振り下ろす。
「行くぜ、斬月」
 それが、更木剣八の聞いた最後の言葉。
 上段に構えられる斬月。
 一護から溢れ出る霊圧。
 剣八の霊圧を超えるほどの霊圧に、心が躍る。
 刀ごと叩き折るつもりで、振り下ろす。
 しかしその瞬間、斬月は、消えた。
「『月牙』」
 剣八が刀を振り下ろした先には、一護は居ない。
 手応えは会った。
 だけど居ない。
 なんで。
 そう、剣八が思った瞬間、
「『一閃』」
 横薙ぎに刀を振り抜いた一護の姿があった。
 あの瞬間、一護は自身の最大の技を最大限に当てるために、源氏の型を真似た。
 それは歪かもしれない。
 雑かもしれない。
 だけど、
「くっそ……」
 この瞬間、
 この一瞬では、
 ドサッ
 致命を分けた。
 地に倒れる更木剣八。
 流れ出る血。
 同時に、
 黒崎一護は、倒れた。
 その体からは、血が流れ出る。
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BLEACH鬼滅二次創作 65話【連載】
初公開日: 2021年06月08日
最終更新日: 2021年06月08日
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コメント
BLEACH鬼滅の二次創作を書きます。
65話です。
ここで出さないとしらける話を抜かしていました。
さ、はよやります
前回のテキストライブ→https://txtlive.net/lr/1622953838835
次回のテキストライブ→まだ
作品URL→https://syosetu.org/novel/245544/