なんとなくお題
「季節感あるデート」
「付き合う前と後で反応は変わる?」
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ひらり、ひらりと淡いピンク色が宙を舞い、水たまりの上や段差に色を落としていく。
風が吹くたびに儚く舞う花びらは、終わりが迫る桜並木の醍醐味といえた。
川沿いの堤防に植えられた桜並木は満開を終えて、若葉が目立つ木々も多くなっていた。
そのせいか以前来た時よりも花見の客はずっと少なく、のんびりと干渉することができた。
川の水面に落ちた花びらが緩やかに流れていく。
その光景を見つめていたマヨイは、視線を感じて顔を上げた。
「マヨちゃんの髪に……」
何気ない動作で、ニキの指がマヨイの髪に触れた。
緩く絡まった花びらを取ると、ふっと息を吹きかけて、宙にはなった。
「……あ、ありがとうございます」
マヨイは立ち止まって咄嗟にお礼を言った。
髪に神経は入っていないはずなのに、触れられたところを中心に身体が熱い気がする。
「この間、レジャー隊のみんなで来た時は8分咲きだったのに、あっという間に終わっちゃったっすね」
ここにレジャー隊のみんなで来たのは、ほんの数日前の話だ。
綺麗だったからもう一度見に行こうという話になり、また今日訪れたのだがピークは過ぎてしまっていたらしい。
ニキは散る花びらを仰いでのんびりと桜並木を歩いていく。
これはこれで美しいのは間違いないのだが。
「もっと早く見にこればよかったっすね。
マヨちゃん、この後どうするっすか?」
能天気に尋ねたニキは、ようやくマヨイが立ち止まったままなことに気がついた。
「マヨちゃん……?」
「……この間一緒に見た時と私たち……同じなんでしょうか?」
問いかけられた意味がわからずにニキはマヨイに近寄ると、その表情を伺い見た。
長い前髪の向こうに、顔を赤くして俯いているマヨイの表情があり、それを見た瞬間ニキもつられてしまった。
緊張が伝染したみたいだ。
「……私は……とても、椎名さんみたいには振る舞えません」
「……ぁ」
この間みんなで見た時と今、違うことと言ったら。
(そっか……僕がマヨちゃんに好きって言って……)
告白して、受け入れてもらって、そうなると今日のこれは初デートになるわけだ。
気付いた瞬間、さっき躊躇なく触れたことも考えなしに話をしていて自分の迂闊さも、何故そんなことが出来たのか、わからなくなってしまった。
「……し、椎名さんにとっては……大したことじゃないかもしれませんがぁ……」
「待って……ごめん。
そんなことないっす」
急に熱を持って暴走し始めた身体は、視界すらぶれさせる。
桜並木の中、舞い散るピンクに囲まれて……。
「……っていうか、マヨちゃんってこんな綺麗だったっすか?」
「え〝ぇっ!?」
「あぁーーっ、うそっ、なんでもないっす!!」
口にした言葉の脈絡の無さに、嫌な汗が止まらなかった。
視線も泳げば、ここからどうしたらいいのかも思いつかない。
そんなニキを見て、ようやく緊張が解けたマヨイは漸く微笑むことが出来た。
思えば今日は朝からずっと緊張していた気がする。
「よかったです。
意識してたのは私だけかと思いました」
「そんなことないっすよ!
……ことの重大さに気付いてなかっただけで……」
後半の言葉は声も小さくマヨイに聞こえたかどうかは分からなかったが。
「……とりあえず、もう少し歩きましょうか」
「そうっすね」
前はマヨイの匂いを嗅ぐことも、手に触れることも抵抗がなかったはずなのに、いまは妙に遠く感じる。
手を伸ばして、手を取って、繋ぐということを想像しただけで、口の中が乾いた。
それでも、隣に並ぶ人が特別で尊いものに思えるから、悪くない。
葉桜が咲く頃にはもう少し何かが変わっているのだろうか