のくさつ
パズルは空気の緩衝材を段ボール箱から取り出しながら中身を確認した。ハズレは文章に目を通してなにやら覚えようとしている様子だった。仕事の影響で遅れてきたコモレビは、その状態に訝しげな視線をやる。
「なんだ?またリフォームか?」
「違う違う。あ、コモレビこれ。納品書確認して」
そう言って彼女は薄い青色の紙切れを突き出す。元より視力があまりよくないコモレビは少し顔から離して購入品の項目を一つ一つ確認する。基盤は結構な安物であるし、火薬――まぁあくまで日本なので、爆発物の免許を持っていない彼らの入手方法は花火からなのだが――も大量である割に、といった様子だった。ラインナップを確認しながら、コモレビは疑問に思ってパズルに体重を乗せながら段ボール箱の中身を覗き込む。
「ぁんだよこれ」
「爆弾。今回はとりあえず質より力より数!ってほうがあっちの計画とマッチするかなって」
「計画……」
そう言われて彼の脳裏によぎったのは、ある企業の特別祝賀会が開かれ、そこに暗殺を目的とした異能力者が乗り込んでくるというニュースの声だった。確かパズルは珍しくサポートに回るとかいう話を聞いてはいたが、こうしてまた巻き込まれるとは思っていなかったらしく、コモレビは呆れた様子でいた。なんせ今回は給仕だとかとして実際にパーティーに潜入・攪乱するだのというおかしな話が持ち上がっている。それに自分が抜粋されちゃたまったものではない、と思っていたから。『今回はねぇ、あんまり目立たないつもりだから安心して!』と言っていたパズルの言葉に安堵していたのだ。
「実行犯わかる?わかってる?」
「ああ……ヤガミ?ヤソガミ?なんたらとかいうあの赤髪のガキだろ」
「そうそう。今回はさ、やっぱり若い子の挑戦を後押ししたいの。だからねぇ、ハズレ」
言葉とともに視線を送ると、ハズレはコモレビにずいと書類の束を突き付ける。彼はそれをぺらぺら眺めていると、その中にある項目にぎょっとなってしまった。
中身の半分は、|真朱の情報だの暗殺目標の情報だの、計画の支援をするには必要最低限のものだ。問題はこの後である。
『ワインの綺麗な注ぎ方』『ものを乗せたお盆を持って素早く移動する歩行法』だのという、文章よりも図のほうが多いページがあった。生憎察しだけは無駄に優れているこの男、おそるおそるパズルを向く。
「なぁ」
「ん?どうしたの?」
「俺たちに行けと?」
「あ、行って。ハズレも行くから、なんかあったら協力してね」
「はぁ!?」
パズルの二の句でいよいよ驚愕の声を我慢できないでしまった。ハズレのじとりとした視線は無視する。
「なんでだよ!この前お前言ってただろ、『ワイン注ぐっていうか、ワインのボトルで人殺しそうだよね』とかなんとか!」
「いやぁ、よく考えたら2mの給仕っておいておきたくならない?」
「わりぃ、その感性は理解しかねる」
まただ、またである。またパズルの一方的な言葉に一方的に踊らされ、そして一方的に負け役をさせられてパズル本人は華々しい勝利を収める。慣れた構図となってしまった。しかし、コモレビにとっては彼女の勝利が自身の望む視界に必要なのも事実。頭をがしがしと掻きながら書類を読み込み始めたコモレビを一瞥して、パズルは声をかける。
「じゃ、いつも通り全力で。手を抜いたら、死ぬか捕まるからね」
「Yes, My puzzle」
「仰せのままに、俺たちのパズル」
鬨の声は、静かに、厳かに放たれた。
##行動方針
ブルゾンパズル(パズル・コモレビ・ハズレ)……後方支援です。爆弾で町全体を混乱させることで外部からの探偵社を出向させにくくするいつもの手法で手伝います。男二人はこの後給仕としても潜入予定です。
男は、自身の名前の広さを良しとしなかった。それが功を奏した機会が今までなかったからだ。若気の至りを今更どうしようもできまいとはわかっているので、それは普段あまり見せないようにしているのだが……こういうものほど、見せていないからといって、使わないということではなかったりする。
赤紫の髪と空色の目、カーキ色の動きやすそうな服装の青年。彼は日常生活で使うより少し分厚い札を数え切って、財布にいそいそとしまう。そして見上げた顔の先には、スキンヘッドにハーフリムの眼鏡、首からは十字架のネックレス。春物のコートを背にかけて座る男がコーヒーを飲んでいた。
「はい、代金確認しました。ご利用ありがとうございます」
「いえいえ。噂にはかねがね聞いております。守秘義務で、電子機器関連の不正アクセスや不正電波の情報を独自のルートで掴み、ハンディカメラで犯人を確実に収めるとかなんとか」
「そんな、とんでもないっす!ただスクープになりそうなネタを探してる途中に突き当たるだけなんで!匿名の情報交換は今や必須ですからね!」
人のいい笑顔を向ける彼は、紛れもなくNOXだ。そして今彼にネットの不正利用の調査を依頼した男は、紛れもなく探偵社員だ。この関係性を知っているのは、探偵社のほう、すなわち三ツ三だけである。自身の悪名そしてどうも広がりすぎたまである伝手を使って辿り着いたカメラマン。掲示板へ政治活動やテレビ局の不正を垂れこんでいる犯人であるとわかっているのだが、三ツ三はあえてそれを確認するでもなく、そして逮捕するでもない。
何故なら三ツ三は、目の前の男のなかにある『毒性ある善性』を把握しているから。彼の言葉に嘘はない。誤魔化しもない。ゆえにわかる。彼が、自身を明確にNOXとして認識していないことを。
だから三ツ三は少し考えて、それを利用することにした。何故なら、仮にパズルがこれから行われるらしい暗殺計画に関与していた場合。並大抵の策略では通じないからだ。自身の、そして目の前の男という毒を用いて毒を制すること。これを真っ先に考えていた。NOXくらいしか思いつかないような頓珍漢な発想ではあるが、ゆえに彼のような飛んだ発想の人間にしか使えない手だ。
「では、精一杯このボクが努めさせてもらいます!ハンドルネーム『ジェンガ』さん、あらためてよろしくお願いいたします!」
「ああ。お互い気持ちのいい仕事にしましょう。――『滅ディレクター』、さん」
#行動方針
##三ツ三紺
今回は趣向を変えて滅Dを利用する方針のようです。基本は探偵社にて情報を収集します。
##滅D
特殊な行動になります。端的に言うとNOXを狩ります。後方支援といってもあまり派手に動きすぎていると見つかる危険性がありますのでご注意を。問題ございましたら変更いたします。
創ユグ(メモ書き)
ハーサム 経済や政治は心配いらない
政治家とか鉄道の偉い人とかは ごめんなさいかも?
人口 半分は研究職(そもそも研究のために移住してきた人たちの集まりなので) 三分の一が鉄道の人 あとそれ以外が普通の人 人口の入れ替わり激しい?(下記の出国の話から)
12年前にロゥボゥの叛逆 現在では建国記念日となり一律休日となっている(元々祝日くっそ少なかったっていうか祝日でも研究してる人が多かったので)
研究に必要な手続き 紙一枚 だけどハーサムに研究室構えるには共同研究室と個人研究室のどっちかに分かれてて金払う必要があって まぁ当たり前だけど共同研究室のほうが安い
共同研究室で雑魚寝してる人めっちゃ多い
研究室ハーサム、国のハーサムに好感もってても悪くても◎ 叛逆歓迎(最悪)
一応国外に出るのに関所は通ってもらう必要があるけど 一か月以上じゃないかぎり手続きは簡単
植物はあんまり育たない地域 食料は一応輸入とかもするけど 昔に研究者が日光栽培の植物とか 人口肉とか 作っちゃった…… そもそも料理する人少ないだろ(※普通の人はもちろん普通に食料使う)
ハーサムの利用に関して
ハーサムは、いくつかの階段及び昇降機を用いて出入りすることの出来る研究設備です。現在10地点設置されており、ハーサムの拡張と共に地点の数も増加しております。
小さな研究室を数多に繋げた群造形的な構造となっています。そのため地震には弱く、これまで28人が地震被害により負傷しています。
当設備には共同研究室と個人研究室が用意されており、それぞれ月ごとに利用契約を更新する必要があります。契約金が払えれば研究内容は問いません。共同研究室のほうが契約金は安いですが、個人研究室に比べて実験など一部の研究が出来ない恐れがございます。ご注意ください。
略歴・年中行事
12年前
ロゥボゥ氏の叛逆・内部戦争の勃発(現代史としては『地下都市内部戦争』と呼称されている)
研究都市ハーサムとして新しい政治体制と経済体制が発足
10年前
春の学会 始動
8年前
秋の学会 始動
春・秋の学会
前者は四月、後者は十月。ハーサムの研究成果を様々な国に見せる、博覧会のようなもの。この時期が国外からの来訪者が最も多いとされている。学会というのはあくまで仮称であったが、それが現在まで続いている。研究成果の発表スペース、ステージは応募制。毎年数多くの研究者が自身の研究を国外の人間に周知してもらおうとこぞって応募している。個人での交易、もとい支援を得られるチャンスであると捉えている研究者もいるんだとか。
ロゥボゥ氏が見学に訪れたりステージで質問をすることも多くある。容赦ない質問が数多く浴びせられるが、同時に成長の場でもある。頑張ろう。
人種
多民族国家です。人間がおおよそ35%、動物系の人外(亜人含)が35%、その他人外が30%とされています。研究施設が中心となっていることから、国民の学力水準は高いです。幸福度は他国と比べると個人差が激しいことから平均値であるとされている。