21時00分~22時00分予定です。
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ネタを考えるところから始めるので最初はダラダラしています。
本日のテーマ
「お揃い」
◆
こんばんはー。
ちょっとまだバタバタしていますがネタ考えながらバタバタする。
ネタ出来た。
◆
そこまで忙しいのなら無理に来なくてもいいのに、と思いつつも、部屋がふんわりとコロンの香りで満たされるのは嬉しい。
息が詰まるほどの香り、というわけではないのが小憎らしいというか、陸にきてまだ二年に満たないのに、この上手なフレグランスの使い方が『勉強してるんだなぁ』としみじみさせる。
アズールには性質的にはどこか自分に近いものを感じているのだが、いわゆる『陽キャたち』に紛れ込んでも平気で、かつ、どんな手を使ってでも勝って、全ての上に君臨してやろうという魂胆が丸出しなのは寧ろ尊敬の念すら抱いている。努力しようというのは立派だ。見習いたいとは思わないが。
そういうわけで、イデアの部屋、アズールはベッドを背に床に座っている。普通に散らかった部屋に文句を言うでもなくなったのは諦めたのだろうか。一応、そんなところに座るのは、と言ったこともあったのだが、ベッドを汚すのは嫌だとさらりと断られてしまった。
何が汚れるというのだろう。お綺麗な人魚のせいで、散らかったオタクの部屋が。
段差がないので足を立てて座るしかないアズールに、腰を痛めやしないかと心配しながらも、今日もこの部屋には気の利いたソファなど無い。そもそも置く場所がない。
何らかのカタログを抱えてやってきたアズールは、お借りします、と言ってイデアのデスクからペンを取り上げ、ぶつぶつ言いながらカタログにチェックを入れている。
イデアがアズールの部屋にいけないのはただのイデアの都合……というか、オクタヴィネル怖いからやだ! ぐらいのモノなので、自分が忙しい時には来なければいいと思う。イデアは責める気はない。が、アズールは律義にやってくるのだ。
(まぁ、こんなにちゃんと来なかったら、ホントに付き合ってんのかなって疑いそうだけど……)
……自分の方が。
確かに『陰のもの』としての同調意識はあるが、やはり何処かアズールはイデアとは違う、特別……な、気がする。
これは人魚だからそう思うのだろうか。
と、パソコンを触っているふりでちらちら窺っていたら、アズールは手を置いた。
「イデアさん」
「はい、なに?」
気のないふりの返事。
「お返しします」
あまり気にしたふうでもなく、アズールはイデアにペンを返した。
「どうしたの。えらく熱心にカタログなんか見てたけど」
ネットショップでポチポチではなく、紙のカタログ。
不思議なものを、と思っていたのだが、ああ。とアズールは膝の上のカタログを、足を上げて揺らす。
「こちらのメーカーさん、アナログなんですが質が良くて安いんです。デザイン的にもあまり被らないのでモストロラウンジで愛用していまして」
「制服?」
「以外のものも。イベント用の服が多いですね。基本的に寮服で応対していますから」
「ああ、そうか……」
服飾カタログを見ているにしては地味なデザインの表紙だと思っていたら、そういう事らしい。
今度イベントがあって、という説明を聞く。許可を取ってモストロラウンジを学外の人に開放する日があるのだ。いつも来る客に楽しんでもらうため、という心遣いを聞きながら、お金を稼ぐということに関しては本当に気が回る、としみじみ思う。
カタログをぺらぺらしながら説明してくれるので眺めていると、双子の為に揃いのネクタイを別に用意しているようだ。
「これ、あの二人だけ?」
「ええ、そうですが」
「みんなバラバラなのにあの二人だけお揃い?」
不思議すぎてそう尋ねると、アズールはきょとんとした。
「……そうですね、当たり前に必要だと思ってました。同じものが」
「ええ……そうなんだ……」
考えてもいなかった。という反応だ。
「まぁ、でも、揃えてやらないと、泣きわめいたりされたら困りますし」
「泣きわめくの!?」
どちらか……フロイドの方だろうが、あの巨体が駄々をこねているところを想像すると一瞬ゾッとする。怖すぎる。
「さあ。そもそも試したことがありませんので」
アズールが首を傾げたので、へぇ……とイデアは唸った。
「試したりしないんだね……やさしさ……」
普段のアズールなら喜んで『実験』しそうなのに、やはりあの二人には甘いのか、と思いつつ言うと、アズールはムッとしたように眉を寄せた。
「そんなわけないでしょう。面倒を避けたいだけです」
「そっか」
確かに、実験の結果、百九十センチの男が地団太踏んで床を転げまわらないとは限らないので、避けるに限る。
「しかしお揃いとは。陽キャ感ありますな」
なんだかんだ言って、全く同じなのは双子だけなのだが、他も連動したようなデザインだ。
それでそう言ったのに、アズールは首を傾げた。
「そうなんですか?」
「そうなんですかって。クラTとかあるじゃないですかぁ。アズール氏なんだかんだいってそっち側と行動しがちだもんね。気になんない?」
「くらT……?」
はてなマークを浮かべながら眉間にしわを寄せるアズールに、あ。と思う。
そう言えば人魚だった。服を着る、という事自体が地上に出てからの習慣なのだ。
クラスTシャツとは。という一連の説明をして、ああ、一種の揃いのユニフォームですね。とそっけない回答を得る。具体的に目にしないとあの何だか(イデアにとっては)まがまがしい感じについては、ピンとこないのかもしれない。
「そう言えばアズール氏は双子とはお揃いにしないの?」
「ええ。僕はそもそもフロアには出ないので」
「あ、そうなんだ」
そうか、アズールが出れば人気になりそうなのに。と思いつつ、それはそれで嫉妬かな、いや、アレが拙者の恋人ですぞーと満足かな、と、自分に問う。やってみないとわからない……だから、普通こういう場合は勧めるのだろうけれど、イデアは何も言わない事とする。やっぱりやめて、という時のメンタル的な負担を考えたら、事態が動くときは自分のせいで無いに限る。
だからそうなんだーと流したつもりだったが、アズールはぱたんとカタログを閉じた。
「お揃いにしてほしいんですか?」
「えっ!?」
どうしてそうなった! と思い、イデアは座っているアズールに視線をやる。悪いことばかり考えている割に、無垢な顔で上目遣いに見上げてくるから困る。……床に座らせているのは自分なのだが。
「え、ええ、いや、なんで……」
嫌ですけど。と言おうとして、いや、そんな、海から同時に来た人魚たちの同族意識の中に自分の自我を割り込ませるのはちょっとアレでは、厚かましいか、などとぐるぐるして黙り込んでしまっていたら、アズールはにやりと笑う。何だか悪い笑い方だ。
「あなたと僕のつもりで言ったのですが?」
「や、ややこしい……!」
今のは絶対にわざとだったと思う。
アズールはクスクス笑って、冗談ですよ。と言う。
「さて、では僕は帰ります。ラウンジが忙しいようなので」
「アズール氏、何しに来たの」
部屋にいたけれど会話はほとんどしていない。ちょっとからかわれただけ。
流石に切ないというか、拗ねた気持ちになって、スマホのメッセージを返しているらしいアズールに唇を尖らせてしまう。
アズールは片眉をあげて「決まってるでしょう」とあっさりと言った。
「あなたに会いに来たんです」
それから立ち上がって、軽く口づけてくる。
「ではまた。明後日ですね」
「……そうだね」
今のキスだけで喜んでいるとは思われたくないのだが、反射的に燃えた髪を引き寄せることしかできない。
可愛い人だな、と言わんばかりの視線だ。ああ悔しい。
明後日なんか、部活じゃないか。デートではない。
なのに、見送ってもくれないんですか? と可愛いことを言われると、くそーと言いながらイデアも立ち上がるしかなかった。
イグニハイドの寮の入り口まで一緒に歩いていくと、オクタヴィネルの寮生が出迎えるように待っている。
アズールを待っているほどのトラブルがあったのだろうか、と思うと、アズールはその寮生から小さな箱を受け取った。それから、イデアの方を振り返る。
「イデアさん、これ、あなたの部屋に置いてください」
「ん? 何?」
仕草で『開けろ』とされたので、イデアはふたを開ける。
中には……見覚えがあるカップの、少し、色が違うものが……。
「アズール……」
あのね。と唸ってしまう。
「僕があなたの部屋で使う用ですからね」
ふふん。と、何処か勝ち誇ってアズールはそう言った。
見覚えのあるカップ、そう、誕生日にイデアが貰ったものの、色違い。
「欲しかったんでしょう?」
お揃いですよ。と、口元が動く。後ろに待っているオクタヴィネル生には見えなかっただろう。
「はい……」
くそう、腹が立つ。
でも隠すことは出来ないのだ。
もう一度髪を握り締めながら、じゃあ明後日ね、とイデアは逃げ出すようにその場を去った。
◆おわりー