*記念文とは名ばかりの、どこにも公開していない文のセルフリメイク
*マスターハンド視点
『…私は君たちに伝えなければならない事があるのだよ』
雰囲気というものを醸し出し、(多分)神妙な面持ちで呟けば、ファイター12
人が息を飲むのが分かった。
【気紛れ任命式】
「そ、その、伝えなければならない事って何なんだ…!?」
意を決して―とでも言うのだろうか。そんな言葉で沈黙を破ったのはマリオだった。
心なしか全員緊張しているようで、普段は騒がしくしている子どもたちですら黙って
私の言葉を待っている。
『……うむ、とても大切な事である、とだけ言っておこう』
「一体何なの?また、新メンバーを呼ぶのを忘れてたとか?」
『馬鹿者、私がそんな間違いでもすると思うのか』
「いやいや、“前科”あるじゃん」
ピカチュウの冷たいツッコミが入る。…確かに、ファイターナンバーの9から12の
4人に招待状を贈るのを忘れていたのは私だけど!
『そんな“ちゃち”な事じゃない!』
「…え?あたしたちに招待状を贈るのを忘れていた事って、ほんの小さな事なの?」
『ああもう、話の腰を折るんじゃない!』
今度はプリンにも突っ込まれてしまった。こんなんじゃ、いつまでたっても肝心の話
ができないじゃないか。
『いいか、諸君。この“スマブラ”という組織が結成されてから早数日。”何か”が足りない
と、そうは思わないかい?』
「いや、そんな事言われても…」
「急には思い浮かばないよねぇ」
ネスとカービィが顔を見合わせる。先程から茶々を入れるのは決まって子どもたちだ。
そうか、子どもたちには難しかったか。まだ大切な事を何も言ってはいないけど。
『12人もファイターが集まってさ、この組織をまとめる“リーダー”が存在していないん
だよ、ここには!私とした事がうっかり、それをみんなに伝え忘れていてさ!』
「……え、大切な事ってそれ?」
『うむ、そうだが?』
ルイージに尋ねられたのでそう肯定するが―なんだか、ファイターたちの反応が芳しく
ない。…あれ、私の想像と違う。全員とは言わないが、誰かしらは賛同してくれるものと
思っていたのだが。
「まさか、そのためだけに私たちを集めたのか?そんなくだらない事で?」
『くだらないって。冗談キツいなぁ、サムスちゃん』
「いやいや。本当にくだらないからな、それ」
ガンポッドを構えるサムスの横で、ファルコンが呆れたように手を振った。
『なんで?君たち、リーダーいらないの?』
「いらないというか…まず、必要性に駆られてすらいないのですが」
「そうだよな。そんなモンなくても、ここ数日穏やかに暮らせているよな」
やんわりと、だけどリンクとマリオは私の言葉を否定する。
『いやいや?大事だよ、リーダー』
「なんでマスターさんはそんなにリーダーがほしいって思ってるんですかぁ?」
『おおヨッシー、よくぞ聞いてくれた』
誰かがそう聞いてくれるのを待ってたんだよね。
『いいか諸君、そもそもの前提として、私は“神”だ。そう易々と表舞台に出てくるつもり
はない』
「へぇ…?そんなの、初めて聞いたけど」
『うむ。今初めて言ったからな』
えへん、と胸(…はないから、手首だ)を自慢げに反らしてみるが、フォックスには
あまり響かなかったようで、「そうか」とだけ返された。そもそもなんでみんなこんなに
反応が薄いの?
『だから、私がいない時に何かあったら困るでしょ。そういう時に頼るのがリーダーな
の』
「オマエ、いなくなる時があるのか?」
『いいや?』
じゃあ何でだ、とドンキーは首を傾げるが、その理由を言うと真面目な奴ら―主に、
サムスやフォックスあたりは怒りそうなので黙っておく。高みの見物を決めたいから、
私の代わりに頑張ってね!なんて、口が裂けても言っちゃいけない。口なんてないんだ
けどね!
「マスターがそこまで言うならそんな役割があってもいいと思うけど…具体的に
リーダーって何をするのかな?」
『なんだ、ルイージ。引き受けてくれるのか?』
あまり自己主張する性分ではないから、珍しい…と思ったが、やはり思い違いのようで、
そういう訳じゃないけど、と否定される。
「何をすればいいのかが分かれば、もしかしたら引き受ける人もいるんじゃないかなって
思ってさ」
『ああ、なるほど、そういう事か』
確かにそれは大事だ。誰かに引き受けてもらうために「売り込む」チャンスでもある。
『ファイターをまとめるのは勿論、他には“色々な”書類仕事、スケジュールやアイテムの
管理、有事の際には最終的に判断を下すのも、リーダーの仕事。…な、重要だろ?』
「重要…というか、なんだか荷が重い気もするな?」
「私には、ただマスターの仕事を押し付けられているだけにしか思えないが」
マリオとサムスが苦い顔をしている。…あれ、売り込みに失敗したかも。こんなはずじゃ
なかったんだけどな。
『自薦他薦は問わないぞ。…さ、誰かリーダーになりたい奴はいないか!?さぁ!!』
「……」
全員が黙ってしまった。12人もいながら、なんで誰もリーダーをやりたがらないの。
君たちどれだけ、リーダーをやりたくないの。
『…自薦他薦は問わないぞ?』
「それさっきも聞いたよ」
カービィにまで突っ込まれてしまった。だって、誰も「自分がやる」って言わないもん。
「この人がいい」って言わないもん。
「……誰もやりたがらない、推薦もしない、という事は…誰もリーダーを欲していない、
という事なのでは」
『いやだ!私がほしいんだよ!私が必要としてる!!』
「1対12で、マスターさんの“負け”ですけど」
リンクに反論するも、(まさかの)ヨッシーに論破された―ところで、私の中の“何か”が
切れた。人差し指を立て、ファイターたちを指差す。
『もういい、私が決める!拒否権はなし!私の言う事は絶対!!』
「えっ」
全員の顔が引きつった。こうなればもう、強硬手段しかない。誰が適任なのか、1人
ひとりの顔をじっくり見て、見定める。私を強く睨む者、反対に目を逸らす者。
カービィの前に来ると、彼はぴゃっと飛び上がって隣にいたフォックスの背に隠れる。
立てた人差し指を、チッチッチと横に振った。
『ああ大丈夫、お前は数に入っていないから。論外論外。心配するな』
「ひ、ひどぉい!ちょっとくらい悩んでくれてもいいじゃん!」
『リーダーってみんなの先頭に立つ人の事を言うんだよ?イタズラでしか先頭に立てな
い、ファイターいちのトラブルメーカーに務まる訳ないって』
「ひどいひどい!…ねぇフーちゃん、マスターが意地悪言うよぉ!」
『ん?私はなにか間違った事を言ったかな?』
カービィは反応が面白いから、非常にからかいがいがあるねぇ。変わらずカービィは
自分を隠す背のうしろから顔だけ出して「ひどい」「マスターのバカ」と連呼する。
ああ、こういうところはやっぱり子ども。
「カービィ、うしろから喚くのはやめてくれ。マスターも、あんまり煽ってやるなよ。
…というか、俺を挟んで喧嘩しないでほしい」
私たちの間に立つ(…というかそもそも、カービィが隠れただけだ)フォックスは、心底
迷惑そうな顔をしていた。悪かった、と詫びながら、私はふと“ある事”を思い出した。
『……そういえばお前って、故郷でもリーダーやってたよね』
「…そうだけど」
ここの4分の1しかメンバーはいないけど、と補足されるが“そんな事は関係ない”。
嗚呼なんで、“もっと早くに気が付かなかったんだ”。
『元々リーダーやってるんならここのリーダーだって楽勝じゃん。リーダーはお前に
決めた!』
「え…嫌なんだけど」
『拒否権ないって言ったじゃん』
言ったけどさ、とフォックスは渋っている様子だ。真面目な奴でも素直に返事しない時
ってあるもんだな。うん。
『それとも、自分より上の存在に楯突く気?』
「そ、それは……」
うんうん、分かってる。性格上、そういうの断れないタイプだよねぇ。彼の隣で
ピカチュウが「…脅しじゃん」と毒づく―が、私がそちらをちらりと見ればさっと目を
逸らした。やっぱり自分の身が可愛いよね。自分が犠牲になってまで、擁護する気は
ないよね。
『反対意見は…ないよな?』
そしてそれは、他のファイターたちにも共通なはず。元々誰もリーダーをやりたがって
などいなかったのだ、反対する者などいないだろう。
『…じゃ、決まりで!よかったよかった、これで私も楽ができる!』
「それが本音か…!」
絶対楽なんてさせないからな、と、私の気紛れで任命されたスマブラのリーダーは吠えた
『あーあ、あれは単なる負け惜しみだと思ってたのになぁ』
「楽はさせないって言っただろ。マスターにもちゃんと仕事はしてもらうよ」
次はこれ、と紙の束―アイテムリストを渡される。…げ、これ全部作らなきゃならないの
『…ね、これ、少し量が減ったりしない?』
「しない。ファイターの数が増えたんだから、比例して試合数も増えるだろ。当然、
必要なアイテムも増える。ファイターの数を増やしたのはマスターなんだから、文句
言うなよ」
『…とほほ』
スマブラのリーダーは手厳しい。誰だ、リーダーがいれば高みの見物を決められるって
言ったのは。紛れもなく、私だ。故郷でもリーダーをやってたから、と思って安易に
決めてしまったけど、一切の妥協を許してくれない。真面目なリーダーは、神である私
にも決して忖度などしなかった。
『そんなに真面目にしなくてもいいのに』
「今更?人が嫌だって言ったのに押し付けておいて?人数が増えて大変だからって、妥協
はしないからな」
『うっ、厳しい』
こんな形で自分自身に返ってくるのなら、マリオあたりで妥協しておけばよかったかも。
ふぅ、と溜め息を吐いた時、誰かが私たちを呼ぶ声が聞こえた。
「マスターとフーちゃん!まだここにいたの?」
『カービィじゃないか。まだ、って、なに?』
「えー!?忘れちゃったの、今日はスマブラ結成日のお祝いじゃん!リンちゃんと
ルイージがご馳走作ってくれてるんだよ!?」
そうだっけ、とディスプレイに指を向ける。嗚呼、今日は1月21日だ。私に―私たちに
とって、最も大事な日だ。
『…今は休憩してもいいでしょ?』
「仕方ないな。終わったら続きをやるぞ」
『はーい』
地上に続く階段を上がる。遅かったじゃないか、と文句を言うマリオは、笑っている。
『みんな、これからもよろしくな』
そう言うと、そこに集った12人も揃って、「こちらこそ」と返してくれた。
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応援してます~!真面目な話にすっと入れないcosmosさん宅マスターいとおしい
16:36
cosmos
京さんありがとうございます~!何だかんだマスターは舐められがち?です(笑)
80:09
cosmos
書き上がりましたー、お疲れ様でした!あとでpixivに載せます!
80:30
う、うそでしょ…この短い時間でしっかりまとめて書き上げてしまわれた…
80:50
さすがやで…!お疲れ様です!
81:28
cosmos
ありがとうございます、見られていると思うとサボれませんでした(笑)そろそろ配信終了しますね!
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