※こどもの日ネタ
※そんなにCP要素はない
【こどもの日】
5月5日。暦の上では今日の事を「こどもの日」というらしい。
「……何やってんだ、キツネ」
だから何だ、という訳でもないのだが。今日は手持ち無沙汰だ、と暇を持て余したウルフがそこらを適当にうろついていた時に出会ったのは、自分に背を向けて、何やらごそごそと作業するライバル、だった。無防備すぎる背中をとんと押してやれば簡単に転げるだろうな、とは思ったが、わざわざそんな事をするのも馬鹿馬鹿しい。だけどただ通り過ぎるには何か物足りなくて、特に理由はないけれど声を掛けてみた、そんなところだ。
「ああ、ウルフか」
見ての通りだ、と今し方自分がやっていた事を見せるかのように、フォックスは椅子の上から体半分振り返った。そこにあったのは―背の高い棒?に括りつけられた紐??と魚???
「今日は“こどもの日”だって」
「それがどうしたってんだ」
「知らない?こどもの日には、“こいのぼり”を飾るって」
そういえば、そんな日だった気がする。もう子どもという歳じゃないから、何をするかなんて興味もない。子どもがいる訳でもあるまいし。……いや。
「ガキがガキのために何やってんだ」
「ガキ……って、ひどいな。俺だってもうそんな歳じゃない」
「俺様から見れば十分にガキだ」
またそういう事言う、とフォックスは少しだけ機嫌を悪くしたようだ。そういうところがガキなんだよ、とはあえて言わないでおいた。
「マスターに頼まれたんだ。こいのぼりを飾っておいてくれって」
そんな事情にも、興味はないのだが。頼まれたというより押し付けられたんだろ、疑えよ、そして断れよ…とひっそり思う。―だって、いくら椅子に上がって作業しているといっても、フォックスの背丈ではあまり高いところに括る事はできないのだから。それこそマスターハンドがひとっ飛びしててっぺんに括りつけた方が何倍も早い。というかそもそも創造神なら、最初から完成したこいのぼりを創って飾っておけよ、とも思う。どうにもこの世界の神様というやつは、面倒臭がりだ。
「…もう少し、高いところに括りつけられたらいいんだけどなぁ。脚立でも持ってくるか」
そして、作業はなかなかうまく捗ってはくれない。無理に決まっている。椅子に上がって背伸びをしたって、あと何センチかは足りていないのだから。別に見守ってやる必要もないのだが、こうも捗らない作業を見ているのも腹が立つ。ウルフが頼んだ訳ではないが、なんだか徐々にイライラしてきた。
「……チッ、うざってぇ」
盛大な舌打ちとともに、ウルフは大股で歩を進め、椅子の背を乱暴に掴む。がたりと揺れて、なに、とフォックスが驚いた顔をする。どけ、とウルフは彼を蹴落とした。持ち前の運動神経で何とかバランスを保ったまま着地する事はできたが、それにしたってやり方というものがあるだろう。下手すればケガをするところだったのだし。何するんだと文句を言う前にウルフはてきぱきと作業を進め、あっという間にこいのぼりを括りつけてしまった。水を得た魚のように、本物さながらに、こいのぼりは空を泳ぐ。ここまで、1分未満。恐ろしい程手際がいい。
「身の丈に合わねぇ頼みなんて引き受けるんじゃねぇ」
もしかしてウルフは、助けてくれたのだろうか。やり方は随分と乱暴だったけど。そのまま去っていこうとする彼を、フォックスは捕まえた。
「俺の代わりに、ありがとな」
「……別に、テメェのためじゃねぇ」
またそうやって無防備に笑うから―そういうところもガキなんだよ、全く、コイツは……なんて、ウルフの虫の居所は悪い。彼がぶっきらぼうなのはいつもの事だからフォックスはさして気にしていない。嗚呼、そんな鈍感なところも、子ども。
「あ、こいのぼりが飾られてる!」
「すごーい!ほんとに泳いでるみたい!」
……と、そこへ、ぞろぞろやって来たのは子どもたちだ。空に泳ぐこいのぼりを見て感嘆の声をあげたのはポポだ。「こどもの日」とは言うけれど、それは男の子のための催し。2人で1組のアイスクライマーでも、さすがに今日は女の子のナナはいない。
「あれ、ウルフのおじちゃん!」
「……お前か」
とことこ、と彼の元へやって来たのはトゥーンリンクだ。ウルフとトゥーンリンク、そしてプリンは「ひょんな事から」思いがけず繋がりを持ってしまった3人だ。プリンは女の子だから、この場にはいない。子どもは適当にあしらってしまいそうなのに、と、ウルフがちゃんとトゥーンリンクの相手をしている事そのものが、フォックスには意外に思えたようで少しだけ首を傾げている。
「おじちゃんもこいのぼりを見に来たの?」
「んな訳あるか」
子どもじゃねぇんだ、とウルフは吐き捨てる。そんな彼を見て、フォックスは少しだけ「意地悪な」事を思い付いた。さっきは散々ガキだなんだとこちらをからかってくれたのだ、少しくらい仕返ししたっていいだろう。
「あのこいのぼり、ウルフが飾ってくれたんだぞ」
「え、おじちゃんが!?僕たちのために?」
「そうだったんだ!ありがとう、ウルフ!」
「ぐ……!」
子どもたちに純粋な目を向けられて、あからさまにウルフはたじろいだ。余計な事を言ってくれるなよ、キツネ―……と恨みがましくそちらを睨んでやれば、その先で彼は悪戯っ子のように笑っているではないか。クソ、さっきの仕返しか!そういうところもほんとにガキだ!仕返しが「悪人の善行をバラす」なんて、なんだかもう、何なんだ。子どものやる事か?さっきはそんな歳じゃないって言ってたじゃないか?
「本当は俺がマスターに頼まれてたんだけど、なかなかうまくいかなくてさ。そしたら、ウルフが―」
「……おい、キツネ」
それ以上はやめろ。そんな意味も込めて、ウルフはフォックスの首根っこを捕まえてその場を離れていく。これ以上子どもたちに純粋な目を向けられるのはごめんだ。最も、あそこまで話してしまっては、もうごまかしようもないのだけど。
「どういうつもりだ?俺様をコケにしやがって」
「別に、コケにしたつもりはないけど」
凄んでも、フォックスは臆さなかった。それどころか、やはり、……笑うのだ。
「……少し、からかってやりたくなっただけさ」
「それがガキだっつぅんだよ!」
お前のアーウィンの先端にこいのぼりでも立てといてやろうか。そんなくだらない事を考えながら、ウルフは呆れたように、だけどほんの少しだけ嬉しそうに、牙を剥く。普段は毅然とした「スマブラ」のリーダーが童心に返るところを垣間見るのはなかなかに悪くない―……と、どこか充足感のような、優越感のようなものを覚えている、と、彼が気付くのは、まだ少し先の話。
おわり
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スマブラ(狼狐)文を書くよ!
初公開日: 2022年05月02日
最終更新日: 2022年05月02日
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